「人くい鬼モーリス 松尾由美 著 理論社 刊」
ひさしぶりに松尾由美さんの本を図書館で見つけて読みました。
2008年初版のわりと新しい本です。
内容は、ファンタジーミステリー・・・といった感じでしょうか?
「ハートブレイクレストラン」や「雨恋」、「スパイク」など今までの彼女の書く作品とちょっと違った感じがしました。
架空の世界の生き物(人くい鬼・・・なのですが、「人食い」とあえてしていないのは、死体は食べる(?)が生きている人を決して襲わないというおとなしい鬼なのです)が、この物語の重要な役割を果たしています。
夏休みに富豪層の別荘地で、有名デザイナーの小学生の娘の家庭教師のアルバイトが募集されていました。
条件は高校生の女子であること。しかもその小学生の女の子に気に入られること、そしてもうひとつは・・・・?
そのアルバイトに応募した主人公の少女は・・・その全てをクリアして夏の間別荘で暮らします。
もうひとつの条件とは、「モーリス」の姿が見えること。
モーリスは大人には見えないそうなのです。
人くい鬼・大人には見えない・・・この辺がファンタジーの世界ですよね。
前半は、少女と女の子のかかわり方、人くい鬼とはいったいどんな生き物で、どんな風に人を食べるのか???という話。
女の子の祖父が実際に子供の頃にこの辺りで、人くい鬼を見てどんな風に死体を食べたか?ということがノートの中にギッシリ綴られています。
それを読んでいた、女の子は人くい鬼を見て、モーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ」のかいじゅうに似ていると言うことで「モーリス」と名前をつけます。
後半には、殺人事件も起こります。
でも、殺人事件もあまり生々しい感じがしないところが不思議。
最後には、車にはねられた女の子をモーリスが守り、モーリスは力尽きて消えていく・・・というストーリーなのです。
あとがきに著者が書いていましたが、著者の息子が幼少だった頃、このモーリス・センダックの「かいじゅうたちのいるところ」を読んであげたそうで、その本のかいじゅうたちを基にこの物語が生まれたそうです。
ファンタジー好きな私にとって、とても楽しめた一冊でした。