バーとホテルと農業と…           ほんまはテレビ

東京から徳島の山奥へ移住したテレビディレクターの田舎暮らしドキュメント。毎日なんやかんややっとることの記録です。

夏の終わりに

2012年08月31日 09時16分39秒 | いちいち
徳島県上勝町に来てもうすぐ5ヶ月。

今朝、目覚めて何かが違うと思った。

“音”がない。

4月に来た頃はウグイスが、

暑くなり始めてからはヒグラシが、

夜明けのBGMだったのに。

今日はウグイスもヒグラシも鳴いてくれない。

快晴の青空と音の無い山。

なんだか一人取り残されてしまったような気がした。

そろそろ夏も終わりなのかな…

と思っていたらセミの合唱が始まった。

秋から冬へ

山ではどんな音が聞こえるのだろう?

東京にいます

2012年08月22日 08時44分24秒 | いちいち
先日から東京に来ております。
上勝町で撮影してきた番組の編集のためです。
東京ではずっと編集室にこもりきりなので、
晴れているのか、雨が降っているのかさえ分かりません。
25日放送なのに、まだまだ編集中です。

NHK BSプレミアム
8月25日(土)午後1時30分~2時59分
「笑うキミにはフクきたる」

http://cgi2.nhk.or.jp/navi/detail/index.cgi?id=12n11520120825

ご覧ください。

茶摘みに行かねば

2012年07月26日 17時48分15秒 | いちいち
上勝町では今、茶摘みの最盛期を迎えています。
このお茶は阿波晩茶と言われ、日本では珍しい乳酸発酵させたお茶。
爽やかな酸味が特徴で、暑くなってからは毎日大量に作ってガブガブ飲んでいます。
こんなに毎日飲んでいるからには、どうやって作るのか体験してみなければ・・・
という訳で茶摘みに行っていきました。



ここが茶畑です。
写真では分かりにくいかも知れませんが、山の急斜面にあります。
茶摘み娘が優雅にお茶を摘んでいるのとは別世界。
上勝のお茶はほとんどが勝手に生えて来た野生の木から作られます。
岩場あり、崖あり、なかなかワイルドな世界です。



手には軍手、親指と人差し指に針金を巻きます。
阿波晩茶はお茶の新芽がしっかりする7月まで待って葉を摘みます。
親指と人差し指で枝を握り青々と茂った茶葉を掻き取るので、一日で軍手はぼろぼろ。
指の皮が剥けてしまいました。



こんなお茶の木が・・・



丸裸になるまで摘み取るのです。

町の人口減少と高齢化で、茶摘みをする人は年々減って来ているそうです。
最近ではIターンでやって来た若者たちも手伝いに来ますが、
どこの農家さんに行っても人手が足らないと言っていました。
僕もまだまだ茶摘みに行かねばと思う日々です。

そして茶摘みの楽しみと言えば、みんなでおしゃべりをすること。
一日中茶摘みをしていると、いろんな話が聞けて町のディープな情報を入手することが出来ます。
新しく出来たお店の評判から、◯◯さんの夫婦喧嘩の話まで・・・
今日も町中の茶畑で様々な情報交換が行われているのです。
この町のことを知りたいなら、もっと茶摘みに行かねばと思うのです。



あまりの急斜面に音を上げて、座り込んでお茶を摘む僕。

五右衛門復活

2012年07月13日 00時01分33秒 | いちいち
この家を借りてからずーっと気になっているものがあった。
駐車スペース前の畑の横にある小さな小屋。
五右衛門風呂である。



2、3年前までは使っていたらしいのだが、
最近は水漏れが激しく使えないと言われていた。
その五右衛門風呂を近所の友達が修理してくれた。
「上手くいかんかも・・・」と彼は言っていたが、
水漏れも止まり、見事に修理成功。
人生初めての五右衛門風呂を体験した。



薪に火をつけるとあんがい短時間(20分ほど)で湯が沸いた。
木の底板に乗って湯につかる。
「いい湯だな~」と思った瞬間、尻に火がついた。
底板の下から熱湯が噴き出してくる。
周囲は鉄なので、うっかりもたれかかる事は出来ない。
板の上に体育座りでじっと我慢。
でも、体の芯から温まった。
いや、茹でられたと言うべきだろうか・・・。
風呂の縁に腰掛けてビールを一杯。
雨上がりの山からは霧が立ち上っていた。



初めて温泉に入った時(覚えていないけど)以上の感動があった。

みてとる

2012年06月14日 11時25分35秒 | いちいち
この町に来て『みてとる』という言葉を度々耳にします。
「よおみてとれよ」と言われた時は、
「よく見ておけよ」程度に考えていました。
先日、友人の家で彼の父親と一緒にお酒を飲んだとき、
「大工仕事はだいたいみてとれるけんな」とお父さんが言いました。
お父さんは大工ではありませんが、
家の構造をよく見ると、教わらなくても自分で出来るそうです。
それが『みてとる』。


お父さんが改装したという玄関。風情があります。


友達が作ったかまど。これもみてとったもの。

大工に限らず、職人の世界では良く「技術は見て盗め」と言います。
料理人の世界でも良く聞く言葉。
テレビの世界でも昔はそんな事をいう先輩がいました。
それが最近では、新人教育は「親切・丁寧」があたりまえ。
でも、この町に来て本来仕事とは、
『見て覚える』ことが大切なのだと改めて考えさせられました。

例えば農作業のお手伝いをしていても、
農家さんは必要最低限の注意を言うだけで、
あとはほとんど指示をしません。
手際や出来が悪くても、
注意をするのはよっぽどの時だけ。
草刈りの手伝いをして、僕が上手く出来ていなくても、
農家さんは黙ってもう一度刈り直すだけ。
最初はなぜだろうと疑問に思っていました。
効率は悪いし、時間も余計掛かります。

農家さんが黙っている理由、
一つには「耳で聞いた事は、結局身に付かない」という事だと思いました。
でも、いろいろと作業をするうちに、
それだけではないと感じるようになりました。
それは「全く同じ仕事は、何一つとしてない」という事。
草刈り一つをとっても、
全てが同じ草ではないし、
山の傾斜もまちまち。
季節も違えば、使う鎌も違う。
もし付きっきりで手取り足取り教えたとしたら、
一番大切な事が身に付かないからではないでしょうか?

山で仕事をし、生きて行くためには、
一つとして同じ事が無い状況の中で、
どんな時でも対処できる能力を身につける必要があります。
様々な状況、仕事のしかた、その出来具合を自分でしっかりと見て、
自分の手で試し、失敗を重ねながら身につける。
この町の人たちは、それが一番大切な事だと、
経験的に知っているように感じます。
だからいちいち口で教えたりしないし、
いちいち聞こうともしない。

今、借りている家の横で小さな畑をやっているのですが、
「頑張っとるなぁ」と言われるくらいで、
「こうした方がいい」と言う人は誰もいません。
(多分心の中ではいろいろ言いたい事はあると思うんですが・・・)
だから他の人の畑を見ながら、いろいろとやってみる。
どんなに失敗をしてもいいから、
なにか一つでも身に付くよう、自分なりにやってみる。
そして畑の変化を良く見ておこうと思っています。


うちの畑。ジャガイモ、トマト、茄子、ピーマン、キュウリ、唐辛子、枝豆、ネギ、サラダ菜などを植えています。

『みてとる』
最近よくこの言葉を心の中でつぶやきます。
すると物の見え方が少し変わってきました。
『みてとる、みてとる、みてとる・・・』
どうでしょう、いろんな物を見るのが楽しくなってきませんか?