こんな本よみましたよ

読んだ本の個人的感想を垂れ流し、勝手に★をつけます。

ハーモニー/伊藤計劃 ★★★★

2012年03月15日 | 小説
またまた友人Iさまから借りて読みました。
「虐殺器官」と同じ計劃さま作品。

21世紀後半、<大災禍>と呼ばれる世界的な混乱が起きた。人々は、互いを憎悪し、殺しあった。
それを教訓に、人類は、他者への思いやりに溢れ、ひとりひとりが社会の公共リソースとして尊重される社会を築いた。
そこでは、人々の健康はメディケアという機械?によって徹底的に管理され、また、人々の個人情報も徹底的に開示された。そんな社会に対して、「私の身体は私のもの!」と自殺によって抵抗しようとする3人の少女、ミァハ、トァン、キアン。
3人の中で自殺に成功したのは、他2人のカリスマ、ミァハのみ。
十数年後、死に損なったトアンは、生命維持に関わるもろもろを取り締まる監察官となり、
わずかに残る非・「思いやり社会」でタバコや酒を手にいれ、息抜きをしている。
ある時、全世界で数千人の人間が同時にためらいもなく自殺するという事件が発生。友人キアンもそのうちの一人だった。
トァンは監察官として、またキアンの友人として、事件の真相に迫っていく。
すると、メディケアの基礎をつくった自分の父と、死んだはずの友人ミァハにいきあたった。。。

というようなお話です。

主人公が少女~若い女性であるためか、「虐殺器官」よりも読みやすいです。

本作も「虐殺器官」同様に、現在の社会をちょっとだけ極端にしたような、現在の社会をこのアイデアのままちょっとおしすすめたような社会が描かれています。
「自分」をも「物質」とみなして、「科学」によって管理しようとした結果、何が「自分」なのかようわからんくなってもうた~、というような社会でしょうか。(簡易に言ってしまえば)

ミステリー?的な要素もあり、ストーリーも面白いので、エンタテインメントとしても十分楽しめますが、
全体として「小説形式の意見書(または論文?)」といった印象で、
「今の社会のこういうところはNO!」といっているように感じます。
ただ、あとがき?にもあるように、その代わりに「こんな社会YES!」というのが描かれているかというとそれはありまへん。

だからか、面白くつぎつぎと読めますが、ちょっと暗い気持ちになります。

ほわ~んとしてたいわ~という方にはおすすめしません。
現在の社会についてなんらか考えたい!という方にはおすすめです。