<1.「白を黒と言う」社会>
主義主張云々ではなく、安保法制案そのものに問題がある(<2.>に書く)。にも関わらずこの法案が通るということは、本当は白いものを黒だ、と日本全体で偽ること。
そいういうのって耐えられない。そういう職場の経験はある(辞めた)。みんなが「嘘だ」とわかっているのに職場内では「正しい」ということにして、その嘘を前提として暮らす。いろんな物事がねじれていく。その偽りを「外」にばれないように神経を使い、ばれそうになれば嘘を上塗りするしかない。そういう共通の目的から連帯感が生まれる・・・人達もいた。まさに、「一枚岩」。そうでない人達は、「嘘だ」を言って去るか、「正しい」とは言わないがそのせいで目立たないように口をつぐむしかない。そして、恥ずかしげなく「嘘」を「正しい」とする人達が権力を得ていく。
戦争も嫌だが、白を黒と言う社会になるのも嫌だ。「嫌」じゃなくて「危険」だな。国際的に変なことになる(日本が「北朝鮮みたいな国」扱いされる・・・もうされてる?)。もちろん、国内でも、社会が歪む。筋の通らない重大な変更が通用してしまうような社会で、何を道理に暮らせるだろうか?
安保法制案はおかしなものだし、成立させる手続きもおかしい。
おかしな手続きの基盤もおかしい。低い投票率・得票数と議席数の変てこな間柄を作り出す選挙制度。
また、おかしな基盤は、1票の価値が違憲または違憲状態とされた選挙で生まれた。
これで、白を黒と言わされる日本になったら、悲劇でも喜劇でもなく、くだらないだけだ。
<2. 安保法制案の方針そのものがおかしい>
長くならないようにできるだけ簡単に書く(そうできますように)。
政府は中東方面での例を繰り返してきた。一方、法案に賛成する人(評論家・学者・一般人が大半であろうネットでの発言者など)は中国と北朝鮮を念頭に置いている。
反対する人達(野党・評論家・学者・一般人が大半であろうネットでの発言者などをまとめてもまあ良さそう)は、法案が「中国と北朝鮮からの脅威」には有効でなさそうだし、その上、政府の説明通りなら、日本が中東での戦争に関わることによるデメリットが大きい。
(1) 政府の本来の目的は中国と北朝鮮の脅威への備えである場合。だが、中国への配慮のためにダミーとして中東をあげている。
・ 法案に賛成する多くの人達は、中国と北朝鮮を念頭に置いているのでは? そして、政府の意図を察している。
・ 中国などへの脅威の備えとして誤っている・中東への不要な敵対宣言である、と批判したい。
(2) 政府の本来の目的も中東など遠い地域での脅威に備えである場合。中国への対応はあまり意識していない。
・ 法案に賛成する人達は、原油輸入の観点で判断する例が多そう。また、もともと、中東にあまり興味がなさそう。
・ 中東への参戦(「後方支援」と呼ぶごまかしはいけない)は受け入れられない。原油輸入云々を理由にするなら広く深い議論が必要。なぜなら、やはり理由にならないと思える。
(3) 政府の本来の目的は、中国でも中東でもなく、対米協力のフリーハンドを得ることである場合。
・ 法案に賛成する人の中には、とにかくアメリカについていけば良い、という考えの人もいる。アメリカ(の一部の権力者達、というのが実態だと思うが)に従っていれば官民問わず仕事で有利、というのが日本の現状。なので、こういった人達は「自分の正しさは自分の人生の順調さで証明されている」という論理(プロテスタント?)でいる。というわけでアメリカの権力者と一蓮托生なのだから、自分の幸せのために頑張るだろう。方便のために中国でも中東でも、脅威の対象としていくらでも熱く語れるんだと思うわ。
・ まず外交政策から検討すべきだと思う。こういう法案を法理を踏みにじって可決したら、アメリカは日本を対等な国として扱わないだろう。ただ、「都合のいい国」でしかない。かつてのイランやイラクと同じだ。
政府からすれば、上の(1)~(3)つまり、中国・北朝鮮・中東・アメリカを曖昧にしておきたいのだろう。限定した法になれば、他に使う際に国会で議論しなければならないからだ。
安倍首相の口ぶりでは、曖昧にしておくことが抑止力を高める、というようだが。それこそ、北朝鮮が「いつどこに向けて核ミサイルを発射するのか」で多くの国を敵にしているのと同じ。だから日本から警戒されているわけだし。
安保法制が変だと思う理由は他の面からもいろいろ考えられる。書ききれないので、今回は「政府の本来の対象地域」でやめておく。
・・・が。
文字にしてみて驚いたのは、(3)の場合の特殊性。他国(中国や北朝鮮やイランなど)に言及することなく、ただただアメリカにとっての利益提供として語ることができる。つまり、何処かの国を敵視するという暗い面がなく、アメリカとの協力関係の強化という明るい言葉で説明できる。かつ、推進する人達は評価されるだけで、批判(例えば「中国との関係を悪化させた」)されにくい。
歴史の本をあまり読んだことがない。特に、植民地にされていたような国々の歴史は読んだことがないかも(最近1冊読んでます)。読んでいれば、こういう事態を把握するのに有効な知識が得られたのかもしれない。自分にいろいろな不備があるのはわかっていたが、参ったなあ・・・。