1. 分断説に踊る時間を惜しむ。
2. 人を選出する選挙とはずいぶん違った。
3. 国政と地方政治の変なリンクはやめたい。
<1. 分断説に踊る時間を惜しむ。>
大阪市の全区で接戦だった。それを無視した「分析」は嫌だ・・・。
例えば、この図。青が都構想賛成票が上回った区、赤が反対票が上回った区。
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大阪市北部は「キタ」で知られる繁華街・オフィス街の梅田や大阪駅、北新地、北浜、淀屋橋などを中心とした地帯で、大阪随一のビジネス街・官庁街(市役所・府庁在所)でもある。一方、大阪市南部は「ミナミ」で知られる歓楽街の難波、心斎橋、天王寺、新世界(通称)などを中心とした雑多な商業集積地帯である。一般的に、全国的な報道や映画、ドラマの中のイメージで登場する「大阪」とは、この「ミナミ」を中心とする大阪南部一帯である。
それは例えば『じゃりン子チエ』の舞台である大阪市西成区、『ミナミの帝王』の主な舞台である難波・天王寺一帯(勿論この作品にはキタも登場するが)、そしてかの有名な「道頓堀」「グリコの看板」「くいだおれ人形」「通天閣」は、全てこの「ミナミ」の情景である。
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(http://blogos.com/article/112320/ 古谷経衡「大阪都構想住民投票」で浮き彫りになった大阪の「南北格差問題」図も古谷氏が制作)
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納得してしまいそうになるが、次の図を見れば印象が変わる。
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https://twitter.com/ktgis/status/599950291098734593
谷謙二/TANI Kenji @ktgis
大阪都構想の開票結果の賛否の分布。どの区も賛否が拮抗していてわずかな差しかない。データは大阪市役所のページ。
http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu240/sokuho/kaihyo_data_10.html …
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地域ごとの傾向の違いなんてたいしたことなかった。残るは年齢ごとの違いで、速報番組では70代以上のグループの反対票が目立っていた。一般的に高齢者の方が投票率が高いので、「反対する高齢者が多いので、多くの反対票があった」「若者は賛成だったが、投票には行かなかったので賛成票は減った」というような話になるのかもしれない。
だが、それなら、「都構想実現の可能性を少しでも上げるために、絶対投票に行く!」というほどには熱意がなかったことになるのだ。若者の支持といっても、熱意に欠けていたことになる。そんなことから、高齢者と若者との分裂を強調するほどの結果は出なかった、と思う。
地域差・年齢差をおおげさに強調して、本当はたいしたことのない分断(北vs.南、高齢者vs.若者)を決定的なものであるかのように述べるのは、不毛だ。状況はそんなに単純なもの「南に回っている予算を北に入れる」とか「高齢者に回っている予算を若者に使う」とか)ではない。
選挙の結果、北では賛成票が南では反対票が圧倒的に多かったわけでも、高齢者若者共に高い投票率であって高齢者は反対し若者は賛成したが有権者数で勝る高齢者の反対票が決定打になったわけでも、ない。
南北でも老若でも、相手側に寄り添う判断を下す人も多かった、ということにはならないか? それを前提にして、二重行政の解消でもなんでも大阪市を良くしていく計画を立て始めればいいだけに思える。
<2. 人を選出する選挙とはずいぶん違った。>
運動の制限など全く違う・憲法改正の国民投票はこんな感じ・・・というようなことだった。積極的に情報を集めてはいないが、なんだか嫌な制度だな、と思っていた。
維新の党は、正確な理解よりも、上手で高額な宣伝活動でイメージを作ったり安易に「敵」を設定して憎しみを駆り立てたりしていたような印象がある。他方、反対していた他の党の予算はずっと少なかったためか、運動方法などは私にはほどんど伝わってこなかった。
開票速報番組は、議員などの選挙とは全然違ったね! 当確がすぐに出るというのは、ああいうはらはら感を味わいそびれるということなのね(可決されていたら、こんなにほがらかに書けなかったわけだが)。
当確を速やかに推定する技術力があるのだから望むわけにはいかないが、なかなか当確が出ない方が選挙が実感できていい、と思った。
違いは、開票後の記者会見でも感じた。いつもの開票番組では、挨拶かせいぜい表面的な話しか聞けない。
橋下市長に対する不思議な記者会見(私は、「橋下市長は、最近は都構想の運動ばかりで、公務はほとんどしていなかったのでは?」という点をきいてもらいたかった)は、馴れ合った雰囲気が嫌だから置いといて(なんだか、大阪をずたずたにしたことが思い出作りみたいで、私はむっとした。大阪都構想ではなく、例えばダムや原発の建設などで破れたらどうだったろう? 地域を分断する点は同じだと思う)。
対する、自民党市議(柳本氏?)の会見が印象的で。こういうテーマで住民投票をするのはいけない、というような発言にしみじみした。「いきなり首長」と「地道に市議会議員」は、政治姿勢がずいぶん違うように見える。
結果論になるが、本当に僅差だったので(賛成・反対・棄権が1/3)、まずはもっと話し合いで賛成か反対の数を増やすべきだったと思う。あんなに割れているのに、多数決で「変える(=賛成)」が決まったらたまらないなあ、と(「変えない(=反対)」ならまだいい。「=マイナーチェンジ有り」だから)。
<3. 国政と地方政治の変なリンクはやめたい。>
(1) 都構想を「理解している」とはとても言えない私だが。どちら側の資料を見ても、賛成する気持ちになったことがない。今の政府と同じで、悪徳商法のパンフレットみたいで。ただし、無条件で反対側に賛成(~)するほどではなかったが。
(2) 橋下市長の人柄が合わないせいもあるのは確かだ・・・。その点、反対側陣営は自民党から共産党までいる連合体であり、橋下市長と対になる人物がいなかったので、人柄でなく政策だけで考えられて良かった。
(3) 投票までの流れも嫌だったし、投票後に考えられる国政の動きも嫌だ。
この投票は、市議会における公明党議員の賛成がなければ実施できなかった、という。昨年の総選挙で橋下市長が公明党議員の対抗馬になるような立候補をしない、というのと引き換えに、大阪市議会で公明党が賛成した。
橋下市長はもともと安倍首相を支持していた(前にも書いたが、当時野党だった自民党で首相辞任から息を吹き返しつつあった安倍氏のことを、当時人気絶頂だった橋下市長(府知事だったかもしれない)が盛り立てた。あれがなければ、今日の首相は安倍氏ではなかったかもしれない・・・と私はイラついてしまうのだ)。それに加え、都構想が決まったら維新の党は自民党の憲法改正に協力することになっていた。だから、首相と菅官房長官は都構想に協力的(今回の投票で橋下側が明らかに優勢だったら安倍首相は応援に駆けつけたという推測がある)。
衆院選挙と憲法改正ですよ。大阪府や大阪市といった地方の政治が、国政での動きの取引の材料にされている。何が地方自治だ。なんてえげつないんでしょう!
今回のことに限らない。近年、地方と中央の間が、現場の非正規雇用者と東京本社経営陣みたいなことになってないか?
トリクルダウンでもトップダウンでもなく、多くのボトムアップが動めかないと日本は衰退するような気がする。まだこれだけ人口があるのだから、埋もれている人材は多いはず。