二胡は弾き込んで育てた音がとてもよいですね。
ですから、良い二胡というのは良く弾きこまれた楽器だと思っています。
ある意味条件としては皮張り以外は皆同じだと思います。
それは木が育つからです。
ヴァイオリンなどは量産とハンドメイドとの差がかなりはっきりしています。
ヴァイオリンの場合は量産と言っても二つあります。
一つは完全に機械化されていて全ての部材が機械加工されて組み立て接着だけが手仕事である場合。
それも、表板と裏板は薄い木を蒸気蒸しで金型に入れてあのバイオリンのふくらみを作るものです。
もう一つは表板も裏板も機械加工ながら削りだされているものです。
これは手で削るよりは比較的均一に木が削られるため安定した製品が出来上がります。
蒸気蒸しでプレスされたものは、木の状態によっては平らに戻ろうとするものもあり壊れやすいものもあります。
また、蒸気で蒸されるので乾燥が進み過ぎて音としては育ちにくい楽器になります。
二胡にもその育ちにくい楽器というのはあります。
一つは、アフリカ紫檀という気を使った楽器で、今から20年ほど前から作られ始めて最近ではほとんど販売されていないようです。
理由の一つは音が育たないからです。
生の木であるはずなのですが育ちにくいですね。
これ後から聞いたら、どうやら木を人工乾燥してしまっているためのようです。
木を人工的に乾燥するには強い蒸気で蒸すと内部の水分が飛んでしまいます。
細胞が古くなってしまうのです。
こうなるともうすでに古い物ですから音としても育たないのです。
絶乾と言いまして木の水分を10%以下に落としてしまうと木が動きにくくなるのです。
木の振動する力も落ちます。
普通に空気中で木をよく乾燥させた場合。17%前後以下には落ちないと言われます。
砂漠などでは違うでしょうが、人が生きていける環境であれば、木もそれほどひどくは乾燥せず、木の寿命(伐採してからも木は生きています)針葉樹の場合1000年近く、広葉樹でも500年くらいは化石化してしまうことはないようです。
その木が自然に動くことが楽器としての木の役割・振動を起こすことになると私は考えています。
木を漆や塗料で保護しておけばもっと長生きするでしょう。
楽器の塗装はそのような意味もあると考えます。
その木の振動を止めるのが人工乾燥です。
ところが、最近あるメーカーの楽器はどうやらかなり人工乾燥させた木を使ってきています。
確かに人工乾燥すると胴割れや棹の曲がりなども無くなりますからメーカーにとっては良い事なのですが、楽器としては育たなくなります。
折角楽器を作っていながら最初からならなくするというのはどうなのでしょう?
20年くらい前には古い家の柱やあるいは家具などを分解して作っていたのですが、最近ではそのような材も少なくなり輸入材を十分な自然乾燥の時間を取らずに楽器を作ってしまうため、あとから問題(割れなど)が起きることが多くこのように人工乾燥で無理やり動かない材を作ってしまっているようです。
たぶん、これは悪い二胡と言えるでしょう。
工房光舜堂西野和宏&ほぉ・ネオ