今日の秋櫻写

こちら新宿都庁前 秋櫻舎

ほたる、ほおづき、高橋さん

2012年07月10日 22時03分26秒 | きもの

阿波徳島に行ってきたー!
帰ってきたー!

今日はその旅で撮った写真をようやくパソコンに落とし、
「第二カメラマン」としてやはりたくさんの写真を
撮ってくだった山岸さんも、その写真の数々を
CDに焼いてもってきてくださった。
夜、姐さんとそれらを見ながらきゃあきゃあ。
抱腹絶倒ものあり、ナイスショットあり、再感動あり。

ああ、たのしかったー!
みなさん、この上もなくいい顔。
おまけに不思議写真もいっぱい(笑)
どこまで写ってるんだ。
まあ、かなり気のいい場所に行きまくったからなあ。

阿波写真のアップはもうしばしお待ちください。


さて本日はこちら。



じゃん。
2ショット。

ヒサコさんはあの塩漬け繭の糸で織った絽の訪問着。
柄はメジャーなほうの源氏蛍ではなく、平家蛍の乱舞。
ある夜、闇の中をぶわあっとのぼっていく平家蛍のシーンに
遭遇し、その鮮烈なイメージを描いてもらったのだという。
帯は流水の紗袋。
蛍といえば清らかな水だ。

ワタシは大小あられの絽の江戸小紋に
ほおづきを刺繍した帯。
この時期のヘビーローテーション。
思い入れはもちろん落語の「船徳」。
「四万六千日、お暑いさかりでございます」でございますよ。
ああ、ほおづき市、終わっちゃった。
でもまだ締められるけどね。




平家蛍のこのきものは
後ろ姿のほうがインパクトがあるのだ。
ちなみにこれ、夜に着ているのを見ると、
蛍がふわーっと浮かび上がってくるの。





イベントの打ち合わせ仕事をひとつした後、
僭越ながら・・・誕生日を祝っていただいた。
下落合の昔懐かしの喫茶店にて。
わざわざ電車を乗り継いで。

この夜、ワタシにはちょっと生意気かな?
と思ってぐずぐずと購入を迷っていた帯揚げを
プレゼントしてもらった・・・!
うれしい。
生意気でもいいよ。してみよう。
何事も挑戦だもの。
濃い紫に白飛びシボの、紗の帯あげ。


帰りは近くのスーパー悉皆やの高橋さんの工房へ。
この喫茶店、工房のすぐ近くなので。

アポなしで行くには十分すぎるほど迷惑な時間なのに、
2階の窓の隙間にその姿をみつけ

「高橋さーん!」

と呼ぶと

「なに、どーしたの、あがっといで、茶飲んできなよ」

江戸前の単発的受け答え。
いいなあ。軽いなあ!

奥さまにお茶を出していただき、しばし歓談。

高橋さんがいなくなったら本当に困る。
高橋さんはそれくらい生地と洗いに精通して
技と知識をもってる本格職人なのだ。

高橋さんが云うにはちゃんとした洗い職人とは

「(きものを)水に入れる度胸のあるヤツ」

いうなれば、生地やシミの種類を知りつくしていないと、
水になんか入れられないわけ。
高価なものだったらなおさら。
ましてや人さまのものなのだ。
実際、今のきもの洗いは専門店と冠していても
ドライクリーニングオンリーで、
水洗いをする職人がほとんどいないというのが現状。

つまり、主流は化学薬品をたっぷり使っての処方。

でもそれだと生地は傷むし、
シミなどの汚れは数年後に浮かび上がってくるという。
あと

「ドライでさ、仕上げに衿なんかびしーっと
 プレスされちゃうと、ダメんなるよ」

ワタシなんかこれまで数々のシミやダメージを
見事に復活させてきてもらったので、
その実力は十分承知。

焼き肉のたれ(きものを着て焼肉屋に行くなという
話ではあるが、どーなるのか試してみたかったのだ)、
パスタソース、厚切りトーストにのっかったバターの塊、
大雨に降られて固絞りの雑巾みたいになったお召、
それから女性には少なくない生理関係の失敗だってへっちゃら。

「せーりね、(シミを)とっとくよ」

このフラットさ。プロだと思う。

でも高橋さんに、後継者は、いない。

「(仕事量と報酬が)割にあわないからね」

「オイラが仕事できなくなったらと思ってさ、
 (秋櫻舎に)紹介できる奴を探してるんだけど、
 先輩くらいしかいないんだよ」

高橋さんより先輩だったらダメじゃないか。

みんなでわいわいやっていたけど、
きもの業界のこういういわば影の領域の
後継者問題はひきもきらずである。
ほんとうだ。

そして思う。
今は高橋さんを困らせるくらい着よう。

失敗したきものや帯を出すと

「今度はなに!」

いつも云われるけど。


ザ・職人の高橋さんにお手入れを頼みたい方はこちら。

http://www.kos-mos.com/oteire/index.html

生き洗い(そのまま洗う)、解き洗い(きものを解いてから洗う)、
シミ抜き、カビ取りなどなど。
そのほか、色んな相談に乗ってくれます。

高橋さんには信頼する仲間がいて、そこでほどけた刺繍の修理や
昔のきものの染め直しなどは、それぞれ専門の職人たちに渡して
ありとあらゆることに対応してくれます。

大事なきものは特におすすめです。




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