[写真]副総理・財務大臣に就任する菅直人さん
【菅副総理・財務相、仙谷国家戦略・行政刷新相に】
鳩山総理は6日、藤井裕久さんから「診断書と辞表」を受け取り、辞任を了承しました。後任の財務大臣には、菅副総理が就任し、第174通常国会での予算審議にあたることになりました。
仙谷由人・行政刷新大臣が国家戦略担当を引き継ぐことになりました。財務大臣は激務ですので、経済財政政策担当大臣・科学技術政策担当大臣も菅さんから仙谷さんに引き継ぐことになるかと思います。
【追記 2010-01-06 21:30】
科学技術政策担当大臣は最適任の川端達夫・文部科学大臣が兼任することになったようです。経済財政策諮問会議が廃止されましたので、経済財政政策担当大臣は事実上いなくなります。【追記終わり】
菅直人さんの財政・経済に関する知識は、藤井さんの足元にも及ばないのは事実。ですが、私は民主党政権の予算の年度内成立は楽観視できる状況になったと思います。与党にとって予算審議はとにかく逃げ切るしかない、と思っています。
菅さんは精神力が強いし、突破力があります。官僚をねじ伏せることができます。
【昨年の通常国会では予算委筆頭理事、攻守逆転へ】
菅さんは国会議員生活30年目となる第171通常国会で、初めて衆院予算委員会の野党側筆頭理事を務めました。私はこの予算審議で「民主党議員の質疑の傍聴の完投」をなし遂げたわけですが、その最終盤の2009年2月27日(総括質疑)のことです。
ラストバッターの菅さんが、津村啓介さん(現・内閣府政務官)をパネル持ちに従えて、「年越し派遣村」など雇用対策から質問を切り出しました。
そこで菅さんは、「民主党が雇用さらには生活のセーフティーネットについて」「私は厚労大臣には、3月末までにやってもらわなければならないことを」「その準備がどこまで進んでいるかということについても」「きょうこの場で確認をさせていただきたいと思います」とつなげました。
僕はのけぞりました。
「民主党支持ジャーナリスト」の私としては、次に野党として迎える予算審議は15年後だ。そのとき僕は50歳。だったら、「予算傍聴完投」は2009年のうちにやろう、これが青春だ!と迎えた千秋楽。
麻生内閣は解散先送り戦術に打って出ていましたが、どうあがいても、この日が政権交代をかけた天下分け目の大決戦前の最後の衆議院での予算審議です。
そこで、菅さんは「民主党案をどれだけ自民党政権が3月末までに反映しているか確認します!」とやってしまったわけです。政権交代の直前に麻生内閣の手助けをしてどうするんですか。私はこれは健全野党というよりも、むしろ利敵行為だと感じました。私の傍聴ノートには「(菅さん、)またやっちゃったよ!」とメモ書きが残っています。
ここで見えてくるのは、菅さんは手柄をあせる性格だということです。でも、今や与党であり、閣僚なんですから、手柄をあせるのは素晴らしいことではないですか!
【菅さんに期待したい財務省のサイフのディスクロージャー】
そこで、菅財務大臣にお願いしたいのは、
平成22年度本予算には、税外収入(その他収入)として、
財投特会から一般会計に「4兆7752億円」を、
外為特会から一般会計に「2兆8507億円」を繰り入れる、
ことになっていますが、
フローだけでなく、財務省がこの特会にどれだけお金を持っているのかストックのディスクロージャー(情報公開、荷ほどき)を促してほしい。
私が知っている限りでは、外為特会にはナント100兆円(1兆ドル)の外貨があり、そのほとんどがドル建てで、8割近くが財務省短期証券(TB)という日米財務省間の帳簿上のやりとりの債権でだということ。これとは別にすでに円に換金しているお金が19兆円ほどあったと思うのですが、それを今年度の第1次補正(麻生14兆円補正)などで使い切ってしまっているようだ、ということです。
これについては、2008年10月2日、参院の大塚耕平、大久保勉両議員が財務省4階の北側にある「為替市場課」の視察した際に同行したことを同日の民主党代表代行記者会見で明らかにしています。
同日付民主党ニュースは次のように伝えています。
(抜粋引用はじめ)
また、財務省為替市場課資金管理室視察メンバーと共に同日、為替介入を担当している財務省国際局為替市場課資金管理室を訪れ、特別会計の内部留保(いわゆる埋蔵金)の運用の実情を視察したと報告。「2重の意味で強い関心をもっていたので同行した」と述べ、第一には小沢代表が本会議の代表質問でも述べられたように民主党の新政策に必要な財源の一部を「いわゆる埋蔵金を活用する」と明言していることから現場を訪れ「使えるかどうか」という制度的な問題を掘り下げたことを明らかにした。
さらに、同管理室の特徴的な仕事として、1兆ドルの外貨準備の運用を行っていることに言及。「私自身、運用を直接が財務省が日々行っていることを最近まで知らなかった」としたうえで菅代表代行は、日本円にすると100兆円もの資金を運用し、為替安定のためにドル買いしている点について、「諸外国に比べてドルの保有がGDPに比べても著しく大きくなっている。果たしてそれだけ大きな資金をドルという形で常にもっておかなければならないのか」と問題提起し、そうした資金の実態を国民にオープンにするとともに、本来あるべき姿の活用を行っていきたいと語った。
(抜粋引用おわり)
菅さんは勤続30年ながら、外貨運用を「財務省が日々行っていることを最近まで知らなかった」という“未熟さのディスクロージャー”をしました。菅さんにしては珍しいことで、これは返って、「財務省は伏魔殿だな」という感想を持ちました。
もちろん、ドル建て米国債を安易に取り崩してはいけません。でも、まずはディスクロージャー。「脱官僚」「政治主導」の美名の下に、官僚をいじめたり、無視するようでは困りますが、菅直人に期待するのは、「官僚との大立ち回り」です。それが、菅副総理兼財務大臣の手柄となるのです。
菅直人よ、財務省に突撃せよ!
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鳩山総理=鳩山由紀夫首相
財投特会=財務省所管財政投融資特別会計
外為特会=財務省所管外国為替資金特別会計
藤井裕久財務大臣(民主党・比例南関東ブロック)が辞任する見通しとなりました。鳩山由紀夫総理はなお慰留しているようですが、本予算成立まで、まだ80日間あり、財務大臣交代は確実だと思います。
藤井さんは、民主党が初めて予算を組んだ、今年度第2次補正予算案(ムダづかい凍結)と、2009年度本予算案の年内編成に成功しました。
多大な功績です。
【辞任の理由に自由党党首・幹事長コンビの小沢一郎さんの影】
検査入院のタイミングが毎日新聞1面トップで「自由党残余財産15億円が不透明」が出た翌日だったことも何か関係があるのでしょうか。
6日付朝日新聞2面は「心折れた? 藤井財務相が辞意 『疲れた』理由それだけ? 小沢氏とぎくしゃく」として、小沢、藤井両氏の足跡として1955年から2010年までの55年間の2人の年表が載っています。
[画像]6日付朝日新聞の2面
朝日がここまで踏み込んだのは、藤井さんの表舞台はおそらくこれが最後になるので、記者が「知っていて書かなかったこと」をすべて書いたんだ、と思います。私が知らないこともいっぱい載っています。
【前回の予算審議も財務大臣・副大臣が辞任しているが乗り切っている】
以下、一部敬称略です。
もうお忘れの方も多いでしょうが、一つ前の通常国会でも、財務・金融大臣(中川昭一)と財務副大臣の1人(平田耕一)が辞任しています。自民党は財務大臣に、経財相(与謝野馨)の「3職兼務」で予算審議を乗り切っています。
私の国会傍聴ノートをひもとくと・・・
昨年2月19日の衆院予算委では、新財務大臣を前に、民主党筆頭理事(菅直人)が「予算より前に麻生内閣の体制について質問する」として、首相(麻生太郎)は「(G7で)メシは食ったが、酒は飲んでいない」と不毛の答弁。
が、しかし翌日(2月20日)になると、もはや大臣交代は争点ではなく、
「法人税収が激減しているのではないか」(仙谷由人)、
「かんぽの宿は2004年以降急速に経営悪化している」(前原誠司)、
「返済猶予は中小企業だけでなく銀行にもメリットがある」(大島敦)
と野党(民主党)の予算委員が怒濤の質問攻め。
これを見ると、新しい財務大臣には、予算編成チーム(内閣)にいた閣僚が横滑りするのが順当でに思えます。
昨年の予算審議(171国会)で財務大臣が交代した時期に書いたエントリーを紹介します。
麻布学園による財務大臣の“世襲”について
【バチカン問題】キリスト教に造詣が深い鳩山幹事長、中川前財務相の議員辞職を求める
民主党が八面六臂の大活躍 2月19日・20日の国会
「小泉を先に殺すべし」2次補正関連法案は3分の2で再可決させるべきだ
【かんぽの宿】“九州1区王子”が重大事実引き出す 松野頼久、川内博史、下地幹郎
「副代表のタバコを叱る」民主党vs自民党「飲酒を叱れずG7で最悪の失態」
【鳩山代表(総理)にお願いしたい「踏み絵」】
最優先人事として、鳩山由紀夫首相は内閣法に定める閣僚人数に1人空きがでるのですから、「踏み絵」をやってほしい。
「幹事長の国務大臣兼務」の要請です。いや総理なんですから、要請というよりも「命令」です。
閣僚を財務相に横滑りさせたうえで、小沢一郎幹事長に無任所大臣としての入閣を促すのです。
小沢さんがこれを受け入れれば、「閣僚の義務」という鈴を、総理&私たちが彼にかけることができます。もしも拒否したら、代表(総理)をお支えするつもりのない闇将軍だということが明確になります。
小沢さんが入閣した場合は、幹事長代理として中野寛成さんに党本部にいてもらうというのがいい手でしょう。中野さんは「小沢党首-中野国対委員長」「鳩山代表-中野幹事長-岡田克也幹事長代理」などの経験があります。
民主党内の財務大臣(大蔵大臣)経験者は羽田孜さん。また衆院予算委員長の鹿野道彦さんは2回の閣僚経験(農相、総務庁長官)があります。
民主党はもう与党であり、守備側ですから、予算編成にあたっていない人を財務大臣に据えてしまう、という手もあります。野党(自民党)からみると脅威です。だって「聞かれても、分からない」。それは大臣交代でやむを得ない面もあり、自民党はかなり攻めあぐねるでしょう。これは、衆参決算委員会では当たり前の構図で、野党議員は毎年攻めあぐねています。
この場合は、財務省政務三役が新大臣をバックアップすればいいのです。
財務省政務三役は、
野田佳彦副大臣が予算、峰崎直樹副大臣(参)が税制
大串博史政務官が予算、古本伸一郎政務官が税制を担当しています。