蜻蛉・莞爾の無責任漢字樂院

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【谷の系譜】

2009年04月16日 | 共通する部分が表すモノ
【谷の系譜】

部首でもある“谷”を考えてみたいと思います。
どんな解字になっているのでしょうか?
白川静先生の解釈を元にして解いてゆきたいと思います。


<谷>
象形。谷の入り口の形。
上部の“八”の形が重なってるものは、山並みが重なるように迫っている形。
下部は口ではなく、キョ(ムのような形:p.208参照:去と同じ感じ)のような形で、谷の入り口の形であるから、全体の形が“谷”を示している。

甲骨文は、谷の入り口のところにサイ(口)を置いている形があって、そこは聖所として祀られるのであろう。
全て水源のところは、聖所として祀られることが多い。

『上部の“八”の形が重なってるものは、山並み・・・』は、これらにも現れています。
兌:
サイ(口)を捧げて祈る人(儿)である兄(=巫祝・長男)に神が降り立ち、うっとりしている雰囲気。

尚:
天を望み祈りの為、窓辺に向かい、そこに神の気配が感じられる。
∴“尚”の上部は“ツ”に見えますが、正しくは、“小”のように、“向”に“八:神気”が降りた印とします。


白川先生の著作『常用字解』に載っている“谷”の関係する漢字をまとめてみました。
【まとめ】
谷 : (前述の通り)
欲 : 天から降り立ったお姿を見たいと思うこと
俗 : そのような一般的な信仰や儀礼のありかた
裕 : 衣裳の上に神気がゆたかに現れること
浴 : 廟に祈る為に禊(みそぎ)をすること
容 : 廟の中にサイを供えて祈り、そのサイ(口)の上に微かの現れた神の姿
溶 : 満ち溢れた水の中に全てが溶け込む状態

神が降り立つ気配を感じる所や、両側から山の切り立った所、の意味を表します。
切り立った所の事から「きわまる」と訓読します。

以下どちらに属するかの判断材料を示します。

卻 <神?>
キャク/カク
しりぞく(しりぞける) かえって <助字>
que4 0201/01172

郤 <神?>
ケキ/キャク 慣用:ゲキ
<村名>(すきま)
xi4 1322/12038

綌 <神?>
ケキ/キャク 慣用:ゲキ
<葛の粗い糸で織った布><帷子(かたびら)の類>
xi4 1028/08980

谺 <神?>
カ/ケ
こだま
xia1 1233/11200&11202

 <自然?>
*/*
(さこ)
*** 0280/01951

峪 <自然?>
ヨク/*
たに <谷あい> さこ
yu4 0395/02849

硲 <自然?>
*/*
はざま <たにあい><さこ>
*** 0936/08017
 
谸 <自然?>
セン/*
<山や谷の青いさま><道>
qian1 1233/11199

谹 <自然>
コウ/オウ
<ふかい><大声の形容>
hong2 1233/11201

谽 <自然>
カン/*
<谷の深く空虚なさま>
han1 1233/11204

谾 <自然>
①コウ/クウ ②ロウ/*
<谷のうつろなさま>
①②*** 1233/11206

豁 <?>
カツ/カチ
<ひらけ通じた谷>~たに ひらける ひろい
<むなしい><深い><さける>≪ひらく≫
huo1 (huo4 hua2) 1233/11207

谿 <自然>
ケイ/*
たに(=たにがわ)
xi1 1233/11208

豅 <自然>
①②ロウ/* 
<おおきく深い谷>
①long2 ②long4 1233/11210

逧 <両方あるかも?>
*/*
さこ <小さな谷>≪はざま≫
*** 1302/11871


【系列】
<容>~すべて<神>

①②ヨウ/ユウ
<熟語><熟語><不安>
①rong2 ②yong3 0113/00536


ヨウ/ユウ
<女性の字>
rong2 0341/02452


ヨウ/ユウ
<怒る><喜ぶ><満たす>
yong3 0499/03759


ヨウ/ユウ
(あこぎ=あこう・ガジュマル)
rong2 0691/05582


ヨウ/ユウ
(いがた)<いる=鋳> とかす=とける
rong2 0821/06816


ヨウ/ユウ
<熟語:玉の触れ合う様子・音>
rong2 0871/07306


???/???
=音義不詳=
??? 0965/08351


ヨウ/ユウ
<熟語:芙蓉:蓮の別名・はちす・はすの花>
<木の名:木芙蓉:ふよう>
rong2 1128/09989


ヨウ/ユウ
(いがた)<いる=鋳> とかす=とける
rong2 1362/12562


<卻>
腳[月卻] <神>
キャク/カク 唐:キャ
(あし)<すね><はぐ><量詞><役者>
jiao3 / jue2 0635/04956

<欲>
慾 <かみ>
ヨク/*
<ほしいと思う心、欲情><むさぼる>
yu4 0482/03523


【蜻蛉コラム】
『神が降り立つ気配を感じる所=神』や『両側から山の切り立った所=自然』にしても、どちらも敬うべき・畏れるべき対象になるものと思います。
今後、「谷口さん」と言う方に出会われましたら、神が宿って来たような気配を感じてください。そうすれば人間関係を円滑に運べると思います。



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