今日の秋櫻写

こちら新宿都庁前 秋櫻舎

糞までも神秘

2012年07月04日 22時04分54秒 | きもの

今日はいい風の日だった。

お昼に大根をおろして、そこにちりめん山椒を和えたものを
作ったのだけど、すごくおいしかった。
まずこの大根がすばらしくおいしかったのだ。
ちりめん山椒の代わりに、辛し明太子を和えるのもすき。

他にはブロッコリーの大麻マヨネーズ&大麻フレークのサラダ、
かぼちゃの煮つけ、なめろう、そして味噌汁は
秋櫻庭園で採れたフレッシュなししとう。
ししとうのお味噌汁って夏にぴったり!
少し辛くて、少しにがくて、大好物。


さて今日は蚕がメイン。

助成金でスタートした研究のため、
長野は飯島にある志村さんの工房へ。
早朝の高速バスに乗って比佐子さんと。

途中のサービスエリアでカフェオレと
甘いパンを一個買うのが常。
それをバスの中で半分こしてたべる。
今回はあんぱんを購入。

ひと寝入りした後に、血糖値をあげる、
超低血圧のワタシにはうってつけである。





この日の比佐子さん。
南アルプスを背景に1枚。
絽ちりめんの海の染め帯は熊崎センセの作。

きれいなブルー。


志村さんのところでは「玉小石」という品種の蚕を
飼っており、今回の訪問は蚕を簇(まぶし)に上げる
上簇(じょうぞく)という作業が済んで、
ちょうど蚕たちが繭を作りはじめる頃。






神秘。

もう作りはじめている子、
まだ部屋をきめあぐねている子、
もう繭になっちゃった子、
いろいろである。

見ていてほんとーに飽きなくて困ったよ、ワタシは!

体はどの蚕もぷっくぷくで、表面はシルキータッチで、
半透明になって中の体液の流動がみえて。

近くに小川が流れているので、せせらぎの水音が
ずっーっとしているのもここの養蚕場のすきなところ。
蚕だって気もちいいはずだ。

この四角い間仕切りをした枠は「回転簇(まぶし)」というのだけど、
蚕のアパートメントみたいで面白いなといつも思う。



そして仕組みがよくできている。
極めて簡素に。

上のほうにばかり蚕が集まると(蚕には上にいく習性がある)、
その重さでぐるんと簇は180度回転し、全体的にちゃんと
均等に繭ができるようになっている。

ぐるんのとき、

「がらん!」

とけっこう大きな音をたてる。
かなり驚く。




三眠と四眠の蚕。
どちらも繭をつくる直前のもの。

品種改良によって三回眠ってから繭をつくる蚕と
四回眠ってから繭をつくる蚕をつくりだしたのだけど、
こーんなに大きさが違うのだ。



宝石箱。
繭玉が浮いてるの。
でも糸でそうなってるの。

きれいでしょう?

ただこの繊細さ。
志村さんのところの繭玉はちょっと特別だと思う。

きけば、飼料の桑の葉は、上から12枚目までしかやらず、
孵化したての極小の蚕にも化学飼料(粘土みたいなやつ)は
一切やらないのだ。

養蚕農家の桑の木はさいごはいつでも丸裸に
なっているものだが、つまり葉という葉をぜんぶ
使い切るものだが、ここでは上から12枚目までしか使わない。

なぜならその蚕の先にある「糸」を志村さんは見ているから。
やわらかい上の葉だけを与えることで、糸がより細く、
より艶が出るのだという。




一度、蚕が繭をつくり終えるまでを
夜通しみていたいと思う。


あと面白かったのは糞の色。
初めて知ったことでもある。




クロレラみたいな緑の粒がいくつも落ちていて
何だろう?と思っていたら「糞ですよ」と。

繭をつくり出す頃になると、黒い糞はどんどん大きくなり、
最後のほうではこんな緑の糞を出し始めるのだという。

で、最後の最後。
蚕がラストに出す糞の色は白なのだ。

石灰みたいな白い玉が写っていると思うけど、
それがそう。
もうこれで糸をはき始めるよ、というところで、
体中の不純物は白い化石のような形で出てくる。

最後は白なのだ。




新聞紙が濡れているのは、液体もいっしょに出るから。




志村さんと比佐子さん。




こちらは「千年蔟」。
この蔟は何連もつながった山型の網状をしている。

で、上の写真。
千年蔟から落っこちた蚕なのだけど、
なんと部屋のすみで繭をつくっていた・・・。
ああ。




通常の繭と玉繭。

玉繭は、二頭の蚕で一個の繭をつくるので
繭のサイズが大きいのだ。

ちなみに玉繭からひいた糸をよこ糸に使ったものには
牛首紬が有名だ。

玉繭の糸は内部で複雑に絡み合っているため製糸は難しいのだけど、
その玉繭の糸の特徴として、何本もの繊維がからみつくため強く、
また所々に節ができることで織物に独特の味を作り出す。




下の写真。
何組か玉繭を作っているところが
写っているんだけど、わかる?


これはランチタイム。



信州といえば、蕎麦ですよ。
「丸富」さんで。
おいしかった・・・!


さいごは美しいものを。






志村さんの工房にあった草木染の糸。
塩漬繭からひいた糸は光ってる。

実物はもっと綺麗。
ハッとするほど、綺麗。

桑を育て、繭を飼い、塩漬けし、糸を引き、そして織る。

志村さんの人生の時間は「よき糸」に注がれてきた。
これに異を唱える人はきっと誰もいないと思う。
でもきものになってこそと、よき糸からさらにその先のきものへと
志村さんのなかで何か美しい「像」が結ばれたのはここ数年。

よき糸からきもの、着る人へと意識が延びていったとき、
志村さんのなかでブワンと何かが膨らみ、
そして何か新鮮な創造力が生まれたようだ。

何かって何だろう。

今回の研究でそのしっぽを
捕まえてやりたいとすーっごく思う。
いや、しかし。
しっぽってところが実に謙虚なんだけど(笑)

だって研究ってそんなにするすると
思い通りの結果が出てくるものじゃないから!


というわけで。
今日はここまで。





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