【元日経新聞記者】宮崎信行の国会傍聴記

政治ジャーナリスト宮崎信行、50代はドンドン書いていきます。

JA専務理事の自民党議員が「篠原農政」を認める

2010年08月04日 23時59分59秒 | 第175臨時国会(2010年7月)ねじれ

[画像]元JA専務理事で自民党参院議員の山田俊男さん

(このエントリーの初投稿日時は2010年8月8日)

【2010年8月4日 参院予算委員会】

 8月6日(金)に閉会した第175回臨時国会。2009年8月の第45回衆院選(政権交代の夏)により実現した政権交代可能な二大政党デモクラシーは、2010年7月の第22回参院選(反省の夏)で、より成熟してきました。

 農業者戸別所得保障では、2007年7月の第21回参院選「逆転の夏」から二大政党で大バトルが繰り広げられましたが、与野党逆転し、JA専務理事である自民党議員が予算委で「白旗」を挙げました。

 ついにやりました。

 JA専務理事で自民党参院議員の山田俊男さんが質問者として、登場。

 「農業者戸別所得保障(のモデル事業)」を「加入率が高く、良い方向に進んでいる」と発言し、JA全農・農協が民主党農政に白旗を上げた格好となりました。

 「私は農相がおっしゃる戸別所得補償が必要だということには、異議を挟みませんが・・・私も必要だと思います」と述べました。

 2010年産米は猛暑のおかげもあってか、2%増しの豊作になりそう。しかし、喜んでいられません。米価が下がっており、在庫が積み上がっています。収入が減少して赤字になった農家には、赤字分が補償されます。しかし、米価下落には、消費者の米離れという問題もあります。

 山田専務理事は、米価底上げのために政府がコメを買い入れるよう、山田農相に迫ります。

 
 [画像]山田農相=参議院インターネット審議中継からキャプチャー

 答弁に立った山田正彦農相は「JAさんなどの集荷業者から買い上げて、(政府が)備蓄してくれという要望があがってきています。しかし、政府が不当に介入して、米価を引き上げてしまう」と答弁。独禁法違反の可能性も示唆しました。

 そして、「また、買い上げると、2010年度のモデル事業に参加しなかった農家も得をしてしまう」と理解を求めました。もちろん、8月4日時点での答弁であり、緊急買い入れによる備蓄を民主党農政が完全に否定しているわけではありません。

 コメの場合は、10アール辺り1万5000円が定額部分として補償されており、売り上げが少ない場合は、その部分が変動額として補償されます。ですから全国的に米価が低迷すると、政府の財政負担が増すことになります。

 「米価」と聞くだけで、「インチキ」という印象が自民党農政で定着してしまいましたが、米価は大事です。野田佳彦財務大臣は、よりいっそうの米価下落があったら、「5614億5830万円」を超える額になるのではないか?との山田議員の質問に、「まずは農水省で努力してほしい」として、現時点では、増額補正や予備費支出の考えはないとの見解を示しました。

 
[画像]農水副大臣記者会見にのぞむ篠原孝さん=YouTube農林水産省チャンネルからキャプチャー

 菅直人首相は、内閣改造で、農業者戸別所得補償の日本での生みの親であり、理論的支柱である篠原孝さん(長野1区)を農林水産副大臣に起用しました。

 コメに限らず、飼料用米、大豆、麦も含めて、農業を強くする。田んぼの多面的機能、つまり水資源の涵養だとか、CO2の吸収、多様な生き物のすみかになったりして、日本の自然を守ります。

 
[画像]戸別所得補償(モデル実験)の参加申込書=農水省ホームページから。

戸別所得補償モデル実験のパンフレット(PDF)はこちら↓(農林水産省HP)
http://www.maff.go.jp/j/seisaku/kobetu_hosyo/pdf/pamph06-set-02.pdf

 戸別所得保障は、生産数量目標、すなわち昔で言う、「減反」ですが、生産数量目標に参加する意思を表明したうえで、申込書を市町村に、あるいはJA窓口に提出します。生産数量目標は、主食用のおコメだけでなく、飼料用のおコメ、米粉用のおコメなども含めて、日本の食糧の供給体制を強くします。

 そして、農業者は、転作、二毛作にどんどんチャレンジしてください。例えば、ベトナムでは一つの田んぼで7品種のイネを栽培している農業者もいます。仮にいもち病が発生しても、全滅の可能性は低くなります。この件に関しては、青森県田舎館村が研究しています。

 あるいは、大豆も始めたらいかがでしょうか。国が補償するのですから、何も恐れることはありません。農政を信用できない農業者もいるでしょうが、山田農相や篠原孝農林副大臣は、選挙のために農家を騙すような人ではありません。山田さん、篠原さんを信用、信頼してください。

 宮崎安貞は『農業全書』に、イネの栽培は「まず水を専ら(もっぱら)にすること」と書いています。耕すことを放置した田んぼは荒れ果てて、やがて使い物にならなくなり、社会的にも、環境的にも悪影響になります。農業者が高齢化して、足腰が衰えている。でも、兼業農家、というか生活のために東京でタクシードライバーをしている息子たちが帰農するには、2010年、もうラストチャンスかもしれません。

 まずは、みんなでおコメを食べましょう。そして、畜産農家のみなさんには飼料用米、調理師のみなさんには米粉用米を試すことをおすすめしたいと考えます。

 篠原農政をJAが支援し、そして消費者もバックアップして、食料の安定供給体制を作り直していきましょう。

 篠原農政で、日本農業にまた日が昇ります。



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