二胡に使われる蛇皮は蛇革ではない!!!!
皆様にとってレザーというものはすごく身近なものですよね、私もレザーが大好きで革靴を沢山持っています。もちろんお手入れも欠かせないものです。
二胡の蛇は革なのか?皮なのか?
皮です!!!ということを強く皆様にお伝えしたいです。
皮はどうやって革になっていくのでしょうか?
皮とはイメージの通り生き物から皮を剥いだ状態のもので、肉や脂肪なんかが一緒についた状態のものです。
蛇皮は乾燥して運ばれます。光舜堂に届く際も同じです。
梱包を剥がすとなんとも生々しい匂いが部屋中に広がってすぐに換気をしなければならないくらいの匂いです。
蛇皮は水につけ乾燥した皮に水分を含ませます。
こうすることで生皮という状態になります。生皮になると皮膚側の脂肪分などがぷよぷよした状態になります。
その後アルカリ性である消石灰を溶かした液に漬けて、脱脂をし、皮の繊維をほぐします。
この作業で肉や脂肪の部分を取ります。その際、油分が一緒に抜けます。
肉の部分が取れたら消石灰を洗い落とし、革に染色加工する際は漂白の作業を行うそうです。
一度アルカリ性に寄ってしまった皮のPHをもどして鞣しにかかります。
生だった皮が死んで固まっていくコラーゲンの繊維に対し科学的に、不可逆的に安定させるというものが鞣です。
鞣にはいろいろな方法がありますので割愛させていただきます。
革を柔らかくと書いて鞣。鞣の工程を経て革になります。
いくら柔らかくなったからといって鞣す前に散々油分は抜けてしまっているのでオイルを加えて仕上げの工程へと進んでいきます。
長くなってしまいましたので革の出来方については一旦終わりとします。
一度オイルを抜いてしまったものには人工的に油分で保湿をしなければなりません。
例えばカバンには物が入り、ずっと同じ形ではありません、力が掛かり伸びるところがあれば、シワになる場所が毎日都度変化します。乾燥した革にとってその状態は劣化の原因になります。
なのでオイルを塗って使おうね、というのが革の扱い方なのです。(塗りすぎカビの原因になります。)
では二胡の’’皮’’には油分を塗ってあげることが必要なのでしょうか?
脱脂の工程を踏んでいない、元々の油分を持った皮に。
乾燥したからといって、財布やカバンのように、折り曲げたり、引っ張ったり使うものなのでしょうか?
光舜堂では人工皮も作っていますが、蛇皮の部分は振動板である必要があるのです。
ピンと張っているからこそ意味があるのです。均一であるからこそ振動板になるのです。
皆様の演奏の振動でゆっくりと柔らかくなった皮は本当にいい響きがします。
弦の振動を駒が受け取り、皮を伝って胴である木を震わせます。
オイルを塗ることによって蛇皮は油分を吸います。
本当に少量を均一に塗れるのならばいいものなのかもしれませんが、皮の厚い部分薄い部分、張りの弱い強いを見極めて塗ることができますでしょうか?二胡に張った状態の皮には私はその目利きはできません。
二胡の蛇皮はオイルを塗らなくても、次第に柔らかくなってしまうものです。油分を入れるということは、私にとってはその振動板としての寿命を縮めている様に感じてなりません。
なぜこの様に書いているかと言いますと、お客さまに貸し出した私の二胡にオイルが塗られて帰ってきました。
すぐに拭き落としましたが、いつか悲しい気持ちになる日が来るのだろうと思い少し悲しい気持ちでした。自分で皮を張って大切に使っていたものだったので。
きっと貸し出した方は親切心でやってくれたのでしょうが、基本的に自分の楽器を他人に貸す際、借りる際は演奏以外触らない様にしてくだい。楽器にとって一番のメンテナンスは演奏、楽器を振動させることですから。
蛇皮は松脂をタオルやブラシで落とし、弦を緩めておくくらいのメンテナンスしか必要ありません。
よろしくお願いします。
工房光舜堂ネオ