東京 DOWNTOWN STREET 1980's

東京ダウンタウンストリート1980's
1980年代初頭に撮影した東京の町並み、そして消え去った過去へと思いを馳せる。

私の中の東京 わが文学散策~野口冨士男著

2011-07-10 18:36:00 | 書籍
今回は野口冨士男の「私の中の東京~わが文学散策」を紹介したい。岩波現代文庫より刊行されており、現在も入手可能である。


ここまで年代順に紹介してきたつもりなのだが、今回の野口冨士男は明治末年の生まれとのこと。神楽坂で生まれた作者の思い出が語られる。震災前の市電外濠線に沿ってと題されて語られる情景には、東京の山の手の景色が浮かび上がる。副題にわが文学散策と記されている通り、荷風や佐藤春夫の作品にインスパイアされて銀座、小石川、本郷、上野、浅草、吉原、玉の井、芝浦、麻布、渋谷とほぼ現代の様子を重ねながら書かれているので、分かりやすいと思う。私自身は当然時代は大きく違うとは言え、小石川、本郷、芝浦、麻布など学生時代から良く知った土地でもあり、興味深く読むことが出来た。

このブログで取り上げている中には、敢えて永井荷風の日和下駄などは入れていない。定番中の定番であり、改めて私が取り上げるまでもないと思っているということもある。こうして題材として扱っている本が出てくることで、不祥私が取り上げずともと思えてしまう。膨大な荷風の著作のどれを読むべきかというのは難しいところであるが、関心のあるところを接点にして読み始めるのが一番だろうという気がする。私は小学校時代から知っていた白山の花街を舞台にした「おかめ笹」を最初に読んだのだが、興味深く思った。今もその痕跡が残っているこの花街は、今から三十数年前には昼下がりの小学校からの下校時に脇を通ると、三味線の稽古の音色のする町だった。その町のかつての姿が生き生きと描かれているのを読むことは、面白かった。

さて、脱線したが、こういった様々な作家や作品にちなんでの町歩きには、この本はとても良いガイドになるだろうと思う。


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