中国:日本人3死刑囚、家族と面会 執行通告日、中国政府が許可
【北京・浦松丈二】中国遼寧省高級人民法院(高裁)は8日午前、麻薬密輸罪で死刑判決が確定した武田輝夫(67)=名古屋市▽鵜飼博徳(48)=岐阜県▽森勝男(67)=福島県=の3死刑囚に家族らとの面会を許可した。
面会はそれぞれが収監されている武田、鵜飼の両死刑囚は大連市看守所で、森死刑囚は瀋陽市看守所で始まったとみられる。現地の情報によると、家族らを乗せた車が看守所に入るのが確認された。
中国政府は1日、3死刑囚の刑を8日にあたる「7日後」に執行すると日本政府に通告していた。同法院が6日に死刑を執行した赤野光信元死刑囚(65)=大阪府=も通告日に家族らとの面会が認められ、刑執行が1日延期されていた。
3人は03年から04年にかけて、覚せい剤を所持しているところを拘束され、武田、鵜飼両死刑囚は07年8月、森死刑囚は同年10月に死刑判決が確定した。
武田死刑囚は95年に東京都八王子市で3人が射殺された事件の情報を知っているとみて、警視庁が昨年9月に捜査員を大連に派遣し、武田、鵜飼両死刑囚から事情聴取した。
毎日新聞 2010年4月8日 東京夕刊
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中国:麻薬密輸罪、日本人の死刑執行 日本政府は懸念どまり 関係悪化を避ける
<分析>
中国で麻薬密輸罪による死刑判決が確定していた赤野光信死刑囚(65)=大阪府出身=の刑が6日、大連市看守所で執行された。中国での日本人の死刑執行は1972年の日中国交正常化以降初めて。中国は、さらに日本人死刑囚3人の刑執行を予定している。日本政府は「刑が重すぎる」と懸念を表明しているが、中国側は薬物犯罪には厳罰で臨む姿勢を崩していない。【隅俊之、吉永康朗、大連(中国遼寧省)浦松丈二】
◇昨年12月、廃止国・英は猛反発
中国では、09年12月に麻薬密輸罪で死刑が確定した英国人男性(53)にも刑が執行されている。ブラウン英首相はこの時、「最大限に強い言葉で非難する」と即座に反発。ロンドンの中国大使館前で抗議集会が開かれ、英メディアも中国に批判的な報道を繰り広げた。
一方、鳩山由紀夫首相は6日、首相官邸で記者団に、「残念だ。(日中関係に)影響が出ないように国民も冷静に努めていただきたい」と表明。岡田克也外相も「これ以上のことはないと思うが、すでに(中国の程永華駐日)大使を呼び、懸念を伝えてある」と述べた。
外相の「懸念」表明には、中国をけん制する姿勢を国内に見せることで対中感情の悪化を避け、中国にも日本側への配慮を促す狙いがあった。外務省筋は「日中関係は、まだまだ脆弱(ぜいじゃく)なので、ささいなことでも関係悪化の火種になる」と話し、事態を荒立てたくないという本音をうかがわせる。
背景にあるのは、ロシアを含めた主要国すべてが死刑を廃止した欧州と存続させている日本の温度差。民主主義国同士でも死刑廃止国かどうかで対応は大きな差を見せており、主要国で日本以外に唯一死刑を残している米国では死刑廃止国であるメキシコとの間でのあつれきが目立っている。
02年には、メキシコ人死刑囚(33)の刑執行を停止してほしいという要請を拒否されたとして、ブッシュ米大統領(当時)の招待を受けたフォックス・メキシコ大統領(同)が訪米を拒否する外交問題に発展した。
◇アジアの16カ国、薬物犯罪で極刑
覚せい剤を密輸した場合、日本では覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)に問われ、最高刑は無期懲役と罰金1000万円。被告の役割や覚せい剤の分量で量刑は違うが、最近では、千葉地裁で3月、覚せい剤約2・8キロの密輸の罪に問われたシンガポール人の男に懲役9年▽福岡地裁で2月、覚せい剤約1・1キロの密輸などに問われた元暴力団組員に懲役13年--などの判決例がある。分量1キロが死刑の目安という中国の量刑は、日本と比べて格段に重い。
だが、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」によると、アジアでは、中国やシンガポール、マレーシアなど計16カ国が薬物犯罪で死刑を科している。マレーシアでは、東京都の元看護師(35)が覚せい剤4・6キロを持ち込んだとして起訴されており、有罪なら法定刑は死刑だけだ。
ただ、中国の死刑には「あまりにも多すぎる」という批判が強い。中国では薬物犯罪以外にも、スクラップとして売るために電線を盗んで死刑になることも多いのだ。停電による大きな社会的損失を重視した結果だというが、国際的基準からは疑問が残る。
アムネスティが3月に発表した報告書によると、中国の昨年の死刑執行は少なくとも1000人。中国以外で100人を超えたのはイラン(388人)とイラク(120人)だけだった。
◇「北朝鮮製」の流入急増
【大連・浦松丈二】中国が赤野死刑囚の死刑を執行した背景には、中国東北地方(遼寧、吉林、黒竜江の各省)で暗躍する覚せい剤密輸組織を寸断し、北朝鮮から中国への覚せい剤流入ルートを先細りさせる狙いがあるとみられている。
中国捜査当局によると、赤野死刑囚は06年4月初めに中国の大連を訪れた直後から「容疑者」としてマークされていた。北朝鮮から持ち込まれた覚せい剤609グラムを押収した際、売却先の一人として赤野死刑囚の名前が浮かんだからだ。当時、赤野死刑囚は覚せい剤を探して北朝鮮国境の遼寧省丹東や吉林省延辺朝鮮族自治州延吉などを訪ねた。最終的に中国人の協力で仕入れ、06年9月に大連の空港から仲間の日本人と持ち出そうとして共に逮捕された。捜査当局がこの2人から押収した覚せい剤は純度95%。粗悪な中国製ではなく、国営企業の厳格な管理下で製造される北朝鮮製とみられる。中国で出回る量が急増しており、友好国・中国の捜査当局が北朝鮮の容疑者逮捕を発表し、警告を発したこともある。
こうした背景には日本が北朝鮮からの日本向け海上密輸ルートの監視を強化した事情がある。01年に鹿児島県奄美大島沖で北朝鮮工作船と日本の海上保安庁の巡視船との銃撃事件が発生し、工作船が覚せい剤を密輸していたことが発覚。新たに陸続きの中国経由ルートが開拓されたのだ。
消息筋によると、中国当局は大連に本社を置く北朝鮮のIT企業に目を付けている。中国の雲南省昆明や新疆ウイグル自治区ウルムチなどに支社を置き、密輸組織と接触していると疑っている。
一方、中国が8日にも麻薬密輸罪で刑を執行する3人の中で、名古屋市の武田輝夫死刑囚(67)は日本側密売組織の主犯格とみられ、03年6月に大連で仕入れた約5キロの覚せい剤を日本人5人の「運び屋」に指示し密輸しようとした。
毎日新聞 2010年4月7日 東京朝刊
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〈来栖の独白〉
中国政府が麻薬密輸の罪で死刑判決が確定した4名の日本人男性に対する死刑執行を通告し、赤野光信死刑囚が4月6日、刑執行された。
殺人はおろか、傷害を負わせたのでもない麻薬密輸の罪での死刑は重過ぎると感じる向きも多いかもしれないが、私は、麻薬犯罪は重罪であると考える。麻薬は心身を損ねさせ、廃人にしかねない。家庭を崩壊させる。だから死刑でよい、とは言わないけれども、罪は重い。
麻薬関連犯罪の量刑であるが、アジア諸国には死刑判決が多いと聞く。
中国については、イギリスとの間にアヘン戦争という屈辱的な経験がある。英国は貿易赤字を解消するために中国にアヘンを売った。中国は対英戦争に敗れ、香港を奪われた。中国にとってアヘンは国を失わせた忌まわしい記憶であり、現在麻薬密輸が急増していることも勘案するなら、当局が麻薬について強い危機感を抱くのも理解できる。中国にとって麻薬は、国の存亡を左右するほどの火種であるのかも知れない。麻薬密輸罪を死刑に定める中国を見て、当局の国を憂う姿を垣間見たように思った。
ところで話が甚だしく逸れるが、「国の存亡」と書いて、私は不意に一人の男の顔を想い出す。麻原彰晃こと松本智津夫死刑囚である。1995年5月16日、地下鉄サリン事件の主犯として逮捕された。警察車輌に乗せられ護送される麻原氏をテレビの画面で見たとき、近いうちにどこかで死刑執行があると強く予感した。東京拘置所あたりで直ぐにやる、と自分の予感に胸が騒いだ。果たして、10日後の95年5月26日、東京・大阪に於ける計3名に対する刑執行であった。
死刑制度は何のために存置されているのか、死刑制度は国家転覆(遡れば大逆)を防ぎ、謀議に加わった全員を根こそぎ処罰するためにあったのではないか。警察車輌の麻原氏から受けた強い予感は、そういった私自身の考え方に根ざしていたと思う。
オウム真理教教団による地下鉄サリン事件は、国家転覆を狙ったテロであった。首都(国の機能の中枢)で実行された。危機管理が求められた。それら報道に接して私が想起したものは、大逆事件であった。
だが地下鉄サリン事件は多くの市民を巻き込み、死者を含めて深甚な被害を生んで、大量殺人事件として扱われた。被害者が大きく声を上げるようになった。死刑制度が、極めて感情的な部分を担保するものとして期待されるようになった。私的個人的な償いの手段という色合いを濃くしていった。オウムの裁判が長引くことへの批判とも相俟って、司法制度改革(裁判員制度導入)に拍車がかかり、裁判への被害者参加も進んだ。オウムの被告人全員が死刑で確定するのは間違いないだろう。そうでなくては国民が納得しないだろう(ただ一人林郁夫受刑者は捜査協力という功労により例外である)。
横道のおしゃべりが長くなってしまった。
「いのちを守りたい」と鳩山首相は言ったが、日本政府は赤野光信死刑囚を守ってやらなかった。武田輝夫・鵜飼博徳・森勝男の3死刑囚を守る気持もないようだ。
麻薬密輸の罪は重大だが、中国の法手続きには疑問も残るのに何ら実質的な抗議も救済もしようとしなかった。中国へは文句を言わず穏便に済ませることが、政権維持に繋がる。政権のためには天皇さんをさえ差し出したではないか。昨年12月の習近平国家副主席との会見である。天皇さんさえそのようであるなら、民草、ましてや犯罪者が踏み叩かれるのは、いたしかたもあるまい。
4名は日本という祖国から捨てられ、異郷で孤独のうちに死ぬだろう。
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◇ 中国、邦人に死刑執行(通告)。日本も中国人《陳徳通死刑囚》に2009/07/28死刑執行している 2010-04-05
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◇ 「いい加減な裁判でたまらぬ」《中国》赤野光信死刑囚が不満 2010-04-02
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◇ 中国の邦人死刑執行通告~「日本はどんなことでも中国の言うことを聞く」 2010-04-02
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◇ 小沢一郎 天皇観の異様 「日本はどんなことでも中国の言うことを聞く」対米従属から対中従属へ 2010-01-16
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失業者がお金に困って運びやをやってしまったと言うのであるならば、多少の温情も浮かぶでしょうが、所詮はやくざ、その点をもっと考えるべきです。彼らの犯罪は確信犯であって、半ば、半分棺おけに足を突っ込みながらの覚悟の反社会的傍迷惑犯罪なのですから、同情の余地はありません。
彼らにまで普通の人権は及びません・・・・・大体が、危険を承知の、覚悟を決めた自殺、自滅まがいの行為なのです。
彼らの犯罪成功による普通の市民の被害を想定すれば、とても許すことはできない筈です。