(このエントリーの初投稿日時は、2015年4月1日午後1時で、それからバックデート)
ついに、第3次安倍内閣は、「民法の一部を改正する法律案(第189閣法63・64号)」を、平成27年3月31日(火)、衆議院に提出しました。
当ブログでは、この法律案を「民法債権編抜本改悪法案」と呼び、断固廃案を求めていく方針。
その前に、3月31日(火)は、参議院本会議散会後に、平成27年法律2号から11号が即日公布されました。天皇の政治利用はいけませんが、天皇陛下は、NHK予算の審査分、夜遅くまで国事行為の執務をされていたわけで、陛下もご苦労だと感じます。
改正地方税法は「2号」、改正所得税法は「9号」。前日の30日に成立していた、衆参民主党委員長による改正沖縄駐留軍用地跡地特別措置法は「5号」となり、公布順では逆転されました。今国会でここまで成立し公布された11法律のうち閣法は7本。政府・与党国対が指定した「予算日切れ法案※指定」の閣法22本のうち7本しか年度内に成立しなかったことになります。期限切れの特措法の多くは衆議院委員長提出のかたちで延長法が成立しました。
それと、2015年3月31日の当ブログの総アクセス数は1万2287ページビュー(PV)であり、久しぶりに1万を超えました。会期末6月24日の週に向けてがんばっていきます。ありがとうございます。
それはさておき、民法抜本改悪法案はとんでもない法案です。
現行民法に、「第465条の6」から「第465条の10」までの5つの条文を挿入する内容が大問題です。
法務省のPDFがうまくコピペできないので、48ページから54ページを見ていただきたい。
まず、改正法案では次のような内容が盛り込まれています。改正465条の6。
「事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲 に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前一箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。」
とあります。
続いて、首相官邸ウェブサイト内にある、平成26年6月17日に、安倍晋三首相も出席した第6回国家戦略特区諮問会議の議事要旨を見ていただきたい。
「とりわけ、公証を得るためには、必ず公証人役場に出向かなければいけなかったから、ワンストップにしようがありませんでした。それを今後は、公証人の方がワンストップの場所に出向いて、サービスを提供するということになりました」
これは八田委員による、法人設立特区の提案です。官邸の議事録の方が受けると思ったので、これを引用しましたが、この部分は昨秋の臨時国会に提出された「特法改正案」に盛り込まれており、衆議院地方創生特別委員会で審議入り、衆議院解散により廃案になっています。この特区法改正案は書き直して、近く今国会に提出されます。
つまり、特区法を今後再改正して、公証人が「ワンストップの場所に出向いて、サービスを提供する」対象を法人登記だけでなく融資にも広げ、特区を全国に広げれば、日本中の銀行に、箱男のような公証人がいて、その場で、連帯保証の公正証書をとれることになります。公正証書がなければ連帯保証できないのではなく、連帯保証の公正証書を確実にとる改悪法案にほかなりません。
このような馬鹿げた法案を作成した者は末代までの恥です。しかし、驚く人が多いでしょうが、法務省民事局と内閣官房特区室が別々の法律案を書いているので、このことに気づいている官僚はまったくいないようです。この動きは、官邸取り巻きの民間人か、あるいは、公証人の業界団体が動いている、と推測するのが妥当でしょう。
論外です。何が何でも廃案にしなければなりません。テレビ局は面白おかしく「民法改正」などと報じるべきではありません。そもそも今国会は、可視化の刑事訴訟法改正案などがすでに提出済みであり、今国会の審議日程ははみ出す可能性が高く、成立を前提にしたような報道は論外だし、そもそもとんでもない法律案です。また「金融ジャーナリスト」なるものが、公正証書を義務化しないと、経営者は融資を受けづらくなる、という論陣を平気で張るでしょう。彼ら彼女らは生活のために書いているのですから、責めるのではなく、無視すべし。低すぎる長期金利の妥当な範囲内での改善の方が、よっぽど中小零細企業向け金融が太くなる要因になります。
ちなみに、昨夜2015年3月31日夜、ついに日銀当座預金勘定は201兆円となりました。マネタリーベースの拡大は中央銀行と市中銀行のやりとりなので、公約通り「2年で2倍」になりましたが、今年度のお札の印刷について、日銀は国立印刷局に対して、1万円札は昨年と同じ、5000円札は減らす、として発注したことをすでに発表済みで、安倍首相が公約した「輪転機をぐるぐる回す」状態にはなっていません。ただ単に、コンピューター上の当座に積み上がっているだけであり、日銀と財務省理財局が長期金利を低く誘導しているために、融資もさほど伸びない「アホノミクス」になっています。このため物価上昇目標2%に届かないし、そもそも中央銀行と消費者の関係を2年間という時限を区切って目標を立てることからして、トンでも理論です。
このほか、法定利率の変動制による、法務省令委任も、天下り先が相対的に少ない法務省が利権が欲しいだけでしょう。
民法債権編抜本改悪法案が成立してしまえば、より重苦しく、より長時間労働の日本になるのは火を見るよりも明らかです。
日本国民全員の総力を結集して、民法抜本改悪法案を、審議未了廃案に追い込みましょう!