特殊相対論、ホーキング放射、ダークマター、ブラックホールなど

・時間について特殊相対論からの考察
・プランクスケールの原始ブラックホールがダークマターの正体であるという主張
 

その2-4・誤解されている「Ives と Stilwellの実験内容」の1

2023-08-25 04:59:15 | 日記

「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :

fnorio氏のまとめによれば「2.ドップラー効果」の章にてアインシュタインのドップラー効果についての論文の説明をされています。

そうしてその本文に続く[補足説明2]に「Ives と  Stilwellの実験内容詳細」が載っています。

それでそこで提示されている(11.21)式はアインシュタインが最後に提示した式と同じ、つまり「光源と観測者が速度Vで離れていく時のドップラーシフトを表すもの」になっています。

そうであれば「 Ives と Stilwellは赤方偏移を観測した」と通説では認識されています。

ちなみにこの実験内容と結果の具体的な詳細については:https://en.wikipedia.org/wiki/Ives%E2%80%93Stilwell_experiment :にあります。

さてそうであればここではこの2つの資料に基づいて話を進める事になります。

そうして以下は前のページからの引用です。

『まずは「 Ives と Stilwellの実験では横ドップラー効果を測定していない」という事から始めましょう。

この実験では縦ドップラー効果で生じるプラス方向(=周波数が上がる方向)とマイナス方向(=周波数が下がる方向)を同時に測定し、その和をとって「特殊相対論が予測した時間の遅れを検出した」と言うものです。(注1)

そうであればアインシュタインが希望した「特殊相対論の予測=運動するものは時間が遅れる」はこの実験で確認できたのですが、横ドップラーシフトそのものの確認はこのタイプの実験では確認はできてはいないのです。

さてそうであれば「 Ives と  Stilwellの実験では横ドップラー効果を測定しその結果は赤方偏移を示した」と言う認識は誤りなのです。』

 

前のページでは「 Ives と  Stilwellの実験では横ドップラー効果を直接、測定したのではない」という事を指摘しました。

そうしてこのページでは「その実験結果の解釈=赤方偏移を示した」というのは「実験結果について2つある見方の一つの解釈でしかない」という事を示します。

はい、それはつまり「もう一つの解釈方法(=青方偏移を示した)がある」という事です。

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さてそれでまずは今まで行われてきた解釈方法を以下に示します。

英文のういきから1938年の実験結果を引用します。

測定水素ガスの速度 0.005C

基本輝線波長 4861Å(オングストローム)

赤方偏移波長 4885.18Å ・・・観測データ①

青方偏移波長 4836.94Å ・・・観測データ②

(①+②)/2 の波長 4861.06Å

2方向の真逆の縦方向ドップラーシフトを同時観測しています。

赤方偏移は観測者から遠ざかる方向、青方偏移は観測者に近づく方向に電離水素原子が動いた時に発する光を見ています。

そうして基本輝線波長は動いていない水素原子が発する光の波長です。

さてそうであればデータ①と②の平均をとると確かに基本波長より伸びている様に見えます。(=赤方偏移している

基本輝線波長 4861Å<(①+②)/2 の波長 4861.06Å

そうしてまたその波長伸び分は横ドップラーシフトで光源が動いている場合の計算式に測定対象のガスの速度0.005Cをいれて計算した値になっている、と「Ives と Stilwellは結論を出している」のです。

その場合の横ドップラーシフトの計算式は元の波長をλ0とし、観測される波長をλ1とするならば

λ1=λ0/sqrt(1-V^2)

=4861/sqrt(1-0.005^2)

=4861.06076・・・≒4861.06

と計算できます。

こうして「Ives と Stilwellは横ドップラーシフトを観測し、その結果は赤方偏移であり、特殊相対論からの予測値になっていた」とされてきました。

 

さて、以上の実験結果と計算のストーリーだてでいきますと、「Ives と Stilwellの出した結論は妥当なものである」と言えそうですし、事実、いままでそうみなされてきました。(注1)

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さてそれで次は上記で得られたデータを周波数換算します。

この実験の測定は光の分光測定ですから、得られたデータは波長です。

しかしながら当然 光速C=波長*周波数 が成立しています。

そうであれば下記の様に周波数換算が可能となります。

ここで光速は30万キロ/毎秒とします。

そうして換算しますと次の様になります。

基本輝線周波数 6.1715696*10^14Hz

赤方偏移周波数 6.1410224*10^14Hz ・・・観測データ③

青方偏移周波数 6.2022683*10^14Hz ・・・観測データ④

(③+④)/2 の周波数 6.17164535*10^14Hz

 

そうしてその様に周波数換算して見ますと驚くべきことに今度は平均周波数が青方偏移している事が確認できます。

基本輝線周波数 6.17157<(③+④)/2 の周波数 6.17165

さて元の周波数をf0,観測された周波数をf1とするならば

f1=fo/sqrt(1-V^2)

=6.1715696/sqrt(1-0.005^2)

=6.171646746・・・≒6.17165

と今度は青方偏移をしめす横ドップラーの計算式からの計算結果に観測されたデータは一致するのです。

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さて以上、見てきましたように「Ives と Stilwellが行った実験結果」は特殊相対論が予想する時間の遅れ(=赤方偏移)、あるいは進み(=青方偏移)を検出している事には間違いなさそうです。

しかしながら得られたデータについての解釈方法は2通りあり、どちらも数式の計算上には間違いがありません。

しかしながら「赤方偏移している」と「青方偏移している」では結論が真逆であり、これでは一見パラドックスが発生している様に見えます。(注2)

 

さてそれで、ここまでの「Ives と Stilwellが行った実験」についての結論です。

1、それは横ドップラーシフトの直接観測にはなっていない。

2、縦ドップラーシフトの2つの方向の同時測定で得られたデータの平均については「赤方偏移している」という見方が可能であるのと同時に「青方偏移している」という見方も出来る。

そうであればその「観測データの平均値が何を意味しているのか」は今の所はよく分からない。

しかしながら特殊相対論が予想する「運動するものは時間が遅れる」という事に関連している値である事は間違いなさそうである。

3、以上より「Ives と Stilwellが行った実験によって横ドップラー効果が測定され、それは赤方偏移を示していた」という通説の認識は「2重の意味で間違っている」という事がわかるのです。(注3)

 

さてでは一体何がこの実験で起こっていたのか、それについての検討はページを改めて行う事と致しましょう。

 

注1:上記であげた「アインシュタインの特殊相対性理論(1905年):http://fnorio.com/: https://archive.md/Gl1Hd#3-2-2 :の[補足説明2]もおおむね、そのストーリーになっています。

そうしてこのストーリーが載っているのは「バークレイ 物理学コース1(下巻)」であるとなっています。(日本語版:丸善1975年 P417)

注2:計算上のミスはありませんので、「真逆方向の2つの縦ドップラーの測定値については波長平均と周波数平均での検討結果では見方が逆転する」という事になります。

そうであれば「波長平均のみの結果をもって測定データは赤方偏移していた」とするのは「判断ミス」という事になります。

ちなみにこの話のポイントは「波長平均したものを周波数変換して周波数平均とする」のではなく「測定された2つの波長データを周波数変換してからその平均を取る」という所にあります。

注3:まずは「Ives と Stilwellが行った実験は横ドップラーシフトを測定していない」、にもかかわらず「横ドップラーシフトを測定した」と主張する事が一つ目の間違い。

そうしてもう一つは「測定結果が赤方偏移を示していた」と結論を出している事が二つ目の間違いとなります。

 

追記:まあこんな風に「Ives と Stilwellが行った実験結果を周波数換算して確認してみる」などという事はたぶん「どなたもしていない事」なのでありましょう。

「そんな事をしても何も変わらない」とは普通、考えることでありますから。

そうであればこれは「コロンブスのたまご」であって「史上初の計算結果の公表」となります。

 

PS:相対論・ダークマターの事など 記事一覧

https://archive.md/kxUew