金沢発 あれやこれや

-ヒントをくれる存在に感謝しつつ物語をすすめます-

混乱の増すグリーン調達事情2

2011-06-08 00:42:51 | グリーン調達
<世の中を振り回した欧州RoHS指令>
法律は隅々まできちんと確認・検証されたうえで制定されるべき
で、決して世間をいたずらに惑してはなりませんが環境規制分野
はちょっと事情がちがうようです。

世界的に有名で、今は商社でも不使用証明の取り交しを行うまで
になった欧州のRoHS指令は、発表当初は6物質の含有を禁じ
ると発表しただけで詳細は未定部分をかなり残してたと記憶して
います。

いまから5年前、2006年7月に発効した欧州RoHS指令の
不足は次でした。
 ①法律適合にはどうあれば良いのかばくぜんとしてたので、
  何をもって証明すべきか企業自らが考えださないといけな
  かった。
 ②草案作成時、商業的、技術的都合で排除困難と見なし、適
  用除外する用途をステークホルダーを頼りに募ったが、P
  R不足でそれほど注目を集められず参加すくなかったため、
  適用除外用途を調査しきれなかった。
 ③含有禁止した6物質は自然界にある程度存在する物質もあ
  るため、分析結果が一律検出限界以下とならないことから、
  単純に分析で不使用証明可能にはつながらず。運用に無理
  があるとの意見がでて、発効日ちかくに不純物とみなして
  よい「しきい値」が追加発表された。
 ④当時、分析機関に依頼すると特に問題なく分析してもらえ
  たが、実は分析方法は遅れて検討されており、しかも再現
  性が低くてばらつきが大きく、標準検討委員会で一度否決
  されていた(IEC62321)。

①は、まだ分析して証明するなど想定になかった時代だったので
、しばらくはとりあえず6物質を含有してないと書いた不使用証
明書や不使用宣言書に責任者印を押した約束文を取り交してまし
た。今では記憶の彼方ですが、当時は
 <<意図的含有か非意図的含有か>>
の確認作業が最高に賑わった時で、特定の機能を期待して含有さ
せたのか真剣に調べましたが、分析データで証明する今から振り
返ると、検討の浅かった法律文言に踊らされてた訳で、にが笑い
するしかないです。
その後、ある企業が初めて分析データ添付を求めたことがきっか
けで完成品分析の試みが始まりました。

②の適用除外用途の掘り起こしは本当に不十分でした。法律発効
後もずっと検討が続けられ、定期的に発表し続けられました。事
前調査の薄っぺらさと段取りの悪さにおどろきましたが、草案作
成に参加した環境団体の意見が確かな裏づけも無いのに採用され
る様にも驚きました。外国の法律は言った者勝ちがあるのだなと
の感想を持ちました。

③は、設計者は部資材のメイン物質は知ってるが、微量含有物質
の知識はもたず、ベンダーの成分表になかった物質を分析で初め
て検出することが多かったと思います。社内環境部門からは含有
ゼロにできなければダメといわれつつも、ELVでしきい値は制
定されてたし、今の技術ではそう簡単に代替技術は作れそうにな
いのでにがにがしく思いつついずれ見直されるだろうと眺めてま
した。
JISで工業規格が決められており、成分調査自体それほど困り
ませんでしたが、海外のそれも化学系ベンダーは秘密が多く、分
析もしてくれずほとほと困り、自分で分析手配したことを覚えて
います。
RoHS指令を満たす工業規格は用意されなかったので微妙な含
有量の資材は判定に悩みましたが、当時は今に至るまでずっと分
析データ取得が続くなど想像できませんでした。
分析は必ず誤差があるのでしきい値からの余裕を考慮した安全地
帯が業界内にできあがっていきましたが、業界で全く足並みが整
わず各社バラバラで、なかには極端な余裕をとり今の技術では明
らかに実現困難なものも見かけました。特に調達で問題おきたと
聞いてないのでなんとかしたのでしょう。

④は、一番の落とし穴かもしれません。分析データ必須とされ、
全体を丸ごと分析することがまず始まったのですが、EU指令の
大前提は、
  <<製造完了した完成品を分析すること>>
です。製造前の素材をそれぞれ分析して寄せ集めても製造中の化
学変化、副材料から受けた影響は見つけられません。完成品を分
析するのが必須なので、技術的に互いに影響を残さず分離不可能
な場合はそれらを含めて均一部位とみなしてよいと書かれていま
す。ところが、日本人の多くは法律の日本語訳にある均一部位を
100%ピュアで均一な材料からなるものと受け取り、それらを
分析しようとしました。しかしながら完成品を分解するのは技
術的・コスト的にペイしないので、素材原料まで遡って分析する
会社が増えました。手間は大幅に簡略されるのですが、製品の人
体リスクを検証する方法とみなせるだろうかと思います。
その後日本人の勤勉性が更なる方向に向かわせて、部位ごと、特
にめっき層は鉛を含むので個別に分析するように要求する得意先
が現れます。当時日本に説明にきたEU関係者はめっき層まで個
別に分析しなくてもいいと言ってました。めっき層はとても薄く
製造直後から隣りあった面の成分が影響しあいます。実際にめっ
き中の鉛が人体や環境へ及ぼすリスクを全リスクのなかでてんび
んにかけて無理のない扱いをしてほしいものです(前述の素材原
料だけ分析する方式だと鉛はめっき液にあるので死角になる恐れ
あり)

ここまでのもんもんとした展開を一挙に後ろ投げする事実が分析
にはあります。RoHS指令の標準推奨分析方法を定めたIEC
62321には、6価クロムとPBDEの標準分析方法はありま
せん。参考分析方法の紹介しか載ってません。
世界の有名分析機関に同じ試料を送り分析してみた結果、分析結
果に大きなズレが認められ、とても標準分析方法とみなすことが
できず、参考にできる分析方法としてつけられるに終わりました。
つまり6価クロムとPBDEは分析しても結果のバラツキ大きく
精密な評価にはむきません。
その結論がでたのが2008年11月末と、RoHS指令発効か
ら丸2年過ぎた時点という、各社の確認作業がほぼ終了した頃で
、なんとも小ばかにした発表でした。分析方法に問題を抱える一
方で、この頃から部位別分析の要求が本格化していきます。

とある企業が受入れ検査で6価クロムとPBDEを残りの4物質
と同じ判定誤差で扱ってるのを見つけて、あなたがもし審査する
立場だったら何故同水準の計算方法を適用してるのか理由を聞い
てみたらいいと思います。

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