牧師の読書日記 

読んだ本の感想を中心に書いています。

3月7日(木) 「完全なる経営②」 アブラハム・マズロー著

2013-03-07 09:15:16 | 日記

 本書を読み終えた。系統だった本でなかったので読みにくかった。

 本からの引用。「進歩的な経営管理方針が目指すものは、いま挙げた高次の欲求の充足にほかならない。進歩的な経営管理方針とは、職場において非金銭的な方法で高次欲求を満たそうとする試み、すなわち、人間が本来備えている高次欲求を満たすよう職場を整える試みと定義することもできる。」

 「現代の平均的セールスパーソンは、自分自身のことを、人を操る人間、心理学者、人の行動をコントールする人間と見ている。つまり、情報や真実を隠すことによって製品を買わせている面がある、と自ら認めているのである。だが、原則として、新しい進歩的なセールスパーソン気質、あるいは新しいマーケティング活動は、他の企業活動と同様、事実の情報開示や公正さ、正直さ、真実さというものを基盤とすべきなのである。」

 企業に絶対に必要なものの一つは、倫理である。そして著者が書いているように事実の情報開示であり、正直さと真実さである。池井戸潤著の『空飛ぶタイヤ』に描かれている大企業の姿が思い出された。この自動車メーカー会社の車のタイヤが飛び(はずれ)、人が死ぬ。この会社は自分たちのミスを隠蔽し、中小企業の運送会社の整備不良のせいにして責任をおしつけていく。しかし、内部告発がなされていく、、、、という内容だ。このような会社ではマズローのいう人間主義経営がなされている良い会社とは言えないだろう。中小企業運送会社の赤松社長の闘いぶりに大いに励まされる。東京電力においても事実の情報開示と内部告発を期待したい。

 また著者は、自分の企業が自分たちだけで完結しているのではなく、地域社会や州、国家、世界とつながりを持っている有機的組織である、ということを全体論的に理解することの大切さを書いている。


 本の最後に書かれている解説者の人の文章を引用したい。「 「いい人間とは何か」「いい社会とは何か」という単純素朴な問いに、要素還元的な分析ツールでなく、自己実現した人の経験からの全体論的理解を目指したのが、マズローの心理学だったと言える。本書を読み終えた皆さんには、いい人とは、自己実現して精神的に健康な人であり、いい社会とは、精神的に健康な人が育ちやすい成長の場だ、ということがもうおわかりだろう。社会だけでなく、会社のような組織が大事なわけは、その具体性だ。、、、、つまり、一人ひとりの個人は社会という「実体」に出会うわけではない。我々は、例えば国会議員の選挙の時に、日本という「市民社会」と瞬間的に出会うが、働いている人の場合なら、通常、会社での仕事を通じて恒常的に社会と接しているのである。その意味で、仕事とは「社会と通じる窓」であり、会社とは、そこで働く人が成長・発達する場でありうる。大半の人が多くの時間を会社という組織で費やしていることを考えれば、「いい会社とは何か」という問いをもう一歩、より具体的なレベルに推し進めるだけで、「いい組織体(会社)の特徴とは何なのか」という経営学の問いにたどりつくであろう。 」 

 続いて解説者の文章の引用。「完全なる人間、完全なる社会を探求してきたマズローは、1962年の夏に会社という世界に触れ、完全なる経営(ユーサイキアン・マネジメント)という考えにたどり着く。本書で詳説されている通り、ユーサイキアンとは、彼の造語で、自己実現人を生み出し、自己実現人が創り出していく文明、あるいは実現しうる理想郷を表す言葉である。精神的・心理的に健全な方向への前進、あるいは健全なマネジメントという意味の言葉でもある。」

 解説者はマズローを通して、1960年代、マネジメントの研究にも深みが生まれ、人の問題を中心に置く経営管理論や組織行動論に、時代が変わっても崩れることのない堅固な基盤ができた、と書いている。私たちは多くの時間を過ごす自分が属する会社(組織)の影響を強く受ける。悪い組織であるなら、次第に悪い人間になっていくだろう。しかし、良い組織であるなら、良い人間となっていくだろう。良い教会(組織)を形成することを通して、全人間的に良い人間を作り出し生み出していきたい。そして良い地域社会作りに貢献していきたいものだ。