昨夕、突然の来客です。
「わあ~、お久しぶりですね。お元気でしたか?
どうぞどうぞ、おあがり下さい」
「はあ~い、まあ、どうにか、元気にしています。
ごらんの様に、ひざが悪くて、歩くのが少し不自由でが・・・」
20数年前に、ひょんなことで、知り合った、おばあちゃんです。
そんなおばあちゃんの、突然の訪問です。
「まま、どうぞ、あがってお茶でも飲んで下さい」
壁伝いに、身体を斜めにして歩く姿は
少しではなく、相当に足が、不自由そうだった。
「実は、今月末に、大阪へ引っ越します。
大阪に住んでいる娘が、一人住まいの私を心配して
大阪に来い、と言うもんだから」
「そうですか・・・・・。
大阪ですか・・・・・。
娘さんたちと一緒に住めるなら、まあ、安心ですよね」
そんな、何ともまあ~、一般的な、間の抜けたことしか
言えなかった!!!!
「いやいや、大阪に行っても、部屋を借りて一人で住もうと
思っています。その方が、お互いに気楽でしょうが」
「あっ、そうですか。 そうですよね」
おばあちゃんには、息子と娘がいます。
それぞれが遠くに住んでいます。
おばあちゃんは、60数年前、そう、若いときに韓国から来ました。
日本人の男性と結婚して、一生懸命に生きてきました。
まだ、そのころは、戦時中です。
日本では、韓国人の人たちは、私たちが想像する以上に
侮辱され、軽蔑され、虐げられていました。
そんな時代を一生懸命に生きてきました。
子供を授かり、育て、独り立ちさせた。
そうしたら、ご主人の突然の死!!!!!!
それから、おばあちゃんは一人で生きてきました。
廃品回収や、貴金属の回収で生計を立てました。
車の免許は持ちません。
だから、車はありません。
リヤカー(若い人はわかるかな??)です。
何度かお邪魔した家、ご自宅は
台風がきたらどうなるんだろう、と思えるような家でした。
台所と寝室の二間だけです。
それでも、台所はピカピカに輝き、
綺麗にかたずけられていました。
手作りのキムチを食べました。
そりゃあ~、おいしかったです!!!!
本場ものですから・・・・。
キムチを作るたびに
「ホラ、作ったけん、食べんね!!!」
何度も貰いました。
そうして、20数年が過ぎました。
「そうですか・・・・・。
大阪ですか・・・・・。
手作りキムチが食べられなくなりますね」
「送るよ。送ってやるよ」
「ありがとうございます。楽しみにしときますね・・・・・」
「大阪に来たら、寄らんね!!!」
「ハイ、ありがとうございます」
「それじゃあ、これで、失礼ばするけん。
身体に気をつけて、元気でな」
「おばあちゃんも、元気でいて下さい・・・・・・」
よろよろしながら、タクシーに乗った
おばあちゃんを見送った。
シートに座ったおばあちゃんは
白いハンカチを目に当てていた。
私も泣いた・・・・・・。
一生の間で
一日の間で
仕事で
街角で
沢山の人との出会いがあり
別れがある。
ひょっとしたら、その出会いは
ひょっとしたら、この出会いは
もう二度と出会わない、出会い、
かもしれないのに!!!!!!
何げなく出会って、何げなく話し
何げなく別れている。
その出会いは、この出会いは
もう二度と無いかしれないのに!!!!!
もし、それがわかっているならば
どんな話をするのだろう・・・・。
おばあちゃんは、知っていたんだ。
もう二度と会うことはないだろう、と・・・・・・・。
いや、お互いにわかっていた
最後の出会いだろう・・・と・・!!!!!
「おばあちゃん、最高においしかったよ、キムチ・・・・・・・・」