改め Objective Technician

はぐれ技術者のやりたい放題

love time story その3

2006-08-19 00:37:53 | nack5
ねぇあんた、ゲイバーでお酒飲むの初めて? そう、それじゃぁ、土産話に私のこと覚えて帰んなさいよ。きっといい思い出になるわよ。

まぁ、今さら隠し事したってしょうがないから言うけど私はね、誰とも付き合ったことがないの。いい? 童貞で、処女なの。二冠王よ。現在このベルトは32年間防衛中。


ほらほら、下向かないであんた。


ここ笑うところだから。いい?


もちろん威張って言えることじゃないわよ。でもね、ここはゲイバーだからお客さんによってはもう架空の男が何人も何人も、私の上を通り過ぎて行ったって話をしてるのよ。

分かる? 時にはその男たちと、思い出に、まぁわたし一人で浸ることもあるのよ。まぁ、みたいな、そんな妄想で話をすることも出来るわけよ。

でもさ、他のオカマの話だってツワモノよ。だってみんな、過去の男自慢は毎日百物語が出来るくらいしゃべりまくるくせに今の話になると、そうね、こないだ捨ててやったところよ、なんて、はぐらかすの。そんなら1秒に1度くらい捨てないと計算が合わないよ、なんて突っ込んでやりたくなるわよ。毎晩同じ店にばっか通ってちゃ出会いも何もありゃしないわよね。もう話が脱線しすぎ。

あんたも客って顔してないで、やめなさいよもう。あのね、どうして私が処女で童貞なのか教えてあげるわ。簡単に言うと、こんなにしゃべり倒していても、いざとなれば、私、逃げ出すオカマなのよ。どうしてかって? それは、自分が傷つきたくないから。ほら、オカマの恋愛って特別でしょ。まず、男じゃないってことから伝えなきゃいけないから、結構疲れるのよ。でも、恋愛なんてフィーリングじゃない? いいと思えば最高なんだから。

でもね、一度だけ告白したことが私だってあるのよ。いい男だったわよ。でもね、あまりにもいい男過ぎたから、結局告白したっきり手も握ってもらえなかったわ。黙って隣でうつむいて、水割りを黙々と飲んで、彼優しすぎたのね、私を受け入れてくれたんだけど、愛するには無理があったみたい。結局は失恋。そのときホントに女に生まれたらどんなに幸せだったかしらなんて思っちゃったわよ私。もう、ワンワン泣いてニャーニャー叫んでもう、一人ペットショップ状態よ。もううるさくて誰も近づいて来なかったわ。それで、今は童貞で処女の二冠王を32年間防衛中なのよ。


さあさあ飲んで飲んで。でも、私がこんなにお客につっかかるのって久し振りなのよ。わかる?


あら。もしかして、私、あなたのこと好きだからつっかかっちゃってるのかしらねぇ。



あぁ、あらやだ。

もうどうしましょうやだやだ。


二冠王の記録が途切れるのかしら。もう店が終わるまであんたここにいなさいよ。え?本当の愛ってのをじっくり教えてあげるから。



ちょっとちょっと、何で席立ってるのよほら。



こら!お戻り!




お戻りったら!



帰ったらただじゃおかないわよ!






こら!













って。あんた。あんたたちも何読んでんのよ。


何読んでるの!!!



もうおしまい。
おしまいよ。


店閉めるわよ。







by 小林克也 NACK5 FUNKY FRIDAY

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