トラカリコン!

「虎・借り・コン!」。虎の威を借りた狐。虎の威を借りて吠える狐が私…。虎が何であるかは、本人にもわからない。

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矢部宏治著「日本人はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」を読んだ方からの、憲法改正についてのコメントをお待ちしています。 コメント受付用記事 のアドレス http://blog.goo.ne.jp/kanra-toriko/e/a08c500525a4ba2e568012c53edbaa6f

東シナ海の中国ガス田激増(安保法制)

2015-07-23 19:04:06 | 政治や経済
(この記事の最下段に、<1.>と<2.>の内容の関連サイトのアドレスなどを載せます)

「そこでまず。日本を取り巻く環境も変わって、日本も備えないといけないんです。例えばこれ、何かわかります(パネル写真を掲げて)? これが、まさに東シナ海の中間線と言われる九州から200キロの所に、こんな馬鹿でかいヘリポート付きの物がですね、これは、実は前は4つだったんです。ところが、今、もう、十何個できてるんです。この1年間に倍増しているんです。日本の目の前ですよ。尖閣には、中国の大陸にも近い所に、ヘリポートがいっぱいできてる。加えて」

・・・と、佐藤正久議員が先週の「モーニングバード」で強調した続きだろうか。昨日(22日)、政府は「十何個できてる」ものを公表した(写真などは外務省のサイトで見ることができます)。

で、公表はあれでいいんでしょうか?




<1.「日米同盟の抑止力 vs. 中国」?>

佐藤「まさにそこ、抑止力なんです。今ね、作った物をすぐ簡単に止める、なくすってことはわかりませんよ。新たな建設を止めるっていう効果は、間違いなくある」・・・というのも、同じく「モーニングバード」から。

元自衛官・防衛省・外務省・官房長官という顔ぶれに対し、一般人である私が、身の回りのジャンルではないのに、「そういう問題かなあ」と疑問を持つのは、勘違いも甚だしいのかもしれない。
でもなあ。「トリミングのやり方で絵の印象が変わる」という意味では、素人だって自分なりの考えを持ってしまうのだ。

中国は、防衛力で日本よりも優位にあるせいでおごっている。集団的自衛権行使を(部分的に)解禁して日米同盟という抑止力を高める。そうすれば、中国は東シナ海でのガス田開発を中止する。・・・というのが、佐藤議員そして政府の考えなんだよね?
その前に、日本政府がイギリス政府に、「イギリスのシェルが上海で仕事するのをやめさせてください。日本とイギリスは親しいはず。湯川氏と後藤氏が人質にされていた時には、毎日のように、首相同士が電話で話した間柄じゃありませんか」と頼んでみたら?
いや、「頼んでみたら?」と本気で書いたわけではない。


そうではなくて。
佐藤議員・安倍首相など日本人の何割かは、こんなふうに思ってない?
i) 中国は強大なならず者。日本だけでなく、ベトナムなどアジア諸国・「日本と密接な関係にある」アメリカ・「日本と価値観を同じくする」欧州諸国も、警戒している。
ii) 日本が武力行使の可能性を広げるのは、中国・北朝鮮以外の国々に歓迎される。「世界の中央で輝く日本」にまた一歩近づける!

ここで、視界から日本を消すと。
東アジアに大市場でありそして資源豊富な新興国がある。莫大なエネルギーの需要があるのだから、イギリス(のシェル石油)は参入したい。中国と共同事業を開始。もちろん、イギリスだけでない。アメリカ(のユノカル)も。だが、契約の翌年になんらかの理由(私は知らない。採算がとれなかったとか?)で英米の企業は撤退した。その後、2011年、シェルは上海にプラントを設置(ここで注意。上海のプラントが東シナ海からの転々ガスを処理しているかどうかは私にはわからない。内陸部で発掘したものをパイプラインで上海まで運ぶ → 上海で液化 → 船に積んで上海の港から輸出・・・とかかもしれない)。

ところで、東シナ海をはさんだ向こうに日本があるじゃないですか。

中国にはこれ以上東シナ海でガス田開発させない、と日本が頑張ったら。不満を持つのは中国だけ? イギリスはどうするんだろう。少なくとも、日中の対立に際して、イギリスが日本に味方するとは限らないのでは? せいぜい仲裁してくれるとか?
そして、日本がどんなに尽くしても、アメリカはイギリスとの絆を優先するような気がする。「血は水より濃い」だ。いや、逆に「イギリスの石油会社 vs. アメリカの石油会社」だったりする? その場合、日本はまさにアメリカ手先状態になるのでは?

こういった状況で、日本国内では、「アメリカとの集団的自衛権で抑止力を高めて中国を止める!」と政府が言っている。
この政府の安倍首相は、中国とほとんど対話していない。それどころか、戦後70年談話のことでぴりぴりしている。就任早々靖国神社に参拝したことに始まるのだ。AIIB非加盟の良し悪しは、私にはわからない。だが、この件で中国に距離を置いたのは確かだ。そもそも、「民主党と違って、安倍自民党は、中国に対して毅然とした態度で臨むぞ!」という雰囲気で政権を握り、さっさと靖国神社に参拝した。東シナ海で中国と張り合うはめになるのは、当たり前ではないか。
・・・で。いきなり、軍事的な抑止力を外交カードにして中国に主張する(佐藤議員)、と宣言しちゃうんだ。不器用にもほどがある、と私は思います。もうちょっとグローバル企業や経済の動きに目を配ってもらいたい。
要するに、外交が苦手。戦後70年にして、日本の軍事力行使の範囲を広げることになるなら、外交ができる首相の下でなければならない(なお。もちろん、憲法違反しない道で、ですよ)。

(問題は、誰がそんな首相になれるのか、ということ。とりあえず、来年の参院選で国会をねじれ状態にする。衆院選は遅くても2018年12月だ。首相が出るのはどこの政党からが良いのかを、じっくり見極める時間が欲しい)






<2. 外務省? 官邸?>

写真を公開している外務省サイトのページ、あれ、防衛省サイトかと思った。外務省なら、外務省らしい分析も載せるもんじゃないか? いや、私が勝手に「日本の外務省ならこうあるべき」というイメージを作っているのは確かではある。

なんか、もう。「中国ひどい! 中国ひどい!」なのだ。省庁のサイトなんてあまり見たことがなかった(第2次安倍政権発足以降、いきなり見るようになった)私。見慣れた企業のサイト達と比べて、空気(?)があまりに違う。安倍首相や高村副総裁がブログを書いたらこんな感じ?みたいな文章。


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(・・・)
ガス田は地下でつながっており、政府は、日本の資源まで奪われかねないとして、中国側に開発の中止を求めました。しかし中国側は、日中の境界線は日本が主張する中間線ではなく、沖縄付近にあるとして応じず、両国の対立関係は次第に先鋭化していきました。
(・・・)
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「いわゆるガス田は、まさに、まさにですね、地下で明白につながっております」とか。安倍首相ぽくない?




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 日本は中国が新たなガス田開発行為をするたびに抗議してきたが、大々的なアピールは控えてきた。写真公開は「日本の情報収集能力が露呈しかねない」と防衛省が慎重だったことに加え、「尖閣問題で手いっぱいだった」(外務省幹部)というのが実情だ。
 ただ、首相官邸には「どんどんつくられるわけにはいかない」(幹部)と危機感が広がっていた。
 (・・・)
 安倍首相が今国会での成立をめざす安全保障法関連法案の参院審議を控える中、各種世論調査では国民の理解は進んでいない。自民党の国防関係議員らからも「安保法制に関わる話なので国民に知らせるべきだ」と公表を求める意見が出た。議員らは2015年版の防衛白書にも、中国のガス田開発の記述を増やすよう注文をつけた。東シナ海で中国の活動が活発化していると明らかにすることで、日本の安全保障環境が厳しさを増していることを示し、法案の必要性を国民に訴える狙いだ。
(2015年7月23日 朝日新聞)
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私は、やっぱり安保法制をいじる前に、中国と語り合ったり、アジアや欧米諸国と意見交換すべきだと思うけどな。いきなり軍事力を高めるのは雑。
安倍首相(佐藤議員も)は説明や会話をテレビで見る限り、話し相手がちょっと困ってしまうタイプのようだ。「結局、尋ねたことに答えてくれないじゃないか・・・」、とか。企業なら社内向けの仕事に人事移動させるんじゃないか?




<3. 東シナ海での境界線の引き方問題>

ガス田は、「中間線」の中国側の際に作られている。
私なんかは、中国の律儀さを感じてしまったのだが。天然ガスについては、位置の問題ではない。境界線の日本側に充満しているガスが中国側に吸い取られてしまうから。
そのため、2008年の福田政権時代には日中共同開発が合意された。外務省のサイトによれば、「2010年9月。沖縄県の尖閣諸島沖で起きた中国漁船による衝突事件を受けて、中国側は条約交渉を一方的に中断しました。日本側は交渉を再開するよう繰り返し要請しましたが、中国側は日中関係の悪化などを理由に、これを拒否。この間も、中国側が日中の中間線付近で、一方的に、新たなガス田の開発を進めていると指摘されてきました。」とのこと。尖閣諸島を国有化したことは略してあるんだ・・・。

2国間の境界線は「中間線」ということで決まっているわけではない。・・・というようなことを、昨夜の「報道ステーション」で中島岳志准教授が説明していた。
i) 経済的排他水域(だったかな?)。これは日中双方が互いの領土近くまでに線を引いている。なので、領域は2国間でだぶっている。
ii) 中国は、大陸棚が境界線だと主張。これだと日本の領土すれすれまで中国の領海になる(逆に、日本には自国領土すれすれまでしかない)。が、これは国際的に少数説であり、通用しない。
iii) 大陸線の比率で決める説。これでも、日本の領海はとても狭くなる(島国だから)。
iv) 中間線。両国の領土からの中間点を結ぶ線。
ちなみに、外務省のこの件のページには、「(日中)中間線」のことしか書かれていない。中国はiii)を主張しているわけではなかったのか。そう思うと、交渉の余地はありそうだけどなあ。なんやかんや言っても、アフリカや中東の紛争地帯と比べると、日中関係なんて穏やかなものなんじゃないのかな。

ここで、尖閣諸島の帰属国が気になってくる。台湾も主張し始めていたような・・・?
日本のものだと主張するためには、どうしても集団的自衛権は必要なのか? アヘン戦争で戦った中国とイギリスが仲良くやっているのだから、なんんとかできるんじゃないかなあ。日本には中国人がだいぶ投資している。第2次大戦前のアメリカとドイツの例もあるし。
ここは、元自衛官佐藤議員ではなく、経済や外交の人が活躍する場なんじゃないかなあ。





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<http://jp.reuters.com/article/2012/03/22/tk8104998-shell-cnpc-shale-idJPTYE82L05O20120322>

ロイター 2012年 03月 22日 18:36 JST

英シェル、中国でCNPCと共同でシェールガス生産へ

3月22日、石油メジャーの英ロイヤル・ダッチ・シェルは、中国でのシェールガス資源開発に向け、中国石油天然ガス集団と生産分担契約を結んだと発表した。写真は2010年撮影(2012年 ロイター/Morteza Nikoubazl)
3月22日、石油メジャーの英ロイヤル・ダッチ・シェルは、中国でのシェールガス資源開発に向け、中国石油天然ガス集団と生産分担契約を結んだと発表した。写真は2010年撮影(2012年 ロイター/Morteza Nikoubazl)

[北京 22日 ロイター] 石油メジャーの英ロイヤル・ダッチ・シェル(RDSa.L)は22日、中国でのシェールガス資源開発に向け、中国石油天然ガス集団(CNPC)と生産分担契約を結んだと発表した。中国でそうした契約が結ばれたのは初めて。

シェルのピーター・ヴォーサー最高経営責任者(CEO)は「中国にはシェールガスに関して巨大な潜在力があり、我が社はその潜在力を引き出すために貢献していく」との声明を発表した。

中国はシェルガスの開発では初期段階にあり、中国政府は今後数年のうちに資源開発に向けた適切な技術を獲得したい考え。2020年までにシェールガス生産の飛躍的な拡大を目指している。

中国国家エネルギー局(NEA)は16日、2015年までにシェールガス生産を65億立方メートルに引き上げたいとの考えを示している。これは現在の中国のガス生産量の約6%に相当する。
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上の記事でわからないのは、シェルの契約相手が「中国石油天然ガス集団(CNPC)」であること。CNPCは陸上を担当しているような資料があった。海洋担当は、中国海洋石油有限公司(CNOOC)。

CNOOCの地域別生産(2013年)では、東シナ海の稼働はまだまだ。

渤海     2.1 万boe/d 
東シナ海   0.4 万boe/d 
南シナ海東部 2.5 万boe/d 
南シナ海西武 5.7 万boe/d 

(「万boe/d」って単位は初めて見たぞ。規模の指標になるとは思うが。何なんでしょう)
ちなみに、他の2公司も合わせて数が最も多かったのは長慶で、52.5万boe/d。

上の統計は、竹原美佳「中国の石油・天然ガス探鉱開発における注目地域-タイトサンドガスの長慶、シェールガスの四川、深シナ海ー」(https://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=201409_029a.pdf&id=5350)のもの。

CNPCのCNOOCどちらか。気になるので。シェルのサイトも。



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http://www.shell.com.cn/en/aboutshell/our-business-tpkg/china.html

Project and Technology
(・・・)
Since 2011, Shell and Shanghai-based Wison Engineering Ltd have been developing a new, low cost ‘hybrid’ gasifier demonstration plant, which features Shell’s gasification technologies in a more compact arrangement. It will allow us to offer more diversified technology options to future large-scale coal-to-chemical projects in China.
(・・・)

Overseas Cooperation

On the international stage, we are working together with Chinese partners to bring energy supplies back to China.

For instance, together with CNPC, we acquired Arrow Energy in Australia to develop coal bed methane and turn it into liquefied natural gas for shipment to customers in China.

We are also jointly exploring for gas in Qatar.

And CNPC has taken a 20% interest in our Groundbirth tight gas project in Canada, where we are looking at the potential for producing liquefied natural gas for export.

In Gabon, CNOOC will acquire a 25% participating interest in offshore exploration blocks.

In Oct 2013, a consortium of companies, including CNPC, CNOOC and Shell, won a 35-uear production sharing contract to develop the giant Libra pre-salt oil discovery located offshore Brazil.

Last but not least, Shell is one of the leading international energy companies to import LNG from abroad to China, all in partnership with Chinese energy companies.
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上海での操業(?)開始は2011年。

ガボンでは、CNOOCとも組んでいる。第三国のガス田では、CNPCだけじゃなかったんだ。ブラジルでは、シェル・CNOOC・CNPCの三者が組んで仕事をしている。

「武器等防護」の応用範囲(安保法制)と国立大学文系学部改組

2015-07-21 18:59:40 | 政治や経済
<1. 日本における、米軍の財産の扱い。応用範囲が広い>

沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故では、ヘリの破片が米軍の財産として扱われたために、現場周辺には米軍関係者以外は立ち入り禁止とされた(通常の事故現場ならすぐに仕事を始める警察・消防も締め出された。このような事態は、同じく米軍基地があるドイツとイタリアでは、交渉の末許されなくなっている・・・というのは、先日「報道ステーション」で見た)。

つまり、こういうこと。
・ 日本の領土内に日本の主権が認められない箇所が突如として出現した。米軍はそうする権利を法的に認められている。
・ 日本の領空は、米軍のものである。米軍機は、日本政府の指示を仰がずに飛び回る権利が法的に認められている。
・ ということは、米軍機から何か落ちたり米軍機そのものが日本の領土内に落ちたら、そこは米軍の気が済むまで日本の主権が及ばない場所になる。





<2.「武器等防護」も広く応用される?>

<1.>のことがあるので。青井未帆教授による、安保法案のうち「米軍等の部隊の武器等防護」が及ぼす影響の予想(於:7月11日 全国憲法研究会 憲法問題特別委員会 公開緊急研究会 憲法から「安保体制」を考える)は的中する、と考える。
アメリカの(または植民地支配のための?)法律にはパターンがあるもんだ。日米原子力協定など、アメリカと調整して決めた法律や条約に出現率が高そう。やられちゃってるんだなあ、日本。


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(自衛隊の施設の警護のための武器の使用)
第九十五条の二  自衛官は、本邦内にある自衛隊の施設であつて、自衛隊の武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備若しくは液体燃料を保管し、収容し若しくは整備するための施設設備、営舎又は港湾若しくは飛行場に係る施設設備が所在するものを職務上警護するに当たり、当該職務を遂行するため又は自己若しくは他人を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、当該施設内において、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条 又は第三十七条 に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


上は、現行の自衛隊法。自衛隊の施設のうち「本邦内にある」物。それに対し、安保法制案では、下記の拡充が為されることになっている。


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自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に 従事している米軍等の部隊の武器等であれば、当該武保器等を防護するための武器の使用を自衛官が行うことができるようにする。(第95条の2)
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上の対象は、下記の通り。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・ 米軍その他の外国の軍隊その他これに類する組織の部隊
・ 自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動(※)に現に従事しているものの武器等
(※)共同訓練を含み、現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


佐藤議員は東シナ海にこだわっていたが、安倍首相はホルムズ海峡を熱く語ってきた。そして、法案では地理的に無制限なので、地球の裏側で米軍や豪軍が「我が国の防衛に資する活動」(なんて漠然とした「制限」だろう)に従事していれば、自衛隊がその武器等を防護しに行く可能性があるのだ。
ここで<1.>に書いた、法の応用範囲の思わぬ広さを思い出すと、想像の翼がはばたきますねえ。いや、ほんと。法律って怖いものです。

なお、軍事評論家の小川和久氏によれば、フォークランド紛争でNATOの集団的自衛権という抑止力が機能しなかったのは、フォークランド諸島がNATOの適用範囲外だったからだそうだ。ということは、安保法案が通ったら、日本はある意味NATO諸国よりも好戦的、と言われても仕方がないのではないか。
「そんなふうに思うのは一部のバカ」といった感想を持つ日本人もいるのだろうけど。「一部のバカな日本人」がそう思うなら、外国の人達の何割かが、「日本はある意味NATOよりも好戦的な国」と「誤解」してもおかしくない(「そんなことない」と宣伝するのが安倍首相なのだから、さぞ火に油を注ぐことでしょう)。もったいない。せっかくの「平和国家」ブランドなのに。

ところでこれ、宇宙空間は対象内なのか? アメリカの軍事衛星の防護のために、航空自衛隊に飛んでいくとか。




<3. 国立大学文系学部改組>

ずっと勘違いしてたのだが、対象は「文学部」ではなくて「文系学部」だったのか。
なんと、国会議員の出身学部である率が高いであろう、法学部も対象です。

そりゃあ、法学部を廃止して細切れにして、法の分析ができる日本人が出てこないようにしたいんだろうよ。そうじゃないと、上の<1.>や<2.>のような分析を当たり前にこなす研究者や法律家が輩出されてしまうから。
就職に直結するようなカリキュラムに編成するって、法学系では「行政書士・司法書士・不動産鑑定士の資格を在学中に取得しましょう」なのではないか? いや、「公務員受験コース」とかもあったりして?。

こういった制度改革は、「愛国教育」と同じく国内の思想統制の話かと想像していた。だが、こうしてみると、TPP方面でもあるような・・・。日本なりの知性を育成するのは、政府や国際社会にとってじゃまなことなのだろうか。「高度な知的訓練を受けたければアメリカの大学にいらっしゃい」とか(私大だって。ゆくゆくは、補助金制度で国立大と同じようにコントロールされるのではないか)。


<2.>のように、憲法学者の中には安保法制廃案を目標に動いている人達も多くいる。憲法学者だけでなく、他分野の学者・研究者も。心強いことではあるが、一方、この人達がこういう活動にあてている時間と労力を研究や教育に向けていたら得れられていただろう成果を思うと、「もったいないなあ」とも思う(私自身の楽しい夏も吹っ飛んでしまった。夏のバーゲンにも行きそびれちゃったよ。こうして日本経済は収縮していくのね・・・)。


先日書いた、「自衛隊や年金資金投資のリスクはどうなんだ」問題と同じかな。
安保法制廃案を目指している個々の学者・研究者(・私)という各自のリスクは高まるが、日本の今後という大きな範囲のリスクを減らす。そう信じる(いつか、このリスクと安倍政権のリスクの違いを区別するものはないかを考えてみたい)。

こうして書いていて思うのだが。
安保法制廃案だけでは、追いつかない。大学改革を含む多くの政策を止めなければだめだ。安倍政権による「改革」が社会を変えてしまう前に、政権交代して一気に止めてもらわないと。

・・・っていうか、「アベノミクス」ってどうなってるんだ?
GDPは速報値よりもまたもや大幅に下方修正された件は、NHK7時のニュースでちゃんと語られたのだろうか?
中国人観光客が「爆買い」して、中国政府が露骨に上海株式市場を支えして。おかげで日本は助かってます。・・・という認識で良いのかな?

憲法学者の「機能」

2015-07-21 18:59:20 | 政治や経済
橋下市長の府知事時代から目立ってきた、と私は思うのだが。「文系の大学教官」を蔑視する発言が珍しくなくなった(*)。与党政治家の間で最も「旬」な対象は、憲法学者だろう。
「憲法の字面にこだわる」「戦争から国民を守るのは憲法学者ではなく政治家(この言葉への反論を考えるのは楽しそうだ。時間ができたらやってみようっと)」など。

先日、元自衛官である佐藤議員の「モーニングバード」での発言を文字化してみた。
東シナ海でアメリカのイージス艦が北朝鮮が発車するミサイルを警戒している・海上自衛隊がそこへ行って給油できればいいのに現行法では認められない・だからイージス艦は給油するために基地に戻る・その間警戒活動が途切れてしまう・・・という話をしていたのだと思う(興味深く聞いた。が、「改善方法=今回の安保法制」というのは雑なのでは?)。

分野は違うが、憲法学者がやっているのは同じことなのだ。
自分の専門分野の過去や現在から、将来発生しうる事態を想定している。必要な対処法を提案する。経済学者も原発関連の学者も、その他いろいろな専門家がやっていること。憲法学者は憲法という分野でそれをやっている。

ただし。
日本は立憲主義国なので(安倍政権下でだいぶ形骸化してしまったが、建前的にはそのはず。つまり、首相は海外に対して「我が国は西側先進国と同じ立憲主義をとっているのであり」などと見栄を張る可能性くらいは残っている)、憲法学者が果たす機能が反憲法政権にはうっとおしいのは、道理だ。
憲法学者からの論理的批判に対し、属人的(憲法学者は字面にこだわる)なことしか言い返せない。もちろん、同一視はできないが、方向的には「運動家だから沖縄の反米軍基地運動に参加する」というようなツイートと同じだ。もっとちゃんと議論してほしいよ。


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(*) 大学の教官への蔑視発言は、ネット上での匿名の人もよくやっている。政治家につられたのか・もともとある蔑視発言が可視化されただけなのか・・・などと書きそうになったが。
そういえば、昔の学生運動では学生がもっとすごい勢いで大学教授を吊し上げたりしていたのでは? 当時の学生運動についてろくに知らないのだが、ぼんやりとそんな印象がある。
今、大学を停年・定年くらいの年配の教官が、当時の学生だったのかな。上野千鶴子とか。そういう世代が落とし前をつける巡り合わせなのかねえ・・・。

発言録ー7月17日「モーニングバード」に佐藤議員出演(徴兵制)(3)

2015-07-20 23:53:30 | 政治や経済
安保法制は、これまで政治ネタはあまり扱わなかった女性週刊誌などでも特集されている。そういう号は売上も高い。女性が強い関心を持っているようだ。番組の街頭インタビューがいくつか映され、それをまとめた気になる点のランク表がある。その第1位が徴兵制のこと。
以下、細部の再現はあきらめた・漢字も句読点も改行もカッコ付けはわかりやすさをモットーに勝手にやった。会話を文字で正確に記録するのは無理でした(たとえ全てを文字化してもかえってわかりにくいし)。
面と向き合った同士の会話での発言は、言葉そのものだけではなく、語尾の高低・表情・間合いなどで意味(例えば疑問文なのかどうか)を伝えるものなんだな、と改めて。オフラインで実際に会っている同士でなければ、ツイッターなどで会話するのは別物、と思った。


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羽鳥「佐藤さん、シンプルにこの質問(第1位 子どもや孫が戦争に行かされる? 「徴兵制になったりしない?」)に対するお答えいかがでしょう」

佐藤「徴兵制にはなりません」

羽鳥「絶対にならないですか」

佐藤「こういう疑問っていうのは、おそらく、戦争法案とかね、レッテル貼りのようなネーミングから心配になっている人が多いと思うんです。やっぱり、今回、戦争を抑止するための法案というふうに我々は位置付けています。
まず、徴兵制にならない理由その1は、憲法上、憲法第13条あるいは18条で個人の自由の権利あるいは苦役からの自由っていうのが認められておりますので。政府はこれまでも、徴兵制は認められないというふうに明言をしています。
2つめの理由。現場からの感覚として、現代戦において素人が徴兵で来ても、使えないです。穴を掘って、こう、鉄砲を撃つような時代じゃありませんから。自衛隊の主力は、高校生あるいは大学生の若者。彼らが一人前になるまで最低10年はかかります。戦闘機とかあるいは戦車・護衛艦というものを駆使する戦いですから、素人が、こう来て、厳しい訓練をやりますから、志願制で意志が強くなければ、そもそも訓練についていけません。で、今、主要先進国の中でも、徴兵制をとっている国はありませんし。実際自衛隊の募集はどうなんだ、ということを聞かれますけど。現時点においては、みんな、その、募集の頑張り、あるいは協力の効果もあって、倍率が結構高い中で、隊員を選んでおりますので」

羽鳥「自衛隊員は減っていないんですか」

佐藤「減っていません。定員は法律で決まってますし、で、また、予算上もしっかりとってますんで。しかし、それよりも多くの募集が、実際志願があって、試験というものを経て選んでいるという状態です。徴兵制は、憲法上も現場の必要性からも、これは絶対にありません」

羽鳥「ここで佐藤さんにお伺いして、”徴兵制どうなんですか” ”なるかもしれません” というお答えは絶対ない、とは思うんですけど」

吉永「憲法上っていうふうにおっしゃるけども。これは現行憲法においては保障されていますが。その先に、すでに”憲法を改正しよう”という動きがある、ということで言えば。私達は今おっしゃっていることに対して、”憲法守ります”っていうのがあればこれはいいけれども、そうじゃない、と。これはとてもその言葉に信頼が持てない、っていうのがひとつあります。
それから、やはり。”意志が強い”っていう、それから、”素人はだめ”。だけど、これって今までもね、いざとなった時に、一般の本当に普通の生活をしてきた人達を招集してきたという。いつ、ほんとに、あの」

羽鳥「過去ですね」

吉永「過去ね。過去そういう時代がありました。そういうことを考えると、意志は作られる。短期間で軍国少年・軍国少女を作った歴史もありますから。そういう形って、いろんな国民感情に訴えれば、そういうことも可能になってくる。逆にむしろ今ハイテクになっておりますので、それはやりやすいっていうこともあるのではないか、と私は思う。それが、”おそらくなりません”と言われても、それはとてもその安全な支えにはなってない」 

羽鳥「いかがですか」

佐藤「憲法ね、憲法改正する、多くの政党が憲法改正とかあるいは加憲とか、いろんな言い方をしています。それには衆議院参議院の2/3の同意がなければ、国民投票にかけれないっていうシステムになってます。実際、我々の我々自民党の憲法草案でも、徴兵制は認めておりませんし。で、さらにその後、国民投票で国民に審判を問うわけです。今の国民の感覚から言っても、自由とか権利を尊重する現憲法下でずっと教育を受けてた方々です。これを徴兵制ということについて、おそらく国民が同意を得るってことは限りませんし。
さらに、今の現代戦においては性能が高性能化、アップしている、という話があります。実際はシステムで動きますから。単品で動くわけではないので、非常にこれ難しいんです」

羽鳥「シンプルな話に戻すと、女性の方々は、”とにかく大丈夫なのか”っていうことだと思うんです」

佐藤「絶対大丈夫です」

羽鳥「佐藤さん、イラクPKOでサマワに行かれた、と。非戦闘地帯ですよね。危険じゃなかったですか」

佐藤「完全にね、治安が安定しているわけではありません。当然いろんなことが起きます」

羽鳥「そうですよね。不測の事態も起きますよね」

佐藤「それはもう、絶対起きないっていうことは」

羽鳥「ないですよね」

佐藤「だから自衛隊が行くんです。全然治安が安定していれば、民間の方が行って人道復興支援やればいいんです。ただし、治安がまだ十分安定はしていない、でもやっぱりそういう支援のニーズがある、ということで。各国は、そういう安全を守れる能力しかも支援の能力もある、自分で食事やお風呂自己完結型の組織っていうのは、他の国では軍隊。日本では、それは当面の先遣的な役割として、自衛隊が行って人道支援をやった」

玉川「ちょっと僕いいですか」

羽鳥「はい」

玉川「もう1回、ちょっと徴兵制に戻したいんですけども。
”憲法がね、今後変わるかもしれない”っていうふうに吉永さんおっしゃったけれども。憲法解釈を変更するっていうふうなことの問題が、今の段階でもあるわけですよね。今まで、政府は”集団的自衛権は行使できない”っていう憲法解釈を、ずっと自民党政権続けてきて。それを一内閣で変えたわけですよね。だから、今、自民党が”憲法解釈上徴兵制はできない”って言っても、それは、ある内閣、今じゃないですよ、将来の内閣が、”いや、できますよ”というふうに言った瞬間に変わってしまうってことを、みんな、恐れている。不安なんです。今まで”できない”って言ったことが、”できる”に変わったんだから。”じゃあ、徴兵制だって同じでしょ”って話ですよ」

佐藤「あのね、今回の集団的自衛権の解釈変更っていうのは、あくまでも目的が自衛なんです。国連憲章で認められているような集団的自衛権、これフルスペックです。今回は他の国を守るためのそういう形で、今回は自衛、日本を守るための限定的な集団的自衛権は、今までの憲法の整合性から言っても、”これは認められる”っていうのが我々の解釈。
比べてですね、今回の徴兵制に関しては。まさに憲法18条、これを普通に読めばですね、いくら解釈を、今までの答弁ありますよ、これ、今までの答弁とこの関係とどんなに整合性を取っても、これを徴兵制っていう解釈は無理です」

玉川「同じですよ。憲法学者が言ってるのは同じことです」

佐藤「玉川さん。できるって言うんだったら、今までの国会答弁と今回、どういうふうに解釈したらこれが認められるか、っていうことを示さないと。これはやっぱり、不公平だと思う。我々は、今までの憲法の解釈と今回の整合性を説明していますよね。憲法18条ありますよね、苦役からの自由。これについてこれまでの過去も、いろんな答弁がある。それと比べて、”徴兵制をこれが解釈変更でできる”っていう、その論理がなければできない。だから絶対できない」

玉川「例えば、石破大臣だって”徴兵っていうのは苦役ではない”っておっしゃっている」

佐藤「それは」

玉川「そういう大臣が、今、現職でいるじゃないですか」

佐藤「彼が言ったのは、ヨーロッパの国。ドイツは昔徴兵制度をとっていたり、スイスは徴兵制とっているんです、今も。そういう時にその人達に対して、そういうことについてそれを、徴兵制をね、苦役と言っていいのか、という話。憲法の解釈の話とは違うんです」

玉川「ハイテク化の問題を」

佐藤「あの解釈でね、それでどう考えてもあの玉川さん、そう言うんだったら、自分なりの論理を展開しないと。それ、やっぱりおかしい」

玉川「これからやりますよ、論理の展開は」

佐藤「今までの18条の今の国会答弁、ありますよね」

玉川「じゃあ聞いてくださいよ、ちょっと。論理展開しますから。他にもね。
ハイテク化の話がありましたよね。つまり、軍隊がハイテク化されてる中で、そんな徴兵で入ってきたような素人のような、扱えない、と。だけども、例えば韓国はハイテク化してないんですか。ハイテク化してますよね。だけど徴兵あるじゃないですか。つまり、ハイテク化ということだけで、徴兵を否定する理由にはならない」

羽鳥「そこはどうなんです」

佐藤「韓国の場合は、まだ北朝鮮と、こう、向き合っていう形で。まさにまだ戦争終わってないです。朝鮮戦争終わっておらずに休戦なんです。だから、今でも休戦状態のまま、北と南がにらみ合ったまま、真ん中に国連軍が展開しているんです。朝鮮半島、現実問題として。そういう中で、我々はそういうハイテクで使う分野と、まさに向き合ってる中で、まさに陸軍の昔ながらの 陸対陸という部分もあるんです。日本の場合は海に囲まれてますから。で、今の我々の陸上自衛隊のシステムをご覧になったら、わかると思います。韓国のシステムとはぜんぜん違います。我々は島国ですから」

玉川「私が言っているのは、ハイテクていうことだけを理由にして”徴兵制に行われない”ってことは論理的に言えない、って話をしてるんです」

佐藤「だから、ハイテクだけでなくて現代戦において、まさに素人がちょっと来てね、そのそれでその、鉄砲撃つのちょっと習ったくらいで、実際に日本の防衛」

長島「それはね、よくわかったんですけども。今、話を聞いていると、憲法18条も出てきちゃって。ちょっとまた難しくなってきてるんですよ、専門家同士のお話だから。
視聴者、僕も含めてなんですけど、要するに”9条と集団的自衛権が相反するもの”って認識として僕らにあって。解釈ですよね。憲法の違憲か合憲かも、まだ結論が出てないうちに話があって。要するに、国民の皆さんって”時期尚早じゃないか”っていうことは、あると思うんですよ。お母さん方がこれだけ真剣に聞いているってことは、”自分の息子達がもしかしたら戦争に行くんじゃないか”と。”そんなことはさせないよ”ってことの表われだと思うんですよ。
僕は1つ聞きたいんですけど。さっき佐藤さんがおっしゃったように、今回のことが、法案通ったことによって抑止力を高めるってことが、1つあるって思うんですけど。ただね、戦争に支援する後方支援する・バックアップする、となると。”戦争に巻き込まれるリスクはじゃあどうなるんだ”ってことが、僕は聞きたいんですよ。普通、ケンカをやってて、AとBがケンカしてて。”じゃあ、Aに、俺、加担するよ”ってやれば。Bからやられる確率は、絶対あるわけですよ。ケンカしてたら。個人レベルの話ですけど」

玉川「Bだけじゃないんですよ。BがCと集団的自衛権を結んでいれば、Cからも攻撃される可能性がある」

長島「”実際にこれが通ったことによって、どうなるんだ”ってことの論議が、全くされてないのに。この問題が起きちゃってるから、我々国民はあわてふためくわけですよ。そこはどうですか」

佐藤「私の息子も自衛官です。私も非常に慎重な立場で、当然、政治が1番大事なことは、自衛隊の方々が自衛のための戦争をしなくてもよい国際環境を、外交努力、作る。これが一番だと思う。一方で、いざっていう時に備えて抑止力、対処的な観点から備えをやらなきゃならない。これはわかると思う。備えっていう時に、日本の防衛っていう目的の備えと国際社会の平和安全に協力する備えって別なんです。そこは、分けて考えないと」

長島「それはね、僕もわかるんです」

佐藤「そこでまず。日本を取り巻く環境も変わって、日本も備えないといけないんです。例えばこれ、何かわかります(パネル写真を掲げて)? これが、まさに東シナ海の中間線と言われる九州から200キロの所に、こんな馬鹿でかいヘリポート付きの物がですね、これは、実は前は4つだったんです。ところが、今、もう、十何個できてるんです。この1年間に倍増しているんです。日本の目の前ですよ。尖閣には、中国の大陸にも近い所に、ヘリポートがいっぱいできてる。加えて」

羽鳥「今日は、お母さん方の疑問ていうことがあるんで」

長嶋「(佐藤議員に)それは僕もわかる。わかりました」

佐藤「そういうふうに備える時に。今までね、日本は自分だけで対応するのと、”羽鳥さんと私がお互いに平時からグレーゾーン・有事まで、お互いに守り合う”っていう形をとってるのと、どっちが相手にとって嫌か。誰が考えても、守り合う方が嫌でしょ」

長嶋「今回のことはね、安倍さんが、結局オバマに公約みたいなことしてきちゃって、4月に。”じゃあアメリカも防衛費がなかなか出ないから、日本もそこらへんは頑張ってくださいよ”って、言われてるような気がするんですよ」

佐藤「まったく(違う)」

長島「トータルで見ると僕はそう見えるんです」

佐藤「ガイドライン含めて、我々の方から」

長島「経緯を見るとそう思っちゃうんですよ」

佐藤「我々の方から、今回、特に日本をめぐる周辺環境変わったので。昔のガイドライン、これは非常に使い勝手が悪いんです。例えば、朝鮮半島と日本の間に東シナ海ありますよね。そこでアメリカのイージス艦が、仮に、日本を守るために警戒してるとします。それに日本が給油をしようと思っても、今の法律だとそこまで行けない。1回ね、ミサイル警戒をやめて日本に帰ってくる。穴が空いちゃうじゃないですか」

玉川「あまりにも専門的すぎます」

吉永「今までね」

羽鳥「(佐藤議員を制して)待ちましょう」

吉永「今までね、”結局、そういう議論わからないよ”って言ってた。でもだんだん詰まってきた時に、本当にこれは女性の感覚として、命を産み育てる者として、”これは本当に生命財産を守るのか。それとも逆に危機にさらすのか”ということ、”国と国の防衛と個人の生活がどういうふうに関わってくるのか”っていうことに、初めて関心を持った人、これは議論を見ながら”やばいな”と思ったから」

佐藤「ミサイルひとつとっても、我々の生活に影響してるんです」

羽鳥「どうなんですか。自衛隊の人って危険が高まるんですか」

佐藤「そんなことないです」

羽鳥「なんでそう」

吉永「いやそれ違う」

佐藤「今回の法案見てもらえばわかります。私も現場にいた人間ですから。今までの活動をちょっと増やすくらいのレベルなんです、実際は」

羽鳥「ちょっと増やすってことは、危険高まるってこと」

佐藤「新たな任務が増えるだけです」

玉川「新たな任務が増えたら、高まるじゃないですか」

佐藤「新たな任務が増えたら、新たなリスクは生まれます。だけど、大事なことは、リスクがね、高まるか下がるかっていうのは。”全体として抑止が上がれば下がる”って見方があります。大事なことは、”個々のケースで自衛隊がどこで何をやるか”ってことを議論しないと。千差万別なんです」

羽鳥「でもどこで何をやるかは、”そんなこと言えないよ。そんなこと言ってるリーダーいないよ”って」

長嶋「たまちゃんの質問が聞きたいんだ」

赤江「あのですね。佐藤さんのお話を伺って。今までも日本って決して無防備だったわけではなくて、日米同盟も結んでたわけですよね。今おっしゃっているような自民党の考えで進んだ場合、中国が今作っているようなガス田とかそういうのは、これからもう作られなくなる、抑え込めるようになるんでしょうか」

佐藤「まさにそこ、抑止力なんです。今ね、作った物をすぐ簡単に止める、なくすってことはわかりませんよ。新たな建設を止めるっていう効果は、間違いなくある」

赤江「間違いなくある?」

玉川「止まるんですか」

佐藤「あとはミサイルね、ミサイルについても」

玉川「いや、佐藤さん。止まるんですか、って赤江さんの質問に答えてください」

羽鳥「こういう建設は止まるんですか」

佐藤「今回、法案、我々が平時からグレーゾーンまで実際日米がしっかり守り合っている態勢を示す、こういう情報(パネル)をしっかり公開して。中国にね、こう申し入れる。これ、外交です。外交の裏付けとしてこういう情報をしっかり公開して、止めないといけない」

赤江「止めなきゃいけないのはわかるんですけど。止まるんですか」

佐藤「私はこれは止める効果が大だ、と思う」

吉永「でも、今だって日米体制はあるわけですから。安保体制はあるわけですから」

佐藤「隙間があるから、そこを今埋めようって、今回は。日本国民の命を守るために隙間が出てきましたね。むこうがね、そのままあればいいんですよ。”どんどんこの数年で変わってきているっていう時に、ほんとに国民の命を守らなくていいですか” っていう話があるんです。民主党も維新の党も、”状況が厳しくなったね”、ていうことは認識してるんです。だったら、この隙間を埋めないといけない。隙間があるんです。民主党も、法案を出す準備をしてきたんです。出しませんでしたけど。維新の党は出しました。隙間があるんです。そこをやっぱ埋めようっていうのは、自民党も民主党も維新の党も、みんな同じなんです」

羽鳥「はい玉川さん」

玉川「これね、結局、これ、”アメリカとの約束とのために、中国の脅威を使って煽ってる” っていう側面はありませんか」

佐藤「ありません。それでね、そんなアメリカとの約束じゃなくて」

玉川「それはもう、ギリシャの戦争の時代からデマゴークから、ずっとそうですよ」

佐藤「日本国民の国民の命と暮らしを守るために、自民党だけじゃないんですよ、民主党も維新の党も、みんな ”この隙間を埋めよう” ってことで。法案の準備、民主党もしましたし。維新の党は法案も出したんです」

玉川「だって集団的自衛権認めてないでしょう、維新の党は」

佐藤「維新の党は、集団的自衛権って言わないってだけで。やってることはおんなじだけど、これは集団とも個別とも言わないでやってる」

吉永「”隙間を埋める” っていうときに、”隙間を埋める” って、皆さん方は上から目線で見てますけど。隙間を埋めるのは人間なんですよ。そうすると、その人間っていうのは結局、徴兵っていう言葉は1つのあれですけど、そうじゃなくていろんな人が行かなくちゃいけない。そこを埋める側の立場の発想がこっちだ、と思って」

羽鳥「街のお母さんたちの素朴な疑問でも、これだけ話があるってことになかなか。それこそ、ここの溝が埋まんないじゃないかっていう」

長島「ちょっともう一つだけいいですか」

羽鳥「あ、もう時間がちょっとないんで」

長嶋「あ、そう」

羽鳥「佐藤さんがこの後国会に行かなきゃその時間がある、っていうことで。本当はもっといろいろとお話をしたいんですけれども」

長島「またぜひ。こういう論議がもっと必要なんです。時期尚早なのは間違いないです」

赤江「それがちょっと理解が深まってないんですよね」

佐藤「”日本を取り巻く環境がどれだけ変わったのか” っていうことを、我々もっとね、説明しないと。出発点が違っているんです」
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参加者(敬称略)
・ 佐藤 ・・・ 佐藤正久参院議員。イラク派遣で「ひげの隊長」として有名になった。
・ 羽鳥 ・・・ アナウンサー。
・ 吉永 ・・・ 評論家。ライター。
・ 玉川 ・・・ 木曜日の「そもそも総研」の担当者。
・ 長嶋 ・・・ 長嶋一茂氏。
・ 赤江(たまちゃん) ・・・ アナウンサー。

自分なりに整理ー7月17日「モーニングバード」に佐藤議員出演(徴兵制)(2)

2015-07-20 23:53:11 | 政治や経済
(3)の記事に載せたやりとりを見ながら、自分の考えを整理する。

安保法制は、これから参議院で審議される(のか? 私は、憲法に違反した法案は「無効」や「瑕疵」という言葉で終わらせるのが筋だと思っている。与党などが「対案を出せ」と言っているが。不法行為の提案への対案とは、何なのだろうか)。そこ(委員会)にはたぶんこの佐藤議員もいるだろう。事前に佐藤議員の言い分を知っておきたい。
また。佐藤議員といえば、ネットで公開されたアニメで安保法制を説明するキャラクターとして登場した人だ。だが、それは徴兵制について答える寸前で終わっているそうだ(第2弾に続くの?)。この点でも、今回の説明は興味深かった。

結論から言うと、こんな説明しか得られないなら参院での論議は無駄だ、と思った。佐藤議員の受け答え方法は、安倍首相とほぼ同じだ。以下、敬称略で失礼します。


<1. 吉永・玉川は、解釈改憲のせいで与党を信頼できなくなっている。佐藤にはそれを前提にした反論ができていない。>

集団的自衛権の行使を砂川判決を根拠に、解釈改憲で認めた。安保法制案そのものへの賛否はともかく、この経過を容認する人(特に法律家)は、本来、国や政治や社会にあまり興味がないのだと思う。なぜなら、判決文の文脈を無視した引用で正当化しているし、また、アメリカの指示を仰いだ判決だった(アメリカの公文書に明記されているのに、日本政府は認めていない)ので、純粋に法的な意味では存在意義があまりないのではないか(また、この判例を最優先している間は日本の主権はない、と言える)。
なのに、「今までの憲法の整合性から言っても、”これは認められる”っていうのが我々の解釈」(佐藤)と言ってしまう政府。「憲法18条ありますよね、苦役からの自由。これについてこれまでの過去も、いろんな答弁がある。それと比べて、”徴兵制をこれが解釈変更でできる”っていう、その論理がなければできない。だから絶対できない」(佐藤)と宣言されてもねえ・・・。
「今まで、政府は”集団的自衛権は行使できない”っていう憲法解釈を、ずっと自民党政権続けてきて。それを一内閣で変えたわけですよね。だから、今、自民党が”憲法解釈上徴兵制はできない”って言っても、それは、ある内閣、今じゃないですよ、将来の内閣が、”いや、できますよ”というふうに言った瞬間に変わってしまうってことを、みんな、恐れている。不安なんです。今まで”できない”って言ったことが、”できる”に変わったんだから。”じゃあ、徴兵制だって同じでしょ”って話ですよ」(玉川)を覆すことはできない。
それどころか。与党の顧問弁護士であるかのような西名誉教授(今回の安保法制を合憲と判定している)いわく、現行憲法下でも徴兵制は合憲であるとのこと(「NEWS23」だったかな?)。


<2.「徴兵制はハイテク化に適していない」という説>

この説は、佐藤の他にも有名無名匿名の人々が言っている。私は、6月(?)に当時思いつくだけの理由と共に、それでも徴兵制導入のメリットはある、と書いた(詳しい人間ではないので参考になるとは思えないが)。番組では、玉川が韓国軍(ハイテク化しているし徴兵制がある)を根拠に、「ハイテクていうことだけを理由にして”徴兵制に行われない”ってことは論理的に言えない」と述べた。

佐藤は答える。
i) 韓国軍は、国連軍を挟んで北朝鮮と対峙している所で「陸軍の昔ながらの陸対陸という部分もあるんです」。番組内の佐藤の発言内容からだけで考えれば、徴兵された兵士が、「穴を掘って、こう、鉄砲を撃つような時代の」ように「北朝鮮と、こう、向き合っていう形で」いるわけだ。
ii) 日本(佐藤は島国であることを盛んに言っていた)の自衛隊のようにハイテク化された部分に従事しているのは、韓国軍においては志願兵・・・ということ?

あいにく、この件は長嶋発言があったために途中で終わってしまった。

徴兵に対する訓練期間の短縮化なんて、その気になれば学校で予備の教育を導入しておけば済むような気もする。ナチスドイツでは、ヒトラー・ユーゲント達が歩兵・パイロットになるのに役に立ちそうな「遊び」「趣味」をやっていた、と読んだ記憶があるのだが(彼らは戦争末期に戦場に駆り出された)。
また。アメリカだったかなあ・・・? 何ヶ月か前に、ネット上で、四肢麻痺らしき人が頭につけた電極(?)を通して無人戦闘機(無人爆撃機だったかも)を操縦した、という記事を見かけた。真偽は知らない。が、いつか必ず実現する技術だと思う。


<3.「徴兵は苦役」と思わない社会の予感について>

「今の国民の感覚から言っても、自由とか権利を尊重する現憲法下でずっと教育を受けてた方々です。これを徴兵制ということについて、おそらく国民が同意を得るってことは限りませんし。」と言う佐藤は元自衛官。「自由とか権利を尊重する現憲法下でずっと教育を受けてた」世代である佐藤は、自衛隊に入ろうとする人としない人の違いは何と考えているのだろうか。興味深い。
佐藤自身は、意志を強く持ち続け・「システムで動きますから。単品で動くわけではないので、非常にこれ難しい」(佐藤)ハイテク化に対応してきた人だということになる。ここで、若者を自衛隊に体験入隊させて鍛える制度を口にした(現実味が出てきた昨今は、ほとんど聞かれなくなった構想)人達の感覚を思い出してみる。職業に貴賎はない、と言われるが。私は、自衛官を1つの理想像とする人達はわりといるような気がしている。
これに、「意志は作られる。短期間で軍国少年・軍国少女を作った歴史もありますから。そういう形って、いろんな国民感情に訴えれば、そういうことも可能になってくる」(吉永)を、自民党の憲法改正案や第2次安倍政権の教育政策と合わせて考えれば、いろいろ勘ぐりたくなるけどな・・・。
「ドイツは昔徴兵制度をとっていたり、スイスは徴兵制とっているんです、今も。そういう時にその人達に対して、そういうことについてそれを、徴兵制をね、苦役と言っていいのか」(佐藤による石破発言の説明)という価値観(目標?)についても、政府は国民にきっちり問いかけるべき。なし崩しはいけない(だけどやりそうな安倍政権)。


<4. ケンカへの加勢経験から、長嶋が集団的自衛権を危惧する>

「普通、ケンカをやってて、AとBがケンカしてて。”じゃあ、Aに、俺、加担するよ”ってやれば。Bからやられる確率は、絶対あるわけですよ。ケンカしてたら。個人レベルの話ですけど」(長嶋)。このような地に足のついた発想での質問に、玉川が「Bだけじゃないんですよ。BがCと集団的自衛権を結んでいれば、Cからも攻撃される可能性がある」と補足。「”実際にこれが通ったことによって、どうなるんだ”ってことの論議が、全くされてないのに。この問題が起きちゃってるから、我々国民はあわてふためくわけですよ。そこはどうですか」(長嶋)。
政治家や「安全保障の専門家」はこの点を鼻で笑う感じで受け流す。しかし、彼らが根拠にする抑止力に効果があるのは、「敵」がこちらに似た価値観などを持つ場合に限られるのではないか? 「抑止力」を呪文にするのはそろそろ時代遅れになっているような気が私はします。
呪文といえば、「私の息子も自衛官です」(佐藤)も役に立たない言葉だ。


<5. 日本を取り巻く環境の変化としての東シナ海>

「結局、これ、”アメリカとの約束とのために、中国の脅威を使って煽ってる” っていう側面はありませんか」(玉川)と思ってしまうのは、私が米ソ冷戦時代に生まれ育ったからだろう。当時、安倍晋三氏が政権を握っていたら、21世紀の日本はものすごく悲惨な状況になっていただろうな。・・・これは根拠薄弱な想像だが。
しかし。佐藤が東シナ海を強調すればするほど、冷めてしまう。それなら東シナ海に対応する、よりコンパクトな法案で充分なのではないか。さらに、去年の解釈改憲閣議決定の時から安倍首相が言い続けてきたのは、ホルムズ海峡。遠近が極端。
佐藤は、危機を裏付けるために、「隙間があるんです。そこをやっぱ埋めようっていうのは、自民党も民主党も維新の党も、みんな同じなんです」と2つの野党をあげた。しかし、民主党党内はその点で分かれていることを思えば、まさに「政治」だなあ、と。また、「維新の党は、集団的自衛権って言わないってだけで。やってることはおんなじだけど、これは集団とも個別とも言わないでやってる」(佐藤)って・・・。小林教授(維新案を「リーガル・チェック」した)は何なんだ。
それにしても、中国に関する情報って少ないなあ。いや、外国に関する情報はみんなあまりにも少ないかも。政府や関係者、数少ない研究者(多くは政府に近い)ばかりのような気がする。こういう状態であれこれ考えるのって不毛じゃないかなあ。

「”日本を取り巻く環境がどれだけ変わったのか” っていうことを、我々もっとね、説明しないと。出発点が違っているんです」(佐藤)。
日本には「危険」が他にもある。30年以上少子化は問題視されてきたが、大臣席が作られたものの効果はない(もう、廃止してもいいんじゃないでしょうか)。といって、出産数を増やすことへの代替案(移民の受け入れなど)もおろそかにされたままだ。安保については「切れ目のない」が延々と言われるが、原発事故については避難計画さえろくにないまま、原発再稼働だ。好きなこと・得意なことばかりに頑張られてもなあ・・・。
たぶん、いつの時代でも、真面目に働いている人なら、自分の専門分野に関わる危機を熱く語れる。佐藤議員も、前職が例えば医師だったら、バンデミック・臓器移植・救急医療などに対応すべく駆けずり回っていたのではないか。


<6.「自衛隊員のリスクは高まるか?」問題>

「新たな任務が増えたら、新たなリスクは生まれます。だけど、大事なことは、リスクがね、高まるか下がるかっていうのは。”全体として抑止が上がれば下がる”って見方があります」(佐藤)

これは、安倍政権が示す新たなリスク論の一例なのだ。
安保関係だけではない。ハイリスク・ハイリターン運用する年金資金を増やす判断でも使われている。

年金資金の運用をリスクを高めるのは確かだが、年金資金の枯渇というリスクは下がる。全体としてリスクを下げることになるのだ。
・・・というのが、担当官僚だか担当議員だかの説明だった(他ならぬ「そもそも総研」で知った)。

どうです? これ。
安倍政権オリジナルなのか、外国や金融業界などで流行している理論なのか。そろそろ、この理論に名前がついてもいい頃。

結局は、これまで細かく管理されてきた件を、どんぶり勘定に入れる話ではないか。「全体として」「総合的に」というのは、効果や責任を曖昧にする、物事を複雑化し曖昧にし先送りするやり方だ。
政府にとってひたすら有利な理論だと思う。

自衛隊員のリスクに戻って考える。「抑止論」を肯定する立場で(私は違うけど)。
自衛隊全体を1つの生命体と考えれば、全体として下がる。この安保法制の結果、リスクが高くなる自衛隊員はトカゲで言えば尻尾、自衛隊全体がトカゲってことだよね?