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「なぜ、立憲民主はネット選挙で自民に勝てたのか」~「ネット戦略」の視点から  高橋 茂 2017.11.11 PRESIDENT 

2017-11-13 15:13:58 | 政治 選挙 

なぜ、立憲民主はネット選挙で自民に勝てたのか

"自民一人勝ち時代"に変化の予感も

PRESIDENT Online  http://president.jp/articles/-/23599

 ネット選挙コンサルタント 高橋 茂  2017.11.11

 
今回の総選挙では立憲民主党がネットで存在感を発揮した。特にツイッターやフェイスブックでは自民党のフォロワー数を抜き、日本の政党で1位になった。資金に乏しいはずの立憲民主党は、どんな手を使ったのか。ネット選挙コンサルタントの高橋茂氏が解説する――。

「発信力」を強めた立憲民主党

10月22日に投開票が行われた総選挙では、自民党が圧勝した。一方、希望の党は失速し、立憲民主党が躍進した。この結果は、総選挙での各党のネット戦略の出来と相関している。

もちろん、ネット戦略がうまくいったから票があつまった、と単純に言いたいわけではない。ただ、「ネット選挙コンサルタント」を務めてきた人間としては、より一層ネットの重要性が増した、と実感させられる選挙だった。今回の選挙について、政党の主義主張ではなく、あくまでも「ネット戦略」の視点から振り返ってみたい。

まず触れたいのは、立憲民主党の躍進についてだ。ネット戦略を評価する際、重視すべきものに「発信力」がある。立憲民主党は、今回の選挙で「発信力」を存分に発揮したと言えるだろう。

各党のネット「発信力」ランキング

最初に定義しておくと、私の考える「発信力」とは、「より多くのツールを有効に使って継続的に有権者に届ける」ということだ。主なところでは、政党のウェブサイト、フェイスブック、ツイッター、インスタグラム、LINE、ユーチューブがある。それぞれにアカウントを持ち、多くの有権者の登録を集め、選挙以外でも積極的に情報発信していることが「発信力が高い」と言える。

ここで、10月26日現在の主な政党のSNSを見てみると、ツイッターとフェイスブックの両方で、立憲民主党の躍進ぶりが伺える。ほぼ同じ時期に結党された、希望の党との間には大きな差がある。一方、解散前まで野党第一党だった民進党は、どちらの数字も共産党より少ない。

自民党がトップで民進党は最下位

立憲民主党が出てくるまで、日本の政党において、ネット戦略が最も優れているのが自民党で、最も遅れているのが民進党(旧民主党)だった。これは日本でネット選挙にかかわった人間ならば、誰もが共有している「事実」である。

これまでの選挙では、インターネットでの発信力は自民党が「ダントツ」で1位。続くのが、主張が際立っている共産党と、多くの登録者を囲い込んでいる公明党だった。一方、民進党は日頃の発信がほぼ無く、選挙前にだけ大手広告代理店に一括して依頼し、選挙が終わればまた発信がなくなる、という状況だった。

「枝野人気」を生んだもの


今回の総選挙でも、自民が強く、民進党はボロボロになるだろうというのが当然の見方だった。しかし、選挙前に民進党は事実上崩壊し、希望の党と立憲民主党が生まれた。そして、立憲民主党は民進党時代の「ネット下手」がウソのように、発信力を高めた。

「枝野人気」の背景にあったもの

立憲民主党は10月2日の結党宣言から2日あまりで、自民党のフォロワー数(約11万3000)を抜き、単独トップに躍り出た。そして、投票日までに19万フォロワーを超える勢いを保った。

枝野幸男代表が行く演説会はどこも大盛況。失礼ながら、選挙前まで枝野氏個人ではとてもこんなには集まらなかっただろう。私も新宿東南口で10月14日に行われた「東京大作戦」と銘打った街頭演説を見たが、ものすごい熱気だった。立錐(りっすい)の余地もないほど人であふれかえり、プラカードを持って立っている支持者の表情も目が輝いているように見えた。

さらに驚いたのはその拡散力だ。私が自分で撮影した写真をツイッターにアップしようとしていたら、次々と同じ街頭演説での写真や動画がアップされていった。これは組織的な動きというよりは、ツイッターを使い慣れた支持者が、立憲民主党の公式ツイッターでの指示を受けて拡散していたのだと思われる。

新しい世代が見せた拡散力

おそらく、写真や動画の臨場感が、「これはすごいから知らせなくちゃ」という気にさせるのであろう。党が指定したハッシュタグには、同じ場所で取られた写真や動画がズラリと並んで掲載されていた。そしてツイッターだけでなく、フェイスブックでも次から次へとシェアされていた。これまでの民進党では考えられないような拡散ぶりだった。

運営者の「普通さ」も功を奏した。ツイッターの運営者が「今日は疲れました」とツイートするなど自然体の発言が多かった。民進党のように大手広告代理店に依頼していれば、こういう発信にはならないだろう。「手作り感」がある一方で、発信のクオリティーは高い。

枝野代表の街頭演説映像を見ると、若者が横に立ってプラカードを掲げている姿が目につく。映像のレベルも非常に高くセンスが良い。これは2016年の衆議院北海道補選でSEALDs(シールズ)を中心とした若者たちがつくった映像に似ている。彼ら自身が明言していないので特定は避けるが、一部は、明らかにシールズの元メンバーが関わったと思われる作りだ。

いかに選挙運動を格好良くするか


これは永田町では「候補者プロモーションビデオの概念を変えた」といわれたものだ。政策を伝えるのはもちろん大切だが、いかにスマートに格好良く見せるかのほうに重点が置かれている。旧態然とした考えでは出てこない作り方だった。

シールズが目指したプロモーションモデル

シールズというと、平和運動を基本としたアジテーションやデモが話題になったが、私は“ダサすぎた”市民運動を、アーティストのプロモーションレベルに高めたことが最大の功績だと考えている。

以前、シールズの創設メンバーである奥田愛基氏と対談したことがある。その時、彼が語ったことは、政治的なイシューではなく、「いかに選挙運動を格好良くするか」ということだった。彼らは「市民運動=ダサい」という図式を変えようとしていた。今回の立憲民主党のネット戦略には、その経験が生きているように見えるのだ。

惜しかったのは、今回の選挙で、立憲民主党がインスタグラムやLINEのアカウントを作らなかったことだ。若者や女性にリーチするには、欠かせないツールになっている。おそらく重要性は理解しながらも、手が回らなかったのだろう。

立憲民主党・枝野代表の10月14日の新宿演説

自民「圧勝」に変化を起こす若者の力

立憲民主党のようなネット戦略が、本当に票に結びつくかどうか。まだわからないが、これからより効果が高くなることは間違いないだろう。

そして今後のネット戦略の中心を担うのは若者だ。大手の広告代理店よりも、若者たちのほうが、ネットの本質である共時性や共感性を、直感的に理解できているからだ。なかには写真や動画作成能力でプロに引けを取らないスキルをもった人間がいる。なにより、若者たちの参入によって、今まで遅れに遅れていた政治のネット活用が、一気に音楽業界のレベルにまで引き上がったのだ。

今回の選挙は突然始まったこともあり、なかなか準備が進まなかった。実際、希望の党はそこでつまずいた。対して、立憲民主党の頑張りは素晴らしいと言わざるをえない。これがさらに洗練されたときに、ネットが投票結果に大きく影響することになるはずだ。では、その洗練された姿とはどのようなものか。次回詳しく述べたいと思う。(つづく)

 

高橋茂(たかはし・しげる)
ネット選挙コンサルタント。1960年、長野県上田市生まれ。電子楽器のエンジニアだったが、2000年に長野県知事選に関わったのを機にインターネットと政治の世界に。02年、政治家がネットを使って情報発信するツール「ネット参謀」を開発。議員や政治団体などのサポートやネットメディアのコンサルティング、講演、執筆など多方面で活躍し、「デジタル軍師」の異名を持つ。選挙情報データベースサイト「ザ選挙」の立ち上げ人。著書に『マスコミが伝えないネット選挙の真相』など。VoiceJapan代表取締役、世論社代表取締役、武蔵大学非常勤講師。

 

 

 

 


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