こんな本よみましたよ

読んだ本の個人的感想を垂れ流し、勝手に★をつけます。

虐殺器官/伊藤計劃 ★★★

2012年02月28日 | 小説
友人から借りて読んでみました。

ジャンルとしてはSFミステリー?というのでしょうか。
こういったジャンルのものは私ははじめて読みました。

作者の伊藤計劃さまは、2007年に本書でSF作家としてデビュー、カルト的人気を博すも、それからたった2年でお亡くなりになってしまったという方のようです。

物語は、近未来を舞台に、アメリカ軍の暗殺部隊の大尉(主人公)が、国の命令に基づいて、ある男を暗殺しにむかう。
その男が行く国では、必ず内戦が生じ、大量虐殺が行われるという。

主人公は、暗殺のターゲットであるジョン・ポール、その元恋人、自殺した同僚、母親、カウンセラーなどなどとの関わりを通して、人を殺すという責任の所在や、テクノロジーによって不明確になっていく「自分」、正義とは何かなどに悩みながら作戦を実行していく。

というようなもの。

個人的な印象としては、「エヴァンゲリオン」に近かったです。
いろいろと自問自答しながら、戦っていき、その戦いの意味や自分というものがわからなくなって、、、というところなどが。
ただ、「エヴァンゲリオン」は、どちらかというと個人や自分という小さな単位にむかっていたと思いますが、
本作はそれだけでなく世界(より公共なもの)にもむかっているという点でテーマがちょっと広めです。

たしかに近未来のアイテムが多数出てきはしますが、作品全体としては「SF」という印象はあまりなく、
現代の社会、というか世界の問題について考えている、というかんじでした。

私はビーチでごろごろしながら読んでしまいました。このようなシチュエーションは全然本と合いません!のでおすすめしません!
通勤中や、平日の夜など、やや緊張感のある状態で読むことをお勧めします。
はまる人ははまるようですので、一読の価値ありです。
(いろんな作家も大絶賛。)










意識に直接与えられているものについての試論/アンリ・ベルクソン(竹内信夫訳) ★★★★★

2012年02月15日 | その他(本)
やっと読めた。。。

読了できたはじめての翻訳書。ビバ!信夫さま!

大学に4年間も通っておきながら、内容については自信をもってわかった!とは言えないので、とりあえず置いておいて。。。

まずは、この本自体のすばらしさについて語ります。

とにかく翻訳がすばらしい!
既存の翻訳と最初の3文くらいを比べるだけでも全然ちがいます。
ほぼナチュラルに読めます。

音読すると、さらにすばらしさが感じられます。
リズムがあり、誰かから話しかけられているようなかんじがします。
(実際には自分の声、、、電車内では、要マスク&小声)

そして、間に挟まっている、「月報」なる小冊子がまたなかなかいけてます。
これを読めば、「なんとなくわかった」ような気にさえなるし、
制作秘話的小話も知ることができて面白いです。
なぜかしりあがり寿のイラストつき。(かわいい。アンリさまが一気に身近なおじちゃんに見えてくる。)

さて、内容についてですが、私がざっくり理解したところによると、

「空間」(量)と「時間」(質)をごっちゃにして考えてはいけません。
みんな、「自由」を「空間」的な考え方でとらえているけど、
「自由」は「時間」的なものなので、みんな間違いです。
でも、「ことば」は「空間」に属するものなので、「自由」が何かってきかれても、こたえられません!

みたいなことなような気がします。(自信なし)

「ほんまでっかTV」などでよく言われているような物質的なものに支配された人間
(「あなたは脳から●●物質が出ているから、セロリを食べると怒らなくなります」などのような?)
から脱出できるという点で勇気づけられますが、
自分の気持ちは自分しか結局わかりません、と言われているようで、やや悲しい気持ちにもなります。

でも、「月報」なる小冊子によると、この本では、「ことば」を否定的に捉えているアンリさまが、
次の本では、肯定的にとらえるようになっていくらしいので、そのあたりが楽しみです。

とりあえず、2900円もしたので、全部読めてよかったです。















「霞町物語」/浅田次郎 ★★★★★

2012年02月08日 | 小説
今読んでいる本はなかなか読み終わらないので、過去にヨンだことのある本について。書いても。いいよね!

「霞町物語」は、浅田次郎が、自身の高校生時代について綴った連作短編集。
かつて霞町と呼ばれた西麻布界隈を舞台に、「不良」風?優等生の恋、友情、家族などなどが描かれてます。

まあ、まあ、とにかく素敵!
こんな青春時代が自分にもあったなら!
と読む度に思います。

主人公の「僕」をはじめ、友人の男女の振る舞いが、高校生とは思えない素敵さです。

私自身は見たことがないし、もう見ることもできない、「霞町」の雰囲気が感じられ、
現在のおどろおどろしい事件多発地帯もどことなく素敵に感じられます。

さらっと読めるのもよし。

とにかく素敵ということばがぴったりです。

本の画像を得るために、アマゾンのこの本のページを開いたら、「2007/9/26にこの商品を注文しました」との表示。
なんか怖い!


「人間の建設」/岡潔、小林秀雄 ★★★★★ 

2012年02月01日 | その他(本)
すばらしい。謎に人間として勇気がわく。

批評家(?、よくわからん職業、、、)小林秀雄と、数学者岡潔の対談。
昭和四十年代の対談が平成22年に文庫として再版されたようす。
話題は、哲学、文学、数学、酒、などなど。

残念ながら、教養のない私には、ドストエフスキーとトルストイがどうとか、ゴッホとピカソがどうとかいう話はよくわかりませんでした。

が、どんなことにおいても(たとえ物理や数学であっても)、「知情意」の「情」が納得しなければだめなのだ、という考え。
これについて語る岡潔の言葉がすばらしい(話し方も、語尾がきっちりしていて素敵。その上、私好みの頭蓋骨の形)。
人間はやはり最終的には「あたま」的サムシングではなく、「からだ」的サムシングに根ざさざるをえない。

岡潔曰く、ヒトは生後八ヶ月だったか十数ヶ月だかのころに(私の記憶が曖昧)、「1」の概念を獲得する。
それは、自分の身体の全身運動による、ということらしい。
つまり、自分が動くことによって、自分という全体=1という感覚を得る(たぶん、私の理解が間違っていなければ)。

これこそまさに、「からだ」的(ときどき「ウ●コ的」という方もいますね)人間!と思います。
そう思うと、なんとなく勇気がわきます。

また、よいことに、この本によって、私はふたたびベルグソンを読むことにチャレンジする元気を得ました。
(対談で触れられていたというのと、なんとなく元気になったため。)
死ぬまでには読みたいと思いつつ、何度か挫折した。。。
でも、大丈夫!すばらしい翻訳書を手ニ入レタ!(レベルがアップした!)

白水社から出ている、「新訳ベルクソン全集」。
フランス文学者?の竹内信夫という人が一人で全集完訳にチャレンジ中とのこと。
その第1巻を購入してみた。まだ数ページしか読んでいないが、とにかく翻訳がすばらしい!
今まで翻訳書を読了できたことのない私にも、書いてあることの意味が理解できます。

次回は、「意識に直接与えられているものについての試論」について書けるといいです。。。
(今回こそは読みきろう!おー!)