中国監視船が領海侵犯 政治空白期を突く
日本経済新聞2011/8/24 19:39
中国の漁業監視船が24日、沖縄県の尖閣諸島近くの領海内に侵入した。日本政府は外交ルートを通じ抗議したが、中国側は領有権を主張した。海洋権益を確保するための既成事実を作る中国側の思惑がうかがえる。危機管理対応が鈍くなる政権移行期の政治空白を突かれた。
海上保安庁が視認したのは漁業監視船2隻。早朝に久場島周辺の領海内に入り、海保が無線で警告すると「中国管轄海域で正常な法執行をしている」と反論。領海の外に出てからも夕方まで付近にとどまり、領海線に沿って時計回りに航行を続けた。
中国船による領海侵入は2010年9月に久場島周辺で海保巡視船と中国漁船が衝突した事件が起きてから初めて。この際は民間船だった。中国公船としては08年12月に海洋調査船が魚釣島周辺に侵入したとき以来となる。
尖閣諸島は歴史的にも国際法上も日本固有の領土で、領有権問題は存在しない。中国と台湾はそれぞれ領有権を主張し、食い違っている。中国とは東シナ海のガス田開発で長く対立が続き、08年の共同開発合意後も具体的な進展がない。
佐々江賢一郎外務次官は中国の程永華駐日大使に「事態は非常に深刻で、極めて遺憾だ」と伝えた。枝野幸男官房長官は記者会見で「中国側に適切な対応を求めたい」と語った。菅直人首相ら政権幹部が対応を協議する場面はなかった。
29日の民主党代表選を控え、危機管理の司令塔となる首相官邸の動きは鈍くなっている。前原誠司前外相を推す仙谷由人官房副長官は党内の多数派形成に労力を割いている。首相自身も退陣記者会見に向けた準備に専らの関心がある。
10年9月の中国漁船衝突事件は菅首相と小沢一郎元代表が争った代表選のさなかに起こった。漁船船長を逮捕しながら反発を受けて釈放したり、海保から衝突映像が流出したりするなど政府対応が批判された。領海侵犯の対処で同じてつを踏む危険性がある。
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◆中国監視船、日本領海に侵入=2隻が初めて、尖閣周辺―海保
(時事通信社 - 08月24日 11:05)
海上保安庁によると、24日午前6時15分ごろ、沖縄・尖閣諸島にある久場島の北北東沖約30キロと33キロの日本の接続水域(領海周辺の約22~44キロ)を中国の漁業監視船2隻が航行しているのを海保巡視船が発見した。うち「漁政201」は同35分ごろ、「漁政31001」は同45分ごろ、日本領海に侵入した。
中国の漁業監視船の領海侵入は初めて。政府は同日午前、首相官邸内の危機管理センターに情報連絡室を設置した。
第11管区海上保安本部(那覇市)によると、巡視船は接続水域内で2隻の航行を確認した後、2隻に対して領海内から退去するよう無線を通じて警告。午前6時半ごろ、2隻のうちいずれかから無線で、「魚釣島その他周辺諸島は中国固有の領土だ。漁政は法にのっとり、中国管轄海域において正当な公務を行っている」と返答があったという。
2隻は午前7時10分ごろ、領海を出たが、漁政201は同40分ごろ再び侵入し、約7分後に離れた。
いずれも午前8時15分現在、久場島の東約27キロの接続水域を領海線に沿うように1列で航行し、南に航行。海保は巡視船と航空機で領海内に入らないよう警告している。
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決断できない政府を批判 外交ジャーナリスト手嶋龍一さんが苫小牧で講演会
苫小牧民報社 2011年8月24日水曜日
(2011年 8/23)
苫小牧市民塾(苫小牧市教委主催)が19日、市文化交流センターで開かれ、本道出身の外交ジャーナリストで作家、手嶋龍一さんが「世界の中の北海道を考える」をテーマに講演した。国際情勢の中での国の課題を例証し、「今が、日本の在り方を真剣に考える時機」と話した。
手嶋さんは、ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土を訪れ、尖閣諸島沖では中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した2010年を「近隣諸国の圧力が強まった年」と述べた。「政府の外交力の弱さと、基地問題で日米の同盟関係が危うくなった」ことを背景に挙げ、「沖縄基地問題を先送りした政府の責任は重い」と主張した。
また、直近の国際情勢や大震災に引き続き起きた原子力災害の中で、「日本政府は重大な問題に対する決断ができない」と批判。「政府の在り方を、国民が真剣に考えなければならない」と呼び掛けた。
市婦人団体連絡協議会の共催。約260人の市民が集まった。
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