時計Aと時計Bが原点ですれ違いざまに時刻合わせをした。
その2つの時計がお互いに「相手の時計が遅れている」と主張している状態はパラレルです。
そうであればこの時には時計Aと時計Bの主張の間にはコミュニケーション=通信は成立していないのです。
つまり「その2つの主張はお互いに独立に勝手な事を言っているにすぎない」のです。(注1)
ところが時計Aが「こちらが5時間経過した時、君の時間は3時間しか経過していない」と時計Bに言った、とします。
その時 時計Bが「こちらの時計が3時間経過した時に君の時計は1.8時間しか経過していなかった」と反論した、とします。
この場合は時計Aと時計Bの間にはコミュニケーション=通信が成立しています。
そうしてこの状態を指して「時間の遅れはお互い様」と説明する立場があります。
加えて「そこには何の矛盾も無い」と説明するのです。
たとえばJシンプリシティー氏の説明がそうなっています。(注2)
時計Aが5時間経過の時に時計Bは3時間経過 で 時計Bが3時間経過の時に時計Aは1.8時間経過 と計算できる。
そうであればそこには矛盾はなく問題はない、というのです。
しかしながら実はこれは「時間の遅れのシリーズ接続」になっており、見て分かる様に時計Aの時刻は5時間経過から1.8時間経過になっています。
つまりは「時計Aの時間が巻き戻っている」のです。
そうであれば「そのようであってもそこには何の問題もない」と言う立場そのものが「タキオン通信があると過去に情報を送れる」という立場と全く同じことを主張している事になります。
つまりは上記の様な「時間のおくれはお互い様」という説明の中には「タキオン通信があると過去に情報を送れる」という主張がすでに入っていた、という事になるのです。
そういう意味では「時間のおくれはお互い様」を最初に言い出したミンコフスキーの第37図がすでに「タキオンを使えば過去に情報を送れる」という事を示していたのも偶然ではない、という事になります。(注3)
さて歴史的にはアインシュタイン曰く「静止系は観測者が主観的に決めてよい」とし、従ってミンコフスキー曰く「時間の遅れはお互い様」としました。
そうして「時間の遅れはお互い様」ならば「タキオン通信があると過去に情報を送れる」となり
そうして
「タキオン通信があると過去に情報を送れる」=「過去改変が起きる」
「過去改変が起きる」=「因果律の崩壊」
「因果律の崩壊はありえない」のでアインシュタイン曰く「この宇宙の通信速度は光速Cが限界である」と
そういう話になっていたのです。
しかしながら今や
「客観的な静止系は存在する」ので「時間の遅れはお互い様ではない」
「時間の遅れはお互い様ではない」ので「タキオン通信があっても過去に情報を送れない」
「タキオン通信があっても過去に情報を送れない」ならば「過去改変は起きない」
「過去改変は起きない」ので「因果律は崩壊しない」
「因果律は崩壊しない」ので「この宇宙の通信速度は光速Cを超えてもよい」となりました。
こうして「『宇宙の制限速度は光速Cである』というアインシュタインの主張は取り下げられる事になった」のであります。
注1:この立場での「時間のおくれはお互い様」の説明の仕方はランダウ・リフシッツに見る事が出来ます。
この件、内容詳細につきましては: https://archive.md/VQKl3 :を参照願います。
注2:「Chapter3 特殊相対性理論の世界」: https://archive.md/lEJJC :の「3.2 時間の遅れ」の最後の結論がそうなっています。
『このとき,Δ T<Δ T'=Δ t'<Δ t が成立し,矛盾していません.』
これは上記本文の数値例でいいますと
『このとき,1.8<3=3<5 が成立し,矛盾していません.』
と主張している事になります。
そうして確かにこの状態を指して「これが時間の遅れはお互い様の説明」であって「そこには矛盾はない」と主張する立場が通説に於いては存在する模様です。
注3:「ミンコフスキーの4次元世界」: https://archive.md/ccEpc :の「2.二次元時空」:(7)時計の遅れ: https://archive.md/ccEpc#selection-2011.3-2011.8 : の説明と第37図を参照願います。
その第37図で示されている点Dを点B’の位置まで下げますとまさに「タキオン通信があれば情報を過去に送れる」というMN図そのものになっていた事に気が付くのです。
つまりD’からB’にタキオンで情報を送り、いまやB’の位置になったDからタキオンでBに情報を送れる、とそういう事を示しているのです。
そうしてもちろん情報を送りだしたD’よりBは過去にあり、従ってD’は自分の過去であるBに情報を送れる事になっているのです。
こうして「時間の遅れはお互い様」を言い出したミンコフスキーの説明の延長線上に「タキオンがあれば情報を過去に送れる」=「過去改変がおきて因果律が崩壊する」という主張が出現したことは歴史の必然の様に見えます。
ちなみに上記のJシンプリシティー氏の「時間の遅れはお互い様」の説明の仕方はまさに第37図で示されている点Dを点B’の位置まで下げた時の状況を示しており、そうであれば「Jシンプリシティー氏の説明方法はミンコフスキーの説明方法を踏襲したものである」と言えます。
注4:「因果律違反を理由とした超光速通信の否定」というのは「静止系が客観的な存在であった場合はその否定するロジックが成立しなくなる」という事はここまでで指摘してきた通りです。
従って現時点ではいまだ決着がついていない事象(=時間の遅れはお互い様)を根拠としたものである為に「『因果律違反を理由とした超光速通信の否定』という主張の妥当性はまだ確認できていない」という事になります。
ちなみに速度の合成則によれば「光速以下の速度をいくら足しこんでも光速に到達しない」となっています。
したがって存在が確認されている素粒子を使った通信では超光速通信は不可能という事になります。
さらに光は何時も光速Cで走るため、これも超光速通信に使う事はできません。
そうであれば「最初から光速をこえて走っている粒子を使う」かあるいはそれ以外の手段を使わない限り超光速通信は不可能という事になります。
しかしながら以上の事実だけでは「未来永劫、超光速通信は不可能である」という事にはならないのです。
そうであればこそ「因果律違反が起きる」という「原理的な問題点の指摘」が「超光速通信の否定には必要だった」という事になります。