精神世界(アセンションについて)

このブログの内容は、色々なところから集めたもので、わたくしのメモであって、何度も読み返して見る為のものです。

ガイアに魅せられて  2

2008年01月28日 | Weblog
〇病院の個室

  ヒデトがベッドに仰向けに寝ている。
  しばらくして、長い夢から目が覚めた様子。ぼんやりしている。

ヒデト「ここはどこだろう? ぼくは――」

恵菜「よかった、目が覚めて。どう? 気分は」

  恵菜が心配そうにヒデトを覗き込む。
  恵菜の瞳が優しく微笑んでいる。
  ヒデトはなつかしそうに恵菜を見る。

ヒデト「どうして、ここに?」

  記憶が戻らなくて、もどかしそうなヒデト。

恵菜「いいのよ。無理に思い出さなくても。もう少しゆっくり休むといいわ」

  ほのかに消毒の匂いがするような、薄い水色の看護服。色白で細面の美人。黒い髪を後ろにきちっと束ね、清楚な感じがする。

恵菜「熱はなさそうね」

  恵菜の白い手がヒデトの額に触れる。

恵菜「でも、念のため」

  恵菜は体温計を差し出し、部屋を出て行った。
  ヒデトは恵菜の後姿を見送りながら、ホッと安堵のため息をつく。
  そして、また深い眠りの中に落ちていった。

〇ヒデトの夢の中

  空を見上げていた。
  青い空にぽっかりと白い雲が浮かんでいる。
  白い雲は見る見る間に、灰色から黒い塊に変化していった。
  そして、得体の知れない形になって、彼をすっぽり覆ってしまった。
  ヒデトの目も耳も口も鼻も、真っ黒いドロドロしたもので塞がれた。彼は必死に助けを求めた。

ヒデト「く、苦しい! 誰か――」

  声にならない叫び声を上げ、思わず身をくねらせる。

恵菜「だいじょうぶ?」

  恵菜の心配そうな目が覗き込んでいる。

恵菜「まあ、汗びっしょり」

  恵菜はヒデトの額をタオルで拭いた。

恵菜「着替えるといいわ。手伝いましょうか?」

ヒデト「いえ、自分でやります」

  照れくさそうにするヒデト。

恵菜「着替えが終わったら、食事にしましょうね」

  恵菜は体温計を見て、軽く頷きながら、母親のような口調で話しかけた。

ヒデト「何も欲しくない」

恵菜「あら、もう3日間、何も食べていないのよ。いくら若いといっても、点滴だけでは、体が持たないわ」

ヒデト「食べたくないんです。何も食べずに、このまま死ねたら――」

  自分の口から出た言葉にハッとするヒデト。

ヒデト「(つぶやくような声で)死ぬ? ぼくは死のうとしていたんだろうか?」
  さらにひとり言をつぶやく。

ヒデト「わからない。ぼくは一体誰なのか? どうしてここにいるんだ!」

  ヒデトは必死に思い出そうとした。しかし、彼の記憶の扉はそう簡単には開かないようだった。
  突然、ヒデトの目に涙があふれた。

恵菜「あなたは今までとてもがんばってきたのよ。しばらくの間、ゆっくり休むといいわ。きっと、神様が大切な時間を与えてくれたと思う……」

  恵菜は、そうっとヒデトの背中をさすりながら、優しくささやいた。

〇窓の外

  太陽が西に移動していた。

〇病室の扉

  コンコン。ドアをノックする音。
  四十代くらいの医師が病室に入ってきた。髪に少し白いものが混じって見える。

大野「いかがですか? 英人(ヒデト)くん」

ヒデト「ヒ・デ・ト?」

大野「そう、英人。君の名前だよ。思い出せないかい?」

ヒデト「ヒデト――。ぼくはヒデトというんですか?」

  大野はヒデトの脈をとりながら、ニッコリ微笑む。

大野「そうだよ。いい名前だ。私は大野。君の主治医だ。よろしく!」

  恵菜が点滴の袋を取り替えながら、

恵菜「私は夏木。夏木恵菜っていうの、あらためて、よろしくね」

  ヒデトははにかんだ顔をして、横になったまま軽く首を動かした。

ヒデト「こちらこそ――」

  大野はチラッと新しい点滴を見ながらヒデトに尋ねた。

大野「まだ、食べる気はないかな?」

ヒデト「――」

大野「そうか」

  大野はヒデトの胸に聴診器を当てながら、少し考え込んでいる様子。
  聴診器をはずして、両手をそっとヒデトの胸の上にかざした。
  大野はしばらく軽く目を閉じて、しばらくそのままじーっとしている。

  ヒーリング音楽イン。(宮下富実夫)
  
  しばらく経って、ヒデトの目からいく筋もの涙。少しずつ癒されていく様子が、表情から見て取れる。

大野「もう、だいじょうぶだ」

  大野はヒデトの目を見つめ、優しく諭すように言う。

大野「ここに君の書いた詩がある」

  大野はサイドキャビネットの引き出しから、白い封筒を出した。

大野「すっかり落ち着いたら、この詩を読むといい」

ヒデト「詩?」

大野「君の書いた詩だ。お父さんが私に届けてくれた」

ヒデト「父が?」

  ヒデトは父のことを思い出そうとした。しかし、思い出せない様子。
  頭をかきむしり、うつむく。

大野「そうだよ。お父さんは君にすまないことをしたと、とても悔やんでおられる」

ヒデト「――」

〇窓の外

  大野は立ち上がって空を見る。空は薄いブルーからオレンジ色に変わりかけていた。

〇病室

  大野はくるりとヒデトのほうに向き直った。

大野「いいかい? 苦しみは苦しみとして、悲しみは悲しみとして、正面から受け止めるんだ」

  真剣に耳を傾けるヒデト。

大野「決して、逃げてはいけない。人生とは、まわりのものと闘うことではないんだ。自分と闘うことなんだ」

ヒデト「自分と?」

大野「それは大変なことだ。しかし、そうしてこそ、初めて真理が見えてくる」

ヒデト「真理」と小さな声でつぶやく。

  大野はヒデトの手をとり、強く握りしめた。優しい瞳の奥に厳しさが感じられた。

大野「安心しなさい。私たちがついている」

  なぜかヒデトの目から涙がこぼれた。

〇窓の外

  音楽イン。
  
  ヒデトは病室の外を眺めていた。
  外はすっかり暗くなっていた。町の明かりが、星のようにキラキラ輝いて見えた。

ヒデトの心の声「この人たちは自分の仲間だ。ぼくはひとりぽっちではない。この地球上で、もう、たった一人きりではないのだ!」

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