蜻蛉・莞爾の無責任漢字樂院

漢字に関する色々なことを発信して行きます。中国語も有りますよ!

第2回『無責任漢字樂院』 レギュラー学習会

2009年04月15日 | 今回の題材
【“大”の字に変えられてしまった“犬”】

<犬>
象形。犬の形。猟犬としての逞しい犬の形。
人と犬とを組み合わせた形 ⇒ 伏
・ 篆書、金文、甲骨文
・ その「丶」は、耳なのかもしれない!?


≪“大”に変えられた“犬”≫

<戻 戾>
会意。元の字は、戾。戸と犬とを組み合わせた形。
戸は、門の出入り口。
出入りする要所である家の出入り口に、犠牲の犬を
  埋めて祓い邪悪な霊の進入を妨げる ⇒ 戾 戻
  「もとる、いたる」の意味、

<誤釈>
他の字典には、「犬が戸ノ下を潜る時に身を捩じ曲げる」の意味に取る事もあるが、
犬のそのような動作の為に字は作らない。

日本国語では、「もどす、もどる」の意味


=派生=
<涙 涙>
形声。元の字は、涙。音符は、戾(レイ)。
「なみだ」の意味の元の字は、トウ眔で、目から涙が垂れている形の象形文字。


<器 器>
会意。元の字は、器。  シュウ(口を叕のように並べた形)と犬を組み合わせた形。
口は、サイ(口)で、祝詞を入れる器の形。
犬は、清めの為の犠牲として用いるもの。
儀礼の時に使用される清められらた「うつわ」 ⇒ 器

用例:器財(道具)・器械・「うつわ」:人の能力
参考(口が4つ):噐、嚚、囂 / 嘂、嚻


<突>
会意。元の字は、突。穴 と 犬 とを組み合わせた形。
犬は、犠牲(いけにえ)として仕える犬。
穴はこの字の場合は、竈の穴(焚き口)。

竈の穴へ犠牲の犬を供えて祭ること ⇒ 突 突
∴竈の神は、火の神である。

説文には、穴から犬が急に飛び出す、の意味するが、
 竈から煙を出す為の「ソウトツ竈突」をいう
  「つきでる、つく」の意味
  「にわか」の意味 ~ 突如・突然


<臭>
会意。元の字は、臭。自 と 犬 とを組み合わせた形。
自は、正面から見た鼻の形。

動物の中で臭覚が特に鋭い犬の鼻を表す ⇒ 臭 臭
「におい、におう、においをかぐ」の意味


<奨 奬>
形声。元の字は、奬(本来は、獎)。音符は、將。
將は、脚の付いた机(爿)の上に、手(寸)で肉を供えている形。下の大の部分は、犬。=犠牲の犬。

犠牲の犬を供え、神にすすめて祭ること ⇒ 獎
  肉を「すすめる」の意味
  すべて「すすめる」や「たすける」の意味に


<類>
会意。元の字は、類。
米 と 犬 と 頁 とを組み合わせた形。
頁は、儀礼の時の衣冠を整えた姿。

米と犠牲の犬を供え、礼装して拝む形  ⇒ 類
∴天を祭る祭りの名


【常用漢字の間違い】
「犬」を「大」に換えている
元の字:器・突・類・戻 → 器・突・類・戻



≪“犬”がそそまま見える漢字≫

<伏>
会意。人(イ) と 犬 とを組み合わせた形。
人と犬とを犠牲として墓室にの下に埋め、地中に潜む悪霊を祓うこと ⇒ 伏瘞:ふくえい
~地下に埋めること (瘞:うずめる)

秦代には、コ蠱(呪いに使う虫)の災いを祓う為、犬を犠牲として用いた。
  埋めるの意味から、「かくす、ふせる、ふす」の意味
  服と通じて「したがう」の意味 ~ 降伏・降服


<状 狀>
形声。元の字は、狀。音符は、ショウ爿。
爿はこの字の場合、ハンチク版築に使用する板の形。
∴ハンチク版築:基壇・城壁などの建築法で、板と板の間に入れた土をつき固めていく方法

ハンチク版築の時、犠牲の犬を供えて、建築物の規模や状況を定めた物 ⇒ 状
  ∴現在の状況や将来の予想を意味する語
  「ようす、ありさま、さま」の意味
  「かきつけ、ふだ」の意味にも
  顔形など人の姿の意味にも用いる


<献 獻>
会意。元は、獻。ケン鬳 と 犬 とを組み合わせた形。
説文によると、
祭祀の時、調理された犬ではなく、犠牲(いけにえ)の為に用いられた犬を、
羹(あつもの、熱いスープ)として捧げる ⇒ 獻・献


<獄>
会意。言と[ギン犬犬]とを組み合わせた形。
言は、もし、話したことが偽りならば、入れ墨の刑を受けますと、神に誓いをたてる言葉。
[ギン犬犬]は、訴訟の当事者双方から提出される犠牲(いけにえ)の犬。

犠牲の犬を差し出し神に宣誓して、訴訟が開始されることを表す言葉 ⇒ 獄
  ∴裁判の事
  裁判に負けて有罪になったものを収容する
  「ひとや(牢獄・獄舎)」をもいう。


<獣 獸>
会意。元の字は、獸。
嘼(キュウ) と 犬 とを組み合せた形。
嘼(キュウ)の上部は單(単)で、2本の飾り羽のついた楕円形の盾の形。
狩猟の時に使用した。

下部の口はサイで、狩猟に先立ち行う狩猟の成功を祈る儀礼⇒ 嘼
これに猟犬の犬を加える ⇒ 獸 獣
  のちに、「えもの、けもの」の意味に


<黙 默>
形声。 と 犬 とを組み合わせた形。音符は、。
犬を犠牲として埋めて喪に服すること ⇒ 默 黙
∴俗説で、犬が黙って人を追う事を言う為に、字を作ることは有り得ない。


<然>
会意。ゼン[然-灬]と 火(灬)とを組み合わせた形。
ゼン[然-灬]は、月(肉の省略形)と犬とを組み合わせた形。
犠牲(いえにえ)として供えられた犬の肉に、火(灬)を加えて焼く形 ⇒ 然
  「もえる(=肉がもえる)」の意味
  ∴犬の肉を焼く臭いは、天上の神が好まれると考えた


<派生>

<燃>
形声。音符は、然。
然は犠牲として供えれた犬の肉を焼く形。
燃の元の字。
然は、「もえる」の意味であるが、更に火を加えて形声の字の「燃」ができ、「もえる、やく」の意味に用いる。



≪常用漢字で消えてしまった“犬”≫

<壓 圧>
会意。元の字は、壓。厭 と 土 とを組み合わせた形。
厭(たつ、いとう)は、犬の骨付きの肉(冐)を厂(崖の形)の下に置き、土地のお祓いをする意味。(まじない)

土地に対して“呪い”を行い、呪いの力で土地に潜む邪気を押え、
土地を祓い清めること ⇒ 壓 圧
  「おさえる、しずめる」の意味
  ●「壓・圧」= 土地の霊を鎮圧する呪儀
  簡体字:「压」~元の「犬」の「丶」が残っている
  ●参考:「岳、嶽」


≪少し変形の“犬”≫
<<尤>>

<就>
会意。京 と 尤 とを組み合わせた形。
京は、出入り口がアーチ型の都の城門。
上に望楼(ものみやぐら)のある大きな城門 ⇒ 京観尤は、たお殪れている犬の形。犠牲と読み取る。
京観の築造が終わり落成式を行う時、犠牲の犬の血をふり注いで、
祓い清める儀礼を行うこと ⇒ 就
これによって京観の築造が成就するので、「なる」の意味
   ↓ 成就することによって事が始まるので
 「つく(ある地位や状態に身を置くこと)」の意味


<<犮>>

<抜 拔>
形声。元の字は、拔。音符は、犮。犮には、髮の意味。
髮の毛を手で「ぬく」こと ⇒ 拔 抜


<髪 髮>
形声。元の字は、髮。音符は、犮。
犬を犠牲として災いを祓うこと ⇒ 髮
髮は、その形声の字。「かみ。かみのけ」の意味
髟は、長い髪の毛がなび靡いている様子。


≪その他の「いぬ」≫
狗:中国語で用いる:gou3
干支にも使う 属狗=いぬ年生まれ
天狗:てんぐ、狐狗狸:こくり、こっくりさん


≪「戌:いぬ」に似ている≫
~戍~戌~戊~戉~ (戈)
戍:まもる
戌:いぬ  「戌は戍り神」~戌印妊婦帶
戊:つちのと~干支
戉:まさかり
越:戉+走
咸:戉+口
威:戉+女
烕:戉+女
歳(歲):戉+步(歩)



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