[写真]80年後の日本人に後ろ指を指されたくない筆者・宮崎信行、生まれた場所近くの河川敷で、平和安保法制が未明に成立した日の午後に撮影。
閣議は、火曜日と金曜日、各々午前9時前後に、あるので、閣法提出はその日に集中します。なので、通常国会中は、情報が集中してしまいがちです。
次の2つのエントリーで既報ですが、それでも、どうしても書きます。
(関連エントリー 1月19日付
◎日米・日豪・日英ACSA承認と防衛省設置法改正案が日切れ指定で提出 集団的自衛権軍拡路線突き進む
)
(関連エントリー 1月26日付
日英ACSA条約締結、今国会に承認案を提出へ、地球の裏側の戦争に後方支援する集団的自衛権が現実味
)
日本自衛隊が、米軍、豪軍のみならず、英国軍へも弾薬を提供できるようになる法案が、先週金曜日に既に提出されました。タイトルは「防衛省設置法改正案」(193閣法26号)。
平和安全法制(昨年3月施行)による「改め文」(かいめぶん)を反映した、現行自衛隊法は次のようになっています。
[総務省データベースから抜粋引用はじめ]
自衛隊法
(昭和二十九年六月九日法律第百六十五号)
最終改正:平成二八年五月二〇日法律第四四号
(中略)
(後方支援活動等)
第八十四条の五 防衛大臣又はその委任を受けた者は、第三条第二項に規定する活動として、次の各号に掲げる法律の定めるところにより、それぞれ、当該各号に定める活動を実施することができる。
一 重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律 (平成十一年法律第六十号) 後方支援活動としての物品の提供
二 重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律 (平成十二年法律第百四十五号) 後方支援活動又は協力支援活動としての物品の提供
三 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律 (平成四年法律第七十九号) 大規模な災害に対処するアメリカ合衆国又はオーストラリアの軍隊に対する物品の提供
四 国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律 (平成二十七年法律第七十七号) 協力支援活動としての物品の提供
(後略)
[抜粋引用おわり]
となっています。
そこに、既に提出された防衛省設置法改正案では、
「部隊等が第八十四条の五第二項第三号に規定する国際緊急援助活動又は当該活動を行う人員若しくは当該活動に必要な物資の輸送を行う場合において、同一の災害に対処するために当該部隊等と共に現場に所在してこれらの活動と同種の活動を行う英国軍隊」
という条文を挿入する、改正条項が入っています。
この改正条項は日英ACSA(にちえいあくさ、既に署名済みで、その承認案は、今国会にこれから提出予定)の発効日に施行しますので、早ければ5月にも、施行されます。
ものすごく詳しい人は、上の改正条文は、平時における集団安全保障、PKO(国連平和維持活動)のことだと分かると思います。法案では、集団的自衛権での後方支援も可能になります。
現実に「集団安全保障」と「集団的自衛権」の違いは、自公の関係者でも半数以上が分かっていません。きょう現在、南スーダンPKOが「マシャルさんは国外逃亡したからもう帰ることは無い」(きのうの防衛相の答弁)「内戦状態」(国連安保理への報告文書)ですので、PKOを優先して、書きました。
日本列島や、朝鮮半島、太平洋諸島での戦闘で、アメリカ軍、オーストラリア軍の力を借りることがあっても、英国軍の力を借りることがあり得るでしょうか? その場合は、我が国の国土を守って戦勝しても、その後に英国の内政干渉を受けるでしょう。改正条文が、南スーダンPKOのみならず、シリアなど地球の裏側での集団的自衛権を想定していることは火を見るよりも明らか。もう「火を見るよりも明らか」という慣用句が使いたくないくらい、戦争が法制上身近になってきました。
タイトルのことですが、自衛隊法は防衛省の所管であり、PKO協力法は内閣府の所管、条約は外務省の所管です。これを、内閣官房NSC(国家安全保障局)または防衛省が調整して、束ね法案にしたようです。防衛省の所管法令は、自衛隊法と防衛省設置法の2つがメーン。防衛省は都合が悪くない方の法律の改正をタイトルにする傾向があります。今回は自衛隊法改正がメーンなのに、「防衛省設置法改正案」と銘打ってきました。
上述の「第84条の5」は平和安保法制で挿入された条文であり、総務省データベースには載っていますが、広く使われている「法庫」には載っていません。筆者の手元の2000ページに及ぶ「防衛実務小六法平成26年版」にも載っていません。弁護士が参照するようなデータベースに反映されていないような条文が、矢継ぎ早に改正されます。名実ともに「切れ目がない」法改正の連続です。
坂道を下るような流れはもう誰にも止められません。でも、少しでも流れを遅くさせるのは、今を生きる大人の責任だと、私は強く考えます。別に自衛官の家族を不安にさせようと考えているわけではまったくありません。私は70年後の日本人に後ろ指をさされたくない。その思いだけです。
この記事の本文は以上です。
(C)2017 宮崎信行 Nobuyuki Miyazaki
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