1、光速不変との関係は大丈夫なのか?
はい、「客観的な静止系が存在していたら光速は不変ではなくなるのでは?」という声が聞こえます。
それは「光を伝える媒体としてのエーテルの存在についての話」ですね。
「エーテルの様な存在が宇宙に充満していたら、それを検出できるのでは?」という問いかけから「MMの干渉実験がスタート」したのでした。
その結果は「光速が不変である」という結論になりました。
エーテルに対する地球の運動は検出できなかったのです。
そこでローレンツは「エーテルは存在しているが、同時にまたローレンツ変換も存在している」としたのでした。
そうなりますと「MMの干渉計では光速の変化を検出できない」という事になります。
それに対してアインシュタインはエーテル存在の有無にはかかわりませんでした。
そうではなくて2つの前提、「光速不変」と「全ての慣性系は同等である」を前提として特殊相対論を作りました。
それでローレンツ変換そのものは2つの前提から導き出す事ができました。
そうしてローレンツ変換に従う測定結果が確認されて特殊相対論はその地位を確立できました。
さてそれでアインシュタイン流の特殊相対論の認識からは「時間の遅れはお互い様」という結論が出てきます。
そうして今ではその話が通説として広く認められています。
しかしながらここにきて「LLの一般解」が導出され、「時間の遅れはお互い様」という認識が間違っているとなりました。
その間違いの元をたどっていきますと「全ての慣性系は同等である」という前提にたどり着きます。
それでその解決策として「客観的な静止系=基準慣性系の存在を認める」という事になりました。
しかしそうなりますと「それはエーテルの存在を認める」という事と同じであり「光速不変が成立しなくなるのでは?」という疑問が湧いてきます。
その疑問についての回答はここまでの話の中ですでに述べられています。
『光はいつも基準慣性系の中を光速Cで伝わっているだけなのです。
それを基準慣性系に対して相対速度を持つ観測者がローレンツ変換で示される切断面で光が作っているライトコーンを切断し、観測者はその切断面に現れた光のみが観測可能であり、その結果は「光は観測者を中心として同心円状に広がっている」と認識する事になるのです。』
それが「光速不変を成立させているメカニズム」であります。(注1)
従って「基準慣性系が存在する」+「ローレンツ変換が存在する」という世界では「光は常に光速Cで伝わると観測される」が結論となります。
さてここまでの説明でお分かりの様に「基準慣性系は光を伝える媒体の話ではない」のです。
そうではなくて「特殊相対論に必要となる静止系の話」なのであります。(注2)
注1:まずは一連の「光速がいつもCとして観測されるカラクリ」シリーズがあります。
そうしてその結論は: その5・ 光速がいつもCとして観測されるカラクリ :によれば
『以上の事より「地球上でいくら光速の測定をしても地球が基準慣性系であるのかどうか、光速の測定結果だけでは判断できない」という事が分かります。
何となれば「地球が基準慣性系であってもなくても、光速の測定結果は常にCとなるから」であります。
そうしてこの事はまた
地球上で言う「光速度一定の原理」というのは
「光は基準慣性系を光速Cで伝わる+ローレンツ変換が成立する」
という事と同等である事を示しています。
ちなみにこの主張が特殊相対論の主張とどこが違うのか、といいますと、特殊相対論は
「すべての慣性系は平等である」とするのですが、それに対して上記の主張は
「すべての慣性系に優先する基準慣性系が存在する」と表明しているのです。』
となっております。
あるいは一連の「MMの楕円の3Dプロット」シリーズもありました。
たとえば: ・MMの楕円の3Dプロット :では
『以上の結果をまとめてみますと
・K'系の原点は速度Vで左から右にうごきながらK系の原点位置に到達した所で光をだした。
・その光はK'系がどのような速度で動いていてもK系の原点を中心として同心円状に速度がCで広がっていった。
・これをK系の時空図上でみるならば、それは未来方向にのびるライトコーンを作っていた。
・さてそのライトコーンをK'系の時間で1秒後に観察したK'系の原点に立つ観測者は「自分を中心として自分のまわりに広がる半径が1Cの円を観測した」
と言う状況を表している事になります。
つまりこれが「光速度がいつもCとして観測されるカラクリ=光速一定の原理の舞台裏」であります。
そうしてこの時にK系とは「基準慣性系の別名」であり、全ての慣性系(=K'系)はこの基準慣性系の中で慣性運動をしているのです。
そうであれば当然「全てのK系に対して慣性運動している慣性系(=K'系)は光速をCとして観測する事になる」のでありました。
ちなみに「もちろんK系の原点に立つ観測者も光速はCとして観測します。」』となっています。
注2:特殊相対論を使って慣性系の時間の遅れを計算する為には、慣性系の静止系に対する相対速度Vが必要になります。
その相対速度Vがあればあとはsqrt(1-V^2)で慣性系の時間の遅れが計算できます。
そうであれば「特殊相対論には静止系が必要」なのであります。