2024.08.28
クルスク侵攻方面の戦い、ロシア軍がノヴォホロディフカ全体をほぼ占領
https://grandfleet.info/war-situation-in-ukraine/battle-of-pokrovsk-russian-troops-occupy-almost-the-entire-novokhorodyvka/
ウクライナのクルスク侵攻作戦の経緯については、既に書いた通りです。
これはウクライナ大統領府と参謀本部の大きな決断であり、それが正しかったのか誤りだったのかの結論が出るのは、もう少し時間の経過を待たなければなりません。
クルスク侵攻作戦の意味は、不利になっているウクライナ軍がじり貧を避けるために戦場の取捨選択をしたと言うことだろうと思います。
それ自体は合理性があり戦争の継続をするのなら避けては通れない道です。
不利であるなら戦場の数を減らして、劣勢のウクライナ軍の密度を高めるしかありません。
それが、ドネツク州を軽視(ほぼ放棄)すると言うことになりました。
クルスク侵攻作戦の準備は、数か月前から始まっていたようで、その影響でドネツク中部戦線であるトレツクТорецьк~ニューヨルクNiu-York方面とポクロウシクPokrovsk戦線でのウクライナ軍の不利から後退は、7月から始まっていました。
問題はポクロウシクPokrovsk戦線で、とうとうデイミトロフМирноградとポクロウシクPokrovskの近くまでロシア軍が進出しました。
ウクライナの参謀本部とすると、これも予定通りなのだろうと思います。ドネツク州を軽視(ほぼ放棄)すると決めたのなら、ここで無駄に兵力の消耗はしないと思います。むしろ温存して他の戦場に振り向けるでしょうね❓
記事の略図を見ると良く分かりますが、このことによりロシア軍には、兵力の移動ルートが出来ました。アウデイーイウカからポクロウシクPokrovskの近くまでは、全く妨害を受けずにロシア軍は移動できます。
その移動してきたロシア軍が、現在大きな湖の西側で三方向に攻撃しています。
①デイミトロフМирноградとポクロウシクPokrovsk方向
②南西のセリダブSelydove(南の方の大きな市街地)方向
③南の幹線道路E-50を超えて更に南に進撃するルート
今、ロシア軍は大雑把にこの三つの方向に進撃し始めました。
ポクロウシクPokrovskから州境まで15km位です。
セリダブSelydoveからも州境まで20数km程度です。
地図を見るとセリダブSelydoveの西には大きな集落や都市もなく、ロシア軍がここからどの方向にも比較的自由に攻撃(又は移動)出来ます。
こう考えるとロシア軍は、①の攻撃を急ぐ必要がないことが分かります。
理由は、セリダブSelydoveのすぐ近くをポクロウシクPokrovskからクラホヴェKurakhoveに行く鉄道路線が通っていてセリダブSelydoveを制圧すると南ドネツクの補給(兵站)の幹線ルートである鉄道が使えなくなります。
後は、かなり西に大回りしてトラック輸送しか南ドネツクへの補給方法がなくなります。
南ドネツクの攻撃を考えるとロシア軍にとっては、セリダブSelydoveを制圧した方が、やりやすいと言えます。
デイミトロフМирноградとポクロウシクPokrovskに比較すると市街地の面積は、はるかに狭くこちらを制圧する方が簡単です。だから、おそらくロシア軍はセリダブSelydove制圧を最優先すると思います。
実際、もう郊外まで接近していて、直ぐに市街地の攻撃を始めると思います。
制圧したなら、おそらく西の州境の方向に進撃しながら、北側にあるデイミトロフМирноградとポクロウシクPokrovskと南ドネツクを分断するような動きをすると思います。
その後、州境に近い場所を南に進撃していくとそれほど大きな拠点もなく、ウクライナ軍はまるで想定していない方向からロシア軍に攻められることになります。
マリンカMar'inkaとその南方面でもロシア軍は西に進撃を始めています。
やはり補給拠点であるコスティアンティニフカKostyantynivkaは最近ロシア軍が制圧しました。
その先の補給道路であるO-0532もロシア軍が一部遮断に成功しています。
このように考えてくると中部ドネツクでは、既にロシア軍が勝勢です。
その勢いを駆って南ドネツクにも既にかなり肉薄していると言えます。
ポクロウシクPokrovskの危機ばかりが言われていますが、ポクロウシクPokrovskはいつ陥落するかの問題です。今更防衛することは、事実上不可能です。
むしろポクロウシクPokrovskの南のセリダブSelydoveをロシア軍に制圧される方が、南ドネツクを考えると危機的と言えます。
このような状況が生まれたのは、ウクライナ軍参謀本部がポクロウシクPokrovsk戦線からの撤退(または放棄)を決めたからです。
それも既に決定済みでロシア軍は、もうセリダブSelydoveを攻撃する位置まで進出していますから、ここから変えることは出来ません。
地図を見て考えるとロシア軍が南ドネツク全域を制圧するのは、来年春ごろでしょうね。ウクライナ軍の撤退が早ければ、もっと早まるかもしれません。
ウクライナ戦線は、この意味で大きく動き始めました。
その結果、どちらが有利になるのか❓
ウクライナ大統領府と参謀本部の決断の是非が分かるのは、その時です。
このままドネツクで不利な戦いを継続してもジリ貧ですから決断自体は、正しいと思います。
本来であれば、そこで他の戦場を安定させて停戦交渉を始めるべきだと思います。
停戦交渉をせず戦争を継続すれば、再びどこかの戦線で不利が発生して同じことの繰り返しになるような気がします。
少なくともクルスク侵攻作戦で戦況が良くなることは、ないように思います。ロシアに一泡吹かせたところで、さっさと撤退するべきだと思います。クルスクで兵力を無駄に消耗すれば、ドネツクを放棄した意味がなくなります。
※関連記事目次
「中立の視点で見るウクライナ紛争」の目次⑥
https://blog.goo.ne.jp/kitanoyamajirou/e/e2c67e9b59ec09731a1b86a632f91b27