・「時間の遅れ」合成則:では基準慣性系に対して速度V1で移動している慣性系①に対して速度V2で移動している慣性系②を考えました。
その慣性系②は基準慣性系から見ると速度Vで移動している事になるのですが、
V=V1+V2 は成立せず
V=(V1+V2)/(1+V1*V2) ・・・③式 となる、速度の合成則が成立するのでした。
この時に慣性系②の時間の遅れは基準慣性系に対して
T(遅れ②)=sqrt(1-V^2) ・・・④式 となります。
それでこの式に③式を代入すると
T(遅れ②)=sqrt(1-V^2)
=sqrt(1-( (V1+V2)/(1+V1*V2) )^2) となり、それを整理すると最終的に
=sqrt(1-V1^2)*sqrt(1-V2^2)/(1+V1*V2)
となるのでした。
それでこの式の意味する所は
「基準慣性系から慣性系②をみた時の慣性系②の時計の遅れ」
=「基準慣性系から慣性系①をみた時の慣性系①の時計の遅れ」*「慣性系①から慣性系②をみた時の慣性系②の時計の遅れ」/(1+V1*V2)
という事になります。
それで今回、上記と同じように考えて 円運動に対する「時間の遅れ」合成則 を見てみるのですが、慣性系①は地球であり、地球は基準慣性系に対してドリフトしていると考えます。
そうしてその地球のうえで円運動しているのが慣性系②、具体的にはμ粒子(ミューオン)となります。
それで基準慣性系に対して地球上で円運動しているミューオンの時間の遅れを計算したのが
その2・ドリフトしながら円運動する場合の時間の遅れ :でした。
円運動をX軸方向成分とY軸方向成分に分解し、地球が基準慣性系に対してドリフトしている方向をX軸方向として、円運動の各軸速度成分にドリフト速度を相対論的な加算則に従って足し合わせました。
そうやってドリフト速度を加算された円運動の速度をV(円運動)としますと、円運動の時間の遅れは
T(円運動)=sqrt(1-(V(円運動))^2)・・・⑤式 と書く事ができます。
そうやってミューオンが加速器の中を一周する間にどれだけ時間の遅れが発生したのかをパラメータXが0から2π(パイ)の間を⑤式を積分する事で求めました。
さてそれで、ここまでの話の中では 円運動に対する「時間の遅れ」合成則 が出てきません。
しかしながら合成則が出てくる、とするならばそれは⑤式の中に現れている事になります。
その事は④式に③式(相対論的な速度の加算式)を代入することでその場合の「時間の遅れ」合成則 が出てきた事と相似的であります。
さてそれで⑤式の具体的な形はこうなります。
sqrt(1- (((0.9994*cos x+0.001)/((1+0.9994*(cos x)*0.001)))^2+(sqrt(1-0.001^2)*((0.9994*sin x)/((1+0.9994*(cos x)*0.001))))^2)) ・・・⑥式
https://ja.wolframalpha.com/input/?i=sqrt%281-+%28%28%280.9994*cos+x%2B0.001%29%2F%28%281%2B0.9994*%28cos+x%29*0.001%29%29%29%5E2%EF%BC%8B%28sqrt%281-0.001%5E2%29*%28%280.9994*sin+x%29%2F%28%281%2B0.9994*%28cos+x%29*0.001%29%29%29%29%5E2%29%29
上記の様に⑥式をウルフラムに代入してウルフラムが解釈したものを見た方が分かりやすいですね。
それでウルフラムが⑥式を整理した、最終的な形が「別の形」の一番目にあります。
⑥式は相当に複雑な形をしているのですが、真面目に一つづつ展開して計算すると最後にはそうなる、というものです。
しかしそれは魔法が働いたかの様に「信じられない程に簡単な形」になります。
さてそれで、「別の形」の一番目に出てきている式からルートを取り払いますと
34.6566/(cos(x)+1000.6) ・・・⑦式 となります。この式の分子、分母を1000.6で割りますと
=0.0346358/(0.0009994*cos(x)+1) ・・・⑧式 が出てきます。
それで
0.00346358=sqrt(0.0011996388) であり
=sqrt(1-0.9994^2)*sqrt(1-0.001^2) と分解する事が出来ます。
そうなりますと
⑥式=sqrt(1-0.9994^2)*sqrt(1-0.001^2)/(1+0.001*0.9994cos(x)) ・・・⑨式
と書きなおすことが出来ます。(注1)
これを一般化しますと
「ドリフトがある場合の円運動の時間遅れ」
=「円の周回速度による時間遅れ」*「ドリフト速度による時間おくれ」/(1+ドリフト速度*円の周回速度*cos(x) )
という事になり、これが「円運動の時間遅れの合成則」となります。(注2)
こうして最終的に出てきた形は:「時間の遅れ」合成則:で導出した形
T(遅れ②)
=sqrt(1-V1^2)*sqrt(1-V2^2)/(1+V1*V2)
と同じものになっている事が分かります。
またその様な「時間の遅れ」合成則が成立しているゆえに複雑な形をした⑥式が非常に簡単な形、⑦式に簡約できたのだ、とも言えます。
同時にまた⑥式の導出が相対論的に妥当なものであった、という傍証にもなっていると思われます。
注1:最終的に到達する⑥式の形が分かっていますと、複雑な形の⑥式を注意深く手計算で展開して整理してゆく事が可能になります。
そうして、そうやって手計算でトレースしていきますと、確かに最後は⑨式に到達するのでした。
注2:ここで
・「ドリフトがある場合の円運動の時間遅れ」はもちろん「基準慣性系から見た時のドリフトしながら円運動している場合」=「基準慣性系に立っている観測者が地球上の加速器の中で円運動しているミューオンを観測した場合」です。
・「円の周回速度による時間遅れ」は「地球が基準慣性系にたいしてドリフトしている」のではあるが、地上に立つ我々からはそのドリフト状態を知る事はなく、従って目の前の加速器の中で周回運動しているミューオンは「単に円運動している」と我々の目には映るのです。
したがってこの場合、地上に立つ測定者たちは「ミューオンは円の周回速度で寿命が延びている」と判断しその様に計算する事になります。
・「ドリフト速度による時間おくれ」は基準慣性系に立つ観測者からは地球そのものが基準慣性系に対して運動している、ドリフトしている為に地球上のすべての時計が遅れているのが観測される、という事です。
ちなみにこの「時間遅れの合成則」は「運動すると時間が遅れる」+「相対論的速度の加算則」から出てきたものです。
つまり「時間遅れの合成則」は「特殊相対論のロジックの中に含まれている法則である」という事になります。
PS:相対論の事など 記事一覧
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