バーとホテルと農業と…           ほんまはテレビ

東京から徳島の山奥へ移住したテレビディレクターの田舎暮らしドキュメント。毎日なんやかんややっとることの記録です。

焼き鳥屋いちいち

2012年06月03日 22時14分00秒 | いちいち
東京では夜仕事が終わってから、
「さて今夜の晩飯は何にしようか」と考えることが多かった。
どんなに遅くなっても食事の選択肢には困らなかった。
どちらかというと選択肢が多すぎて悩むことの方が多かった気がする。

山の上で暮らしはそうはいかない。
一番近い商店まで車で片道15分。
もちろん夜になると店は閉まってしまう。
だから冷蔵庫の中身は常に頭の中に入っていて、
翌日の晩飯ぐらいまでは考えておくようになった。

今日の晩ご飯はカレーにするつもりだったのだが、
夕暮れが近づくに従ってなんだか気分が変わってきた。
酒を飲みながら、まったり食事をしたい気分・・・。
冷凍庫を開けると鶏肉が少しだけあった。
もも肉、そしてせせり(ネック)まである。
「今夜は焼き鳥にしよう!」と一人で盛り上がった。
畑に行ってネギを一本切ってきて、
「さて串に刺そうか」と思ったところで手が止まった。
竹串が、ない・・・。

どこを探しても無い。
買った覚えが無いのだから当たり前である。
脳裏でいろんな声が飛び交い始めた。
「やっぱり予定通りカレーにすればいいんじゃない」
「それとも車で竹串を買いにいく?行った店に置いてあるかどうかは知らないけどね」
「串に刺さなくても炭火で焼けばいいじゃないの・・・」

テンションは一気に下がっていった。
僕はビールのグラスを片手に、焼き鳥にかじりつきたかったのだ。
「串に刺さっていない焼き鳥屋なんて認められるか!」
ザワザワザワ・・・。
風の音が聞こえた。
ここは天空の基地「いちいち」
これは神様が僕に与えてくれる試練なのだ。

庭に出てみた。
ザワザワザワ・・・音のする方に行くと、竹林があった。


細い竹を一本拝借し、鉈でいくつかに割ってみた。


カッターナイフで削って竹串を作ってみた。
早く食べたい気持ちを抑えて、削ることだけに集中。
削りすぎて何本も失敗したけど、だんだん上手く出来るようになってきた。


完成した竹串に鶏肉を刺してみる。
なかなかいいんじゃない?


早く食べたい・・・気持ちを抑えて
炭火を起こし、火鉢に乗せると白い煙と共に香ばしい匂いが。
これこれ!こんな焼き鳥屋に行きたかったんです!


今日は障子を開けて、天空のビヤガーデンを気取ってみました。


空にはまん丸のお月様が、
いつもは見えない山の稜線を照らしてくれました。
今夜の焼き鳥は最高に美味しかった。

この文を書きながら、果てしなくどうでもいいことだなぁと思いましたが、
幸せのために手間を惜しまないこと、
これこそが「いちいち」なのだと感じた夜でした。


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1 コメント

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Unknown (kochan)
2012-06-04 21:21:42
焼き鳥ええね~。蒼い空がまたええかんじ。
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