<1.「分散管理」なのか?>
何ヶ月か前に配られたパンフレットと内閣官房のサイトには、「マイナンバーは一元管理ではなくて分散管理」と明記されている。「一元管理」という言葉の意味の定義はどうなってるんだっけ?
ある人の多種多様な複数のデータが、その人固有の番号を鍵に集積され続けるシステム。それは「マイナンバーという鍵になるデータでの一元的管理」ではないのか?
市町村・都道府県・健康保険組合・日本年金機構・ハローワーク・独立行政法人(ん?これはどの独法だろう? 運用の監視団体だったかな?)が、それぞれサーバーを持つ。各々のサーバーには各々が担当するデータのみがマイナンバーごとに蓄積されていく。「分散管理」とは、個人のデータを種類ごとに別のサーバーにのみ入れていくという意味だろう?
それは、情報を入れるサーバーが分散管理されるという意味でしかないのではないか?
年金の不正受給(子が亡き親の年金を受け取り続けた事件など)防止として、受給者の受診記録を調べるとする。
日本年金機構が健康保険組合のサーバー内の受診記録を照会すると思うが、その際にマイナンバーを鍵にサーバー同士の情報をリンクさせるのではないか? つまり、マイナンバー・年金支給記録・受診記録が一覧表が少なくともデータファイルとして作られる。それを外部メディアにコピーしたり印刷したりすることは、定型業務としてありそうだが(だって、年金の不正受給の調査をするなら報告書を作るはずだから)?
なんだか、安倍政権の政治によくある「言葉の定義が共有されていないので認識がすれ違う」パターンが起きているような予感。
多くのデータをマイナンバーでリンクさせて持ち出せるかどうか? データを流出させた企業の謝罪は、ベネッセが久しぶりだった。だが、流出事件が発生しなかったからではなく、流出を公表(「流出を記者会見で発表しない」だったかも)しなくなっただけだ(というのは公表されていた。嘘じゃないですよ)。
また、日米政府などがサイバー空間も戦場になっていると宣言している。窃盗犯だけでなく敵国やテロリストのことも考えなければならない。例えば日本年金機構が市町村のデータを取得するのはインターネットは使わないのか? また、ソフトウェアは汎用システムではないのか(ニッカウィスキーの樽の情報管理システムさえ汎用に変更される時代ですが・・・)? 私は、転居ごとに役所内窓口を回るのに1日かかってもいいから、安全性を守って欲しい(また、仕事を休んでそういう手続きができるゆとりがある社会が実現されるべきだ、とも思う。今の日本では、「有権者として社会の一人として学んだり考えたり経験したりする時間」が想定されていない。「お金を、稼ぐ・納税する・遣う」だけの生き物になれと言われてるみたい)。
<2.「一元管理」ならば・「一元管理」なのに>
民主党政権でも言われていたが。マイナンバー制度で集約した国民のデータは、商業利用や研究データに使われるようだ。
それを例えば業者に渡す時に、もちろんマイナンバーは入れない・だが居住地域や生年月日は市場調査には必要・・・など、データとしての精度の高さとプライバシーの侵害度は表裏一体。例えば現在30歳女性で2年前に初期の乳がんの患者である某女性が、東京都に住んでいる・東京都中央区に住んでいる・東京都中央区銀座に住んでいる・・・というようにどこまで詳しいデータが提供されるかは、検討中なのだ(その「押したり引いたり」は、新聞記事で追える)。
また、マイ・ナンバーのシステムに入れるデータの種類は、現在の政府公報(=ほぼ確定情報)によると行政のための必要最小限であるようだが、経済政策絡みの大臣発言などによるとどんどん増えそうなのだ。アベノミクスの下で「経済成長のために」、自民党作成憲法施行の下で「公益のために」・・・と、エスカレートしそうで怖い。
・ 自民党の憲法改正案では、人権が大幅に削られている。そういう価値観の政府が考える個人のプライバシーは、とても幅が狭いだろう。
・ マスコミは政権に不利になるような情報は報道しなくなっている(特に安倍首相はマスコミの報道が第1次安倍政権を倒す主力だったと考えているから、その轍を踏まないように牽制しまくっている)。そのため、マイナンバー制度に関して目に入る情報が少ない。
・ 安倍政治には、議論を避けて独断的に政策を決める性質がある。
・ たぶんTPPで日本経済は打撃を受ける(少なくとも第1次産業は大惨事)ので、なりふり構わずビッグデータを使う。「利用する」ではなく、外国企業に「売却する」(フィンランド(?)が先住民の遺伝子データを製薬会社に使わせたのは、20世紀だったか)。
私はamazonには買う時にしかログインしない。amazonに好みなどを把握されることを、便利ではなく生理的に嫌だと思う。親しくもなく親しくなる気もない人に、自分のことをあれこれ知られるのは嫌だ。ましてや、どんな政権が成立するかどんなTPP条約が結ばれるかどんな時代になるかわからない。
いや、「日本のために命を捧げた若者達はなんと立派だったことか。私達も見習いたいものです」というような人達にとっては、「自分の個人データを日本の収入のために提供する」なんて誉なのかもしれないな!
「プライバシーが・・・ぶつぶつ」などと言おうものなら、「お国のために役に立つ気持ちはないのか! 非国民めが」って叱られそうですが。
扱うデータの種類について、しっかり線を引いておかないと、いつのまにか法律が作られて提供データの種類が増えていく。私や周りはそう予想しているが、他の皆様はどうなんでしょうか。