牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

3月10日(日) 「GMとともに」 アルフレッド・スローン著  ダイヤモンド社

2013-03-10 08:05:23 | 日記

 著者はゼネラル・モーターズを世界最大級の企業に育て上げた人物である。本書は自伝の形をとっているが、スローンのマネジメント哲学が書かれていて、「20世紀最高の経営書」と言われているようだ。ピーター・ドラッカーも「これ以上の経営書を私は知らない」と最大級の賛辞をしている。ドラッカーの言葉。「古くはプラトンやアリストテレスの時代から、統治という問題に関しては似て非なる二つの考え方がある。片や制度的アプローチとでも呼ぶべきもので、「政府・企業を問わず、統治とは明確な枠組みを基礎にすべきで、その枠組みによって何よりもまず秩序立った権力交代を実現し、独裁を防がなくてはならない」とされる。もう一つのアプローチは政治思想史上「君主の教育」と呼ばれ、統治者の人格や徳を重んじている。以前から考えられているとおり、実際には両方のアプローチが必要だろう。私自身の著作活動もこの両方の流れに沿っている。スローンは希に見る読書家で、二つの思潮があることを心得ていた。合衆国憲法を何度となく読み直して、それを参考にしながらGM、いやひいては大企業一般の経営組織や経営がどうあるべきかに思いをめぐらせたのだと、一度ならず語っていたものだ。だが氏にとってこのうえなく重要なのは、統治者すなわちプロフェッショナル・マネジャーである。プロフェッショナル・マネジャーこそが実務家として、リーダーとして、そして従業員の模範として、核となる役割を担っているというのだ。」

 スローンはCEOになる前に「組織についての考察」を書いているので引用する。「この考察は、GMに新しい組織を提案するものだ。その目的は、「従来の効率性をいっさい損なわないようにしながら、幅広い事業全体に権限ラインを確立して、全体の調和を図る」ことにある。基本となるのは以下の二つの原則である。」
 原則1 各事業の最高責任者は、担当分野についてあらゆる権限を持つこととする。各事業部は必要な機能をすべて有し、自主性を十分に発揮しながら筋道に沿って発展を遂げていける。
 原則2 全社を適切にコントールしながら発展させていくためには、本社が一定の役割を果たすことが欠かせない。」

 ここでスローンは、権限の分権化と明確化、全体としての調和について表明している。次に「考察」は原則をどのように応用して、以下の目的を達成していくべきかを論じているので引用する。

 目的1 各事業部の役割を明確にする  その際には他事業部との関係のみならず、本社組織との関係をも定めなければならない。
 目的2 本社組織の位置づけを定め、会社との足並みを揃えながら必要で合理的な役割を果たせるようにする。
 目的3 経営の根幹に関わる権限は、社長すなわちCEOに集中させる。
 目的4 社長直属のエグゼクティブを現実的な人数に絞り込む。他に任せておえばよい事柄から社長を解放して、より大きな全社的な課題に集中させるためである。
 目的5 事業部や部門が互いにアドバイスを与え合う仕組みを設けて、それぞれが会社の発展に寄与できるようにする。 

 
 本からの引用。「このようなコンセプトは、後に「全体の調和が取れた分権制」として発展していく。GMの組織は私の「考察」に示した原則をもとに近代化され、極度の集権化とも分権化とも異なる中庸の道を歩むようになった。それは、かつての脆弱な組織から脱皮し、なおかつ強権的な組織に陥らないように心がけるということを意味した。」


 トップリーダーシップと権限を分与していくリーダーシップのバランスが大切であるということだろう。このバランスはこれからの私の働きにおいても大切な課題になると思う。