封印された市橋達也容疑者の両親会見 篠田博之の「メディアウォッチ」2009/12/5

2009-12-09 | 死刑/重刑/生命犯

 篠田博之の「メディアウォッチ」
封印された市橋容疑者の両親会見

     

    ↑ フライデー12月4日号
 先週は『創』の校了で忙しくてトピをあげ損ねたため、少し遅くなったが書いておこう。
 写真は『フライデー』12月4日号だが、市橋達也容疑者の両親が11月10日夜に行った会見の写真がご覧のように顔一面モザイクだ。
 普段、容疑者の関係者の写真を無断で隠し撮りすることもある同誌が、ここまでやること自体、異様な感じさえ受ける。
 実は、この市橋容疑者逮捕の夜の両親の会見映像、当日テレビで一斉に流されたので覚えている人も多いと思うが、同じ映像が今は使えない。
 通信社の配信サービスからもこの写真は排除されている。
 なぜかといえば、容易に想像できると思うが、この会見の直後から両親のもとにバッシングの嵐が吹き荒れ、母親が「恐ろしくて外にも出られなくなった。正直、これから生きていけるかどうかわからない」(夕刊紙へのコメント)
 という状態になってしまったようなのだ。
 実際、両親は翌日の11日にも会見を行ったのだが、顔は映さないだけでなく、音声さえ変えるという状況だった。
 『フライデー』も前週の11月27日号には両親の会見の写真をモザイクなしで掲載していた。
 そして記事で「逮捕後の『親バカ』」「この親にしてこの息子あり」などと罵倒していた。
 恐らく10日に会見に応じた時にも、両親は覚悟をもって臨んだはずだ。顔を出して、言うべきことははっきり言う。
 そういう意思が感じられた会見だった。それが1日で一変したというのは、世間から加えられた風圧がいかに大きかったかということだ。
 その両親の会見についての賛否の声を特集したのは『女性セブン』12月3日号だ。見出しは「あなたはどう思う? 市橋容疑者 医師両親会見への疑問」。
 賛否はっきり意見が分かれた中で、賛意を表明したのは香山リカさんだ。
 「医師という職業からも、親の立場からも、説明責任を果たさなければという気持ちが強かったのでは。カメラの前で加害者側が話すことは相当の覚悟と決意を必要とします。あえて会見したことは評価すべきです」
 しかし「会見への疑問」という見出しからもわかる通り、この記事でも大半のコメントは反対意見だ。例えば、神戸連続殺傷事件の被害者家族のひとりはこうコメントしている。「謝ってはおられるんですが、なにか息子を突き放していて、本当に"申し訳ない"という思いが届いてこない」
 教育評論家の尾木直樹さんもこうだ。
 「視聴者は加害者の親に"つらいだろうな"という姿を期待しています。今回の会見は、見ているほうがつらくなる感じはなかった。これだけ世間を騒がせて国際問題にまでなっているのに、そこにある種の"軽さ"を感じました」「市橋容疑者の両親は理路整然としていたけれど、感情が見えなかった。いっていることは正しいのだろうけれど、官僚的、事務的な印象で心を打たなかった。多くの人はそこに違和感を感じたのでしょう。子育てや教育では、泣き崩れてしまうような、親のまっすぐな姿勢も必要なんです」
 11日の両親の会見が顔を映さずに行われたこともネットでは新たな議論になっているようだ。
 会見内容に賛否があること自体は悪いことではない。しかし、当事者が「恐ろしくて外にも出られなくなった」とまでおびえる事態には考え込まざるを得ない。
 思い出すのはイラク人質事件の時の人質家族へのバッシングだ。
 市橋容疑者の両親のコメントが「事務的な印象」を受けたのは、たぶん彼らが基本的に息子と自分たちは別の人格だというスタンスで語っていたからだろう。
 でも日本社会はいまだにそれを許さないということなのだろう。容疑者憎しのあまり、親に対しても罵倒する。親が涙ながらに土下座して謝らないと許さない。
 そういう空気が日本社会では支配的だということなのだろうか。
 投稿者: 篠田博之 日時: 2009年12月 5日 10:14

 ◎上記事は[ 篠田博之の「メディアウォッチ」]からの転載・引用です
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事件後、市橋達也受刑者の両親とも医師を辞め、姉も嫁ぎ先から離縁 『週刊女性』2015/5/12・19号 
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“加害者”家族の現実 失われる日常、自殺、退職、執拗な脅迫…広く親戚にまで影響 
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