「国立大学法人法改正案」が第198回通常国会に提出されるはこびとなりました。
文部科学省の先週、平成30年12月19日(水)の「国立大学の一法人複数大学制度等に関する調査検討会議」で中間まとめ(この記事の末尾に全文コピペ)を決定。パブリックコメントの募集を既に始めました。
当ブログでは、2017年4月25日付で、松野博一・文部科学大臣(当時)が臨時議員として経済財政諮問会議に出席して、「国立大学法人のアンブレラ法人化」を提案。これを受けて、2018年国会に法案が出るのではないかとしましたが、文化庁の京都移転に関係した法律などが議論されました。
2019年国会に提出される見通しの改正法案では、一つの国立大学法人が複数の国立大学を経営できるアンブレラ化の条項が入ることになりそうです。これに加えて、法人に、理事長と学長を別々におけるようにする、現行法第10条などの改正条項が入る見通し。中間まとめでは「理事長と学長」という表現はしていませんが、そのような名称になると考えられます。文科省では事務次官が退職後すぐに山形大学総長になったケースがあり、同省OBOGが天下り先確保としての理事長ポスト創設の思惑も透けて見えます。
アンブレラ化については、体の良い切り捨てである懸念もあり、本音の言葉遣いでの国会審議を期待したいところです。
以下、中間まとめを全文コピペして、この記事は終わります。
[文部科学省ホームページから全文引用はじめ]
資料1
1
国立大学の一法人複数大学制度等に関する調査検討会議
中間まとめ(素案)
1.一法人複数大学の意義・必要性
○ 一法人複数大学制度の導入は、各国立大学が、その創設以降、そして国立大学法人
化を経てこれまで培ってきたブランド力や大学が置かれた地域との関係性、卒業生を
はじめとする人材、そして研究機関や企業等の連携・協働の維持を前提にしつつ、そ
れを活かしながら、法人統合による経営力の強化や教育研究の質の向上を図っていく
ことができるという意義を有する。
○ また、一法人複数大学制度は、複数大学の教育研究資源を確保できるとともに、そ
の教育研究資源を、各国立大学のミッションを踏まえ効果的・効率的に配分・利活用
することが可能となる。
○ そして、法人の統合による社会に対する存在感・発信力の強化が期待できるため、
一法人複数大学制度の利用に際して、経営刷新や大学改革等の取組みを大きく進める
ことが期待される。一例として、法人内の教員や研究組織の再編・統廃合の弾力化・
加速化、さらには既存の大学間の枠を超えた新たな教育研究部門の設置等が期待され
る。
○ 今日、18 歳人口の減少、高等教育の国際展開や地域創生への貢献といった様々な課
題・責務に直面する中、各国立大学法人は、それぞれのミッションに対応していくた
めの最も効果的な組織形態や経営と教学の在り方を自らの判断で取捨選択していくべ
きであり、一法人複数大学の仕組みを一律に適用するのではなく、各国立大学法人の
意思・判断に応じた柔軟な仕組みとしていくことが必要。
○ ただし、各国立大学法人が一法人複数大学制度の利用を具体的に検討・構想するに
あたっては、安易な法人の統合や単に屋上屋を重ねるような運用とならないよう、大
学連携や大学統合との違いに留意しつつ、一法人複数大学制度の活用の目的やメリッ
ト、将来的なビジョンをしっかりと検討することが必要。
2.一法人複数大学の基本設計の在り方
(1)法人の長と大学の長の役割分担
2
(法人の長と大学の長の役割を分担することについて)
○ 現行の国立大学法人法は、法人の長と大学の長の一致を原則としているが、一法人
複数大学制度においては、その経営力の強化に資するためにも、法人の判断により、
法人の長と大学の長の役割の分担を可能とすべき。
【論点①】
○ 法人の長と大学の長を分担することについて、法人経営の在り方に大きく影響する
ものであり、分担することの目的や期待される効果等を踏まえ、法人内でどのように
意思決定がなされるべきか。
○ 国と法人と大学との関係については、大学の自律性を担保しつつ、その長の任命の
在り方等、文部科学大臣の関与をどのように考えるかも含め、整理していくことが重
要。
(法人の長の役割)
○ 法人とは、法律上の権利義務の主体であり、財産の帰属主体である。法人の長は、
法人全体に対して監督責任を負うのみならず、経営の失敗や法人の諸問題についての
責任を負う。
○ 法人の長は、法人経営の責任者として、法人の人材・資源・予算を掌握し、そのリ
ーダーシップのもと組織のガバナンスを維持し、法人の目標や業務の成果の最大化を
任務とする。
このため、法人の長は、大学の長よりも上位に置かれるべき。
○ 法人の長がその権限を法人内でどう委譲するかについては内部統治の問題であり、
法人により様々な形態や方法があり得るべきであるが、法人の長と学長の意見が分か
れ法人内が対立することのないような仕組みをとるべき。
○ 法人の長は、経営に長けた者であることが望ましいが、経営と教育研究は連動して
おり、教育研究に一定程度の理解を有する必要がある。
(大学の長の役割)
○ 大学の長は、法人全体の経営方針に従いつつ、大学の自主的な運営・創意工夫のも
と教育研究を行う一定程度の裁量や権限を有すると同時に、法人の長に対して責任を
負う仕組みとする必要がある。
(2)法人の長と大学の長の任命手続
(法人の長の任命)
○ 法人の経営責任を最終的に負う責任者である法人の長は、個々の国立大学法人が法
3
律により設置されていることや国立大学を設置運営する使命を踏まえ、経営と教育研
究の両方の観点から選考された者について、法人の申し出に基づいて文部科学大臣が
任命するべき。
(大学の長の任命)
○ 大学の長の任命について、法人の長と同様に文部科学大臣の任命とすることは適切
ではなく、法人経営に責任を持つ法人の長が大学の長の任命を行うべきであるが、法
律で設置される国立大学の運営に一定の責任を持つとの特性に鑑み、任命に当たって
の文部科学大臣の関わりについて検討が必要。
○ 大学の長の任命権は法人の長が持つとしても、その選考は、一定程度の透明性が必
要であり、例えば、各大学から意見を得る手続きをとることや、法人において選考方
法を決めることなどが考えられる。ただし、法人の長の任命権を没却させることがな
いように留意すべきである。
(解任)
○ 法人の長及び大学の長のいずれの解任についても、その任命権者が行うことができ
るようにすべき。大学の長の解任にあたっては、任命と同様に一定程度の透明性を確
保することが必要。
(3)法人における意思決定システム(役員会、経営協議会、教育研究評議会等)
(役員会等)
○ 法人の長が最終的な意思決定を行い、その責任を負うべきであり、法人の長以外の
者に拒否権を持たせることは経営上の問題を引き起こすことにつながるため、避ける
べき。
○ 経営と教育研究は完全に分離できるものではないため、経営と教育研究の方向性が
同じになるよう、教学を担う大学の長を法人の理事に位置付け、役員会に参画させる
などの措置を担保する必要がある。
(経営協議会及び教育研究評議会)
○ 経営協議会及び教育研究評議会は審議機関として引き続き法人に置かれることが必
要。特に一法人複数大学制度では、法人全体としての目標や計画を念頭に置きながら
その運営方針を定め、各大学が有しているブランド力や強み、個性を生かしていくこ
とが想定される。
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○ 法人全体の運営方針の審議や、法人全体としての教育研究組織体制の整備、各大学
の役割といった議論には法人の長及び各大学の長のいずれもが関わっていくべきであ
り、経営協議会及び教育研究評議会ともに参画させることが必要。
○ 経営協議会は、その審議事項である経営は法人の人材・資源・予算に係る方針に大
きく影響を与えるものであり、法人に置き、法人の長が主宰することが妥当。一方、
その運営に当たっては、審議が形骸化しないようにすべきであり、学外者の意向を経
営に反映していくことができるよう、審議事項を工夫していくことが望まれる。なお、
各大学に予算権など一定の権限を委任する場合には、各法人の判断により、各大学の
経営事項を審議する場を設けることも可能とすべき。
○ 教育研究評議会は、その審議事項が学則、教員人事、教育課程の編成に関する方針、
学生の入学・卒業、学位授与に係る方針等であり、また、各大学には教育研究面につ
いて、一定の独立性や多様性を持たせるべきであることから、大学の長を主宰者とし、
大学ごとにその内容について議論が行われるようにすべき。
ただし、法人の長が教育研究評議会において、評議員に対し説明責任を果たすこと
や、評議員の意見や議論を直接交わすことで、法人経営の方向性を共有することがで
きるようにするといったことも考えられる。
その上で、法人全体の教育研究について審議するために、各法人の判断で、法人全
体の教育研究の方向性を審議する場を設けることも可能とすべき。
(その他)
○ 役員会、経営協議会、教育研究評議会等を通じて、大学全体のことを考えることが
できる人材を養成していくことも重要。
(4)中期目標・中期計画、評価
○ 法人の中期目標・中期計画には、その設置する各大学の目標・計画が含まれること
となる。法人全体としての目標・計画と、その設置する各大学の目標・計画について
整合性がとられるべき。
○ 一法人複数大学制度を活用する法人の評価については、経営を担う法人と教育研究
を担う大学それぞれについて、どのように評価し、評価結果に対する責任の所在をど
こに求めるのか、引き続き検討すべき。
5
(5)指定国立大学法人が統合する場合の扱い
【論点②】
○ 一法人複数大学制度の意義が、複数大学の教育研究資源を確保できるとともに、そ
の教育研究資源を、各国立大学のミッションを踏まえ効果的・効率的に配分・利活用
することを可能とすることにあるため、指定国立大学法人制度については、法人全体
ではなくその設置する大学を指定することとしてはどうか。
(6)その他
○ 法人の内部組織の在り方については、法人やその設置する施設の多様性に鑑み、法
人において検討・判断すべき。
○ 一法人複数大学化については、容易な統合・離散がおきないよう、統合を検討する
法人間でしっかりと議論を尽くし、各法人が所在する地域や経済界等のステークホル
ダーをはじめ、社会に対ししっかりと説明責任を果たしていくことが必要。
3.一法人複数大学制度の一法人一大学への応用
【論点③】
○ 2.(1)で示した一法人複数大学制度の基本設計のうち、法人の長と大学の長の役
割分担、役員会や審議機関等の意思決定システムの在り方について、複数の大学を設
置しない国立大学法人にとっても、経営力の強化や教育研究の質の向上の観点から応
用が可能か。
[文部科学省ホームページから全文引用おわり]
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