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安倍改憲の本丸「9条改正」に待ち受ける関門~安倍首相の戦略は? 〔東洋経済ONLINE 2017.5.8〕

2017-05-09 14:38:43 | 憲法

東洋経済ONLINE http://toyokeizai.net/articles/-/170745より転載

安倍改憲の本丸「9条改正」に待ち受ける関門

5月3日、安倍首相は改憲派集会にビデオメッセージを寄せた(写真:共同)

大型連休真っ只中の憲法記念日に安倍晋三首相が勝負に出た。遅々として進まない国会での憲法改正論議に業を煮やしての「安倍改憲」宣言で、東京五輪に合わせての「2020年施行」を目指し、憲法9条での「自衛隊明文化」を打ち出した。

改憲推進派からは「歓迎」と「期待」の声が相次ぐが、民進党などは「断固反対」を叫ぶ。「憲法改正という悲願達成を最大のレガシー(遺産)に」と意気込む首相だが、前途には自民党総裁選と衆参の国政選挙に加え、公明党の説得などの"政治的関門"が並び、その先にも「国民の支持」というハードルが待ち構えている。

周到に考え抜いた時機と9条1・2項の扱い

首相は現行憲法が施行70年を迎えた5月3日、改憲派の集会に自民党総裁としてメッセージを寄せ、「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」「9条1項、2項は残しつつ、自衛隊を明文で書き込むという考え方は国民的な議論に値する」などと語った。併せて「教育は重要なテーマ」として改憲による「高等教育の無償化」にも意欲を示した。

憲法改正は首相の悲願で、2012年の再登板後は「在任中の改憲実現」を明言してきた。ただ、「国会が発議し国民投票で決める」という大原則があるため、これまでは具体論に言及するのは避けてきた。しかし、2016年夏の参院選で「衆参両院での改憲勢力3分の2以上」が実現したにもかかわらず、国会の衆参憲法審査会での議論がまったく進んでいないことから、「一気に勝負に出た」(側近)といえる。

2016年夏の参院選では憲法改正発議に向けた「改憲勢力3分の2」が最大の争点となり、与党圧勝で日本維新の会なども含めた改憲勢力は「3分の2(162議席)」を超えた。首相は「改憲への環境は整った」との判断から密かに改憲戦略を練り始めた。「国会が主役」という建前から衆参憲法審査会での審議に委ねてきたが、通常国会になっても「入口論議」が続き、具体的な改憲条項の絞り込み作業は手つかずのままだ。

その間、今年3月5日の自民党大会で総裁3選を可能とする党則改正が決まり、2018年9月の総裁選での3選によって、2021年9月までの史上最長政権を実現する道が開けた。そうした状況下、首相は「在任中の改憲実現」のための具体的戦略を固め、発言のタイミングを測ってきたとされる。

首相が着目したのは施行70年の節目となる憲法記念日だった。4月24日夜には、数年前に独自の改憲試案を紙上で発表した読売新聞の渡辺恒雄・グループ本社主筆と会食。同26日には同紙の単独インタビュー応じ、その内容が同紙の5月3日朝刊の一面トップに掲載された。同日の集会での首相メッセージはこれを受けたもので、70年に合わせて憲法特集を組んでいた大手マスコミ各社は、首相の改憲案を競って報道した。 

改憲論議の最大のポイントは、戦争放棄をうたい戦力不保持を明記した「9条1・2項」の扱いだ。憲法学者らが「自衛隊違憲論」の根拠としてきたもので、自民党改憲草案では戦力の不保持を削除し、「国防軍の保持」を盛り込んでいる。しかし、首相は「9条1・2項」はそのままにして、新たに加える第3項で自衛隊を明文化することを提起した。これは、「加憲」を主張する公明党への配慮とされ、同党幹部も「十分に理解できる」(遠山清彦衆院議員)と評価した。一方、「高等教育の無償化」は維新の改憲案の柱でもあり、同党の取り込みを狙ったものだ。

表向きは「与野党の幅広い合意を目指す」と繰り返す首相だが、与党の公明と野党の維新を束ねて、「3分の2」という"数の力"で衆参両院での改憲発議につなげようとの思惑も隠せない。「2020年の施行」という時限設定も「民進党などが徹底抗戦すれば中央突破も辞さないとのサイン」(自民幹部)と解説する向きもある。

2019年夏の参院選と国民投票のダブルが本命

注目されるのは改憲論議に絡む政治日程だ。首相の自民党総裁としての任期は2018年9月までだが、総裁公選規程の改正で3選出馬が可能となった。今回の首相の改憲発言は総裁3選を前提としたもので、任期満了となる2021年9月が「在任中改憲」のタイムリミットだが、「2020年施行」の場合に想定される国政選挙は2018年12月の任期満了までに行われる衆院選と2019年夏の参院選となる。首相にとってこの2つの国政選挙での「勝利」が改憲実現への政治的条件となるわけだ。

そこで問題となるのが、改憲のための国民投票と国政選挙の関係だ。これまでの論議では「改憲と政局は絡めるべきではない」として国政選挙との同時実施を否定する意見が多かった。しかし、国の財政が苦しい中、経費節減のメリットも含めての「ダブル選」論も台頭しており、「最終的には首相の判断次第」(官邸筋)とみられている。

首相が衆院解散を国民投票と絡める場合、その前提となる国会発議までに必要な手続きや時間を考慮すると、総裁3選後の「2018年秋解散」が有力視される。ただ、その時期は消費税10%の2019年10月実施の可否の判断と重なることもあり「増税を決めた上で、改憲を争点とした衆院選を行うのは政治的リスクが高すぎる」(自民長老)との指摘も少なくない。

このため、永田町では「2019年夏の参院選とのダブル選が本命」(自民選対)との見方が広がる。その背景には「次の衆院選で与党が40前後の議席減となっても維新などを加えれば3分の2は維持できる。だが、前々回2013年の自民大勝(65議席)のあおりで、その議員が改選となる次回参院選での10前後の議席減は避けられず、参院での3分の2維持は困難」(同)という読みがあるからだ。

参院で3分の2を失えば、その後の改憲発議は困難になる。このため、単独の国民投票の場合でも改憲発議は参院選前の2019年の通常国会がタイムリミットとされ、参院選を経ての2019年秋か2020年春の国民投票が現実的選択肢となる。

「自公維」による発議強行に公明代表は否定的

ただ、こうした「中央突破」ともみえる戦略には公明党の理解と協力が前提となるが、同党は「改憲は与野党合意が前提で、少なくとも野党第1党の協力が不可欠」(幹部)と慎重だ。山口那津男代表も「時間を区切るべきではない」と自公維などの改憲勢力による改憲発議強行には否定的だ。

さらに問題なのが9条での「自衛隊の明文化」だ。石破茂前地方創生相は「今まで積み重ねた党内論議にはなかった考え方で、矛盾が解消されない」と嚙みついた。一方、民進党は蓮舫代表が「総理の総理による総理のための改憲には絶対反対」とボルテージを上げ、改憲私案を公表して代表代行を辞任した細野豪志元環境相も「考え方には賛成」としながらも「丁寧な合意形成」を求めた。

「9条改正」については世論調査でも賛否が拮抗している。「9条改正は難しい」と漏らしたとされる首相だけに、「状況次第で"本丸"の9条改正はあきらめて、国民の抵抗も少ない"お試し改憲"に軌道修正する」(自民幹部)との見方も消えない。

「安倍改憲」という勝負手を放った首相は、その直後から連休後半を休暇に当て、山梨県下の別荘を拠点に大好きなゴルフなどで英気を養った。

首相は改正憲法の「2020年施行」の理由に「東京五輪による新しい日本」を挙げ、緊迫化する北朝鮮危機を背景に平和憲法の象徴ともいえる「9条」の見直しに挑戦する。今国会成立が確実な「生前退位」関連法で、2018年中の天皇陛下退位と2019年元旦からの新元号制定という「時代の変わり目」に日本を率いるはずの安倍首相。だが、改憲を頂点とする「したたかだがあざといレガシー作り」(首相経験者)が国民の高い評価を得られるのかどうか…。

 

 

 


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