
今回も「3パターンで決める日常韓国語会話」作成秘話についてお話ししましょう。
韓国語の本を作るに当たり,一番大切なことは「ネイティブチェック」をきちんとするということです。
いくら,「この韓国語がいいだろう」と思って例文を作っても,どうもネイティブが見たり聞いたりするとどこかがヘンだという例文は少なくありません。
初稿で私が作った例文のどこがおかしいか,少し見てみましょう。
●ふざけないで(장난 치지 마!)
A: 이제 와서 나를 사랑한다고 장난치지 마!
B: 왜? 너 새로운 애인이라도 생겼어?
どこがおかしいかというとBの発話がヘンなんですね。
これはちょっと難しいと思います。
答えを書きませんので,みなさん考えてみてください。
●〜すればよかったのですが(〜(으)ㄹ걸 그랬어요.)
A: 몸은 어떠세요? 독감에 걸린 지 거의 이 주 동안 고생하고 있는 것 같은데요.
B: 예방 주사를 맞을걸 그랬어요.
この例文ではAの発話を変えました。
このままでも意味が通じるのですが(どこがヘンだというわけではないのですが),なにかしっくり来ないんですね。ネイティブの人たちに何度も推敲をしてもらい,最終稿では結局次のようになりました。
A: 독감에 걸려서 너무 고생하고 계시다고 들었는데, 괜찮으세요?
B: 예방 주사를 맞을걸 그랬어요.
どうですか。下の方がすっきりとして韓国語らしくなったと思いませんか。
‘〜을걸 그랬어요’という表現は,自分自身に対して後悔するときの言い方です。
‘그랬어요’は省略できますので“예방 주사를 맞을걸.”といえます。
この場合は独り言の意味合いが強いですね。
相手に対していうときには‘〜지 그랬어요’という表現をします。
予防注射を受けておけばよかったですね:예방 주사를 맞지 그랬어요.
과식하지 말걸(그랬어요).:食べ過ぎなければよかったんですが
과식하지 말지 그랬어요.:食べ過ぎなければよかったですね
미리 말할걸(그랬어요).:前もっていっておけばよかったんですが
미리 말씀하시지 그랬어요.:前もっておっしゃってくださればよかったんですが
더 일찍 올걸.:もっと早く来ればよかったんだけど
더 일찍 오지 그랬어.:もっと早く来ればよかったのに
上に挙げた例文や解説も,紙面に余裕があれば書きたかったことなのですが,実際にはスペースの関係で割愛されてしまいました。残念です。
もう一つ見てみましょうか。これも日本語につられて例文を作ったのですがNGでした。
●どうやって焼いたの?(어떻게 구웠니?)
A: 이 피자, 어떻게 구웠니? (このピザ,どうやって焼いたの?)
B: 택배 피자를 레인지로 데웠을 뿐이야.(宅配ピザをチンしただけだよ)
正解をご覧になりたい方は本書の99ページをみてください。
なるほど,こう言うのかという「生きた韓国語」が載っています。
結論ですが,いくらこれでいいと思っても,ネイティブが聞くと「どこかヘンだな」と思う部分があるものです。また,同じネイティブでも,ヘンに思わない人と,いやおかしいと思う人がいますから,1,2人のチェックでは足りないと言うことです。
もっともあまりチェックする人が多くても‘사공이 많으면 배가 산에...’ということになりかねません。
そしてネイティブの中でも「韓国語」「日本語」の両方に関心を持ち,ある程度語学に関する教育を受けている人でなければチェックは無理です。
とくに最近の韓国の若者は,インターネットの影響で「分かち書き」が乱れていますので,留学生に安易にチェックを頼むのは考え物です。
読者のみなさんは,韓国語の教材を出す出版社には,優秀な韓国語の校正者がいると思っている人が多いと思いますが,とんでもないことです。
ほとんどの出版社には専属の韓国人の語学担当のスタッフはいません。
日本人でちょっと韓国の「語学堂」などで韓国語を勉強して帰国したというような,適当に韓国語をかじった連中や留学生のアルバイトが,校正業務をしているというのが,現状なのです。
出版社へのお願いは,韓国語の教材の質を高めるために努力をしてほしいということです。読者は出版社の裏事情を知らずに教材を購入するのですから。
タイトルだけ「初めての…」「たったこれだけでマスターできる…」「とびっきりかんたんな…」「ゼロから始める…」とつけた本が氾濫していて,読者はどれを選んだらいいかわからないと思います。
そういうことを考えると,選択肢がまったくなかった昔は「古きよき時代」とでもいうのでしょうか。私は先生の手作りの教材がぼろぼろになるまで,それだけを信じて使いこなしました。
次に韓国語の先生について一言言いたいことがあります。
在日の韓国人先生がたは「浦島太郎」的な生活を送っていますから,今の躍動的な「生きた韓国語」に鈍感です。
発音も時代の速度とともに変化します。
いま日本人で,鼻濁音の「うぐいす」や「がっこう」という発音をする若者はいないといっても過言ではありません。
十本,十分を「じっぽん」「じっぷん」とNHK的に発音する人も少ないと思います。
電話を‘전~화’と伸ばすような発音をする若者はほとんどいないでしょう。
韓国語の先生の中には,ネイティブであることのみで韓国語を教えているような方が少なくありませんが,これからの時代,頻繁に日韓を行き来しながら,またインターネットを通じででもいいですからもっともっと「生きた韓国語」の勉強をしていってほしいと思っています。
そして最後に一言です。
わたし的には,もっと男性の語学教師が増えてほしいと思っています。
日本人男性の韓国語が「女性的」になる原因のひとつが,女性の先生の影響です。
CDの録音も,女性の声で録音したほうが売れるからなのかもしれませんが,男性の声を聞いてまねをするということも必要です。
今度の拙書にしても,前回の単語帳にしても,出版社の「語研」では最大限の努力をしてくれましたので,私なりにいい本が出来たと思っています。
CD会話にはなんと男女あわせて6名も登場します。
100%いい本だとはいえませんが,これを土台に,さらにいい本を作りように努力をしたいと思っています。


사공이 많으년-사공이 많으면
今回の会話集も目を皿のようにして6回も校正したのですが,たぶんまだどこかに「誤植」の虫がかくれていると思います。みなさんのチェックを楽しみにしています。
「このピザ…」のところでしたね!
> 女性の声で録音したほうが
> 売れるからなのかもしれませんが
売れる理由は、「学習者としての聞き取りやすさ」もあるのかなあ、と感じている次第です。私だけの感想かもしれませんが。
一箇所誤植かなと思った点があり、コメントさせてもらいます。
P.104の297の벼락치기<-工夫>:一夜漬け
の<-工夫>です。
正しかったらすみません。
先生の本をすべて持ってます。これからも素晴らしい本を出版してください。
P.104の297の벼락치기[-工夫]:一夜漬け
の[-工夫]です。