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年のはじめに考える 人間中心の国づくりへ~アベノミクスも綱渡り~東京新聞社説

2014-01-01 17:39:54 | 政治
年のはじめに考える 人間中心の国づくりへ

~アベノミクスも綱渡り~東京新聞社説


アベノミクスも綱渡りです。

異次元の金融緩和と景気対策は

大企業を潤わせているものの、

賃上げや消費には回っていません。

戦後積み上げてきた平和国家日本への

「尊敬と高い評価」は崩れかかっているようです。



東京新聞社説より 2014-01-01
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年のはじめに考える 人間中心の国づくりへ

 グローバリゼーションと中国の大国化に「強い国」での対抗を鮮明にした政権。しかし、経済や軍事でなく人間を大切にする国に未来と希望があります。

 株価を上昇させ、企業に巨額の内部留保をもたらしたアベノミクスへの自負と陶酔からでしょう、安倍晋三首相は大胆でした。就任当初の現実主義は消え、軍事力増強の政策にためらいは感じられませんでした。

 多くの国民の懸念をふり払って特定秘密保護法を強行成立させた後は、初の国家安全保障戦略と新防衛大綱、中期防衛力整備計画の閣議決定が続きました。

◆強い国への疑心暗鬼

 今後十年の外交、防衛の基本方針を示す安保戦略は、日米同盟を基軸にした「積極的平和主義」を打ち出し、戦後の防衛政策の転換をはかりました。

先の戦争への反省から専守防衛に徹する平和国家が国是で国際貢献も非軍事でしたが、積極的平和主義は国際的紛争への積極的介入を意図し、軍事力行使が含意されています。

 米国と軍事行動を共にするには集団的自衛権の行使容認の憲法解釈変更は前提で憲法九条改正は最終の目標です。このままでは米国の要請で「地球の裏側」まで自衛隊派遣の義務が生じかねません。

 安倍政権が目指す「強い国」は「急速な台頭とさまざまな領域へ積極的進出」する中国を念頭に自衛隊を拡大、拡充します。それは他国には軍事大国の脅威ともなるでしょう。

疑心暗鬼からの軍拡競争、いわゆる安全保障のジレンマに陥ることが憂慮されます。

 強い国志向の日本を世界はどうみているか。昨年暮れの安倍首相の靖国参拝への反応が象徴的。中国、韓国が激しく非難したのはもちろん、ロシア、欧州連合(EU)、同盟国の米国までが「失望した」と異例の声明発表で応じました。

戦後積み上げてきた平和国家日本への「尊敬と高い評価」は崩れかかっているようです。

◆人には未来と希望が

 アベノミクスも綱渡りです。異次元の金融緩和と景気対策は大企業を潤わせているものの、賃上げや消費には回っていません。

つかの間の繁栄から奈落への脅(おび)えがつきまといます。すでに雇用全体の四割の二千万人が非正規雇用、若き作家たちの新プロレタリア文学が職場の過酷さを描きます。人間が救われる国、社会へ転換させなければなりません。

 何が人を生きさせるのか-。ナチスの強制収容所で極限生活を体験した心理学者V・E・フランクルが「夜と霧」(みすず書房)で報告するのは、未来への希望でした。愛する子供や仕事が、友や妻が待っているとの思い、時には神に願い、誓うことさえ未来への希望になったといいます。

 人はそれぞれがふたつとない在り方で存在している。未来はだれにもわからないし、次の瞬間なにが起こるかもわからない。だから希望を捨て、投げやりになることもないのだ、というのもフランクルのメッセージでした。

 社会にも未来と希望があってほしいものです。四月から消費税率引き上げとなる二〇一四年度の税制大綱は企業優遇、家計は負担増です。

企業には復興特別法人税を前倒しで廃止したうえに、交際費を大きく減税するというのですから国民感情は逆なでされます。

 税もまた教育や医療と介護、働く女性のための育児や高齢者福祉サービス、若者への雇用支援など人間社会構築のために振り向けられなければなりません。そこに未来や希望があります。

 所得再配分は国の重要な役目。政府が信頼でき、公正ならば国民は負担増をいとわないはずです。高度経済成長はもはや幻想でしょう、支え合わなければ生きられない社会になっているからです。

 脱原発も人間社会からの要請です。十万年も毒性が消えない高レベル放射性廃棄物の排出を続けるのは無責任、倫理的にも許されません。コスト的にも見合わないことがはっきりしてきました。

 「原発ゼロ」の小泉純一郎元首相は「政治で一番大事なことは方針を示すこと。

原発ゼロの方針を出せば、良い案をつくってくれる」

「壮大な夢のある事業に権力を振るえる。結局、首相の判断と洞察力の問題」と語りました。

首相の洞察力は無理なのでしょうか。

◆涙ぐましい言論報道

 特定秘密保護法でメディアの権力監視の責任と公務員から情報を引き出す義務はいちだんと重くなりました。

それにもまして大切なのは、一人ひとりの国民の声に耳をすまし伝え、できれば希望になることです。

画家の安野光雅さんは、それを「涙ぐましい報道」と表現しました。涙ぐましい努力を続ける報道言論でなければなりません。

東京新聞社説より 2014-01-01
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014010102000108.html


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