このところ、頭を痛めていたのはある一台の二胡の調整をお願いされてからです。
正直ここまで手のかかる胡は初めてでした。
多少のウルフ音ぐらいでした、花窓を外しさえすれば直せます。
ところがこの楽器、直せなかったのです。
なんとか花窓を外すことができ、胴の内部の木の厚みを計りました。
これはヴァイオリンを作る時の、木の厚みを計る計測器です、幸い胴の後ろからこれを胴の中に入れて図ると、棹のすぐ前あたりまで計れます。
この計測器で計ると胴の木の厚みがバラバラでした。
一枚一枚がバラバラなのと、本来削ってあるべきところの厚みもバラバラ。
これは皮を剥がすきり手の施しようがないかと、一回目の調整の時にできる限りをして、とにかく新しい楽器ですから弾きこんでくださいと、2週間後に来ていただきました。
その間、考えましたね、、、、
兎に角内弦の鳴りと外弦の鳴りが大きく違うのです。特に外弦の開放弦の鳴りのひどさは手の施しようがないくらいでしたが、一回目で多少はよくなったような気がします。
次に来ていただく日まで、私のやったのは、他の二胡をお客様の良くない状態にどうやったらなるのかと、あちこち削って、悪い状態を作り上げる事でした。
おおよそはその二胡の木の厚みのバラバラ状態が分かっていましたから、今よく鳴っている小葉紫檀を悪い状態に削ることです。（ほぉさんが見たら大絶叫！でしょうね、またやってる！それ幾らするの！？）
何とかその悪い状態を再現出来ました。
そこで、二回目の調整日はもう簡単でしたね。
皮を張り替えずに済みました。
何とかお客様にご満足いただけて、、しかし、まだこの先どうなるのか皮の育ち具合での変化が怖いですが、基本がわかって来たので、何とかなりそうです。
この楽器、実は相当な高額なのです。
現在日本では、小葉紫檀の二胡が１００万円以上で販売されています。
ヴァイオリンなどは比較的、金額とその楽器の質というのが比例していますが、どうも紫檀や黒檀あるいはローズウドなどの硬い木を使う楽器は楽器としての質と金額が比例しているようには思えません。
勿論、ヴァイオリンの所謂オールドと言われる、１７００年代に作られたクレモナの作家たちの楽器は、質というよりはその付加価値で金額が設定されているようですね。
ギターなどもその傾向にあります。作家としての知名度で金額が大きく変わります。
そして、その作る素材によっても金額は大きく跳ね上がります。
ギターなどの場合は、もちろんブラジリアンローズが破格の金額に設定されるようです、中には３００万円を超えるものも。
そういう点では三味線のコウキ（紅木）、いわゆる皆さんの知っている小葉紫檀、あるいはインド紫檀、これらはみな同じ素材ですが、三味線などはこれを使った楽器はやはり３００万くらいと言われます。
二胡の場合はまだそこまでは行きませんね。
でも私が知っている最高額の二胡は250万円です。
最近では、１００万円を超える二胡が随分販売されています。
その傾向は、この5，6年ある楽器屋さんが出てきてからでしょう。
というか、インドから小葉紫檀を中国に輸入（密輸も含め）できなくなってからでしょうね。
私が二胡を始めた15年くらい前はいくら小葉紫檀であるといっても、せいぜい３０万円くらいでした。
普通の二胡・老紅木などでも、良いもので24万円くらいでしたかね。
それがこの10年くらいでじわじわと上がってきて、今では
皆さんが20年くらい前に購入した15万円くらいの良い二胡が40万円近くしています。
これは日本だけの事情のようです。
それにしても、この、2年くらいで、私は3台の１００万円を超える小葉紫檀の二胡の皮を張り替えました。
二胡の金額は楽器としての優秀さとは限りません。特に小葉紫檀、あるいは明清老紅木などは、木の希少価値によって金額が決まるようですので、もし皆さんがそれらを購入するときには、是非弾いて確かめてから購入してください。
まだまだ暑い夏が続きそうです。コロナももっと広がりそうです、お体も楽器も気を付けてお過ごしください。
良い夏休みになりますように！
工房光舜堂西野和宏＆ほぉ・ネオ
御尽力を下さり、心より感謝申し上げます。
生涯の相棒と購入したのに・・と大変落胆し、これ以上改善しないのなら手放そうかと思いましたが、
西野さんに新たに息吹を頂いたので、この後、どう良くなっていくのか見届けてみようと腹をくくりました！
今後も様々な問題が出てくるかもしれませんが、どうぞよろしくお願い致します。
そのお陰で、かなりの事が勉強できました。
この知識は、キチンおtネオちゃんにまで伝わっていくのです。
曲がりなりにも、どんな二胡でも健全に鳴らしますと言っている以上勉強の機会をいただけてありがたいです。あの問題児君が何とかなればほとんどの二胡は直せますね。
いいつでもまた来てください。