・・韮の花線香花火の火花散り
韮の花は線香花火に似ている。ちりちりと燃える火花に似ている。「火花」と云えば、
今年の芥川賞は羽田圭介の「スクラップ・アンド・ビルド」であったが、17歳の時「黒冷水で文藝賞を受けており、これまでに3回芥川賞に
ノミネートされてきた。そんなことで、直木賞じゃ無いのと思ったほどである。
後の一作が、「よしもと」所属のお笑い芸人である、又吉直樹の「火花」であった。どちらも、読み応えがあった。
この俳句を作ったとき、この「火花」が頭をよぎったことも事実である。
・・獣道行くほまち畑にらの花
「ほまち」という言葉をご存じであろうか。なんとなく方言のような響きがあるが、「広辞苑」にも出ている言葉で、「主人に内密でかぞく・使用人が
開墾した田畑、また、蓄えた金~」と説明してある。独りの老女が腰に鎌を背負って獣道を歩いて行く。行き着く先は6畳か8畳と思える広さの
ほまち畑のようである。畑には韮の花が咲いている。
・・蝶来ては去り膨らめる韮の花
見るからに弱々しそうな黄色い蝶が飛んできたかと思うと、韮の花の上を飛び移っていたが蜜を吸うでもなく、再び弱々しそうに飛び去った。
今夜は何処で泊まるのだろう。それとも自分の家を持っているのだろうかと、そんなことを思って居た。
じぃじには家がある。家を建てて20年過ぎた。それまでは公宅に住んでいた。公宅もそれなりに立派ではあったが、自分の家では無いという
観念が働いて、なかなか落ち着けるという気持ちが無かったのも事実であった。
・・韮の花草に覆はれ開きたり
ほまち畑の韮の種でも飛んだのだろうか。草の中に5,6本の韮の花が見える。草に覆われ風を防いでいるせいか、
畑の韮よりもすくすくと育っている。
・・人の足とどめし紫陽花枯れにけり
晩秋から夏まで咲き継いだ紫陽花も銹色に枯れ出した。枯れた鉄色のあぢさゐも趣があるものだが、来年の花のためには良くない。
最盛期には携帯やデジカメ、さらには高級一眼カメラで撮っている人もいたが、まだ色気のあるうちに刈ることにした。
・・紫陽花の花さっぱりと刈りにけり
じぃじの家は割と客人の多く来る家である。来る人は、「あぁ、紫陽花を切ったのですか。見事であったのに。」と判を押したように云う。
じぃじは「来年のためにね。」と答える。確かにまだ紫陽花の色も残っているうちに花を刈り取るのだから、残酷な男なのかも知れない。
でも、枯れ出して見苦しい姿をいつまでもさらしたくも無いのだ。このような大きな紫陽花の株が3株あり、来年はもう2~3株増える予定である。
・韮の花‥写真4枚・俳句2句:紫陽花・写真2枚・俳句・2句