日中間に領土問題は存在しないとして不作為を続ける時代は終わった 岡本行夫

2012-11-01 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

尖閣不作為の時代の終わり 反日機運が強い中国の若者たち
産経新聞2012/10/31 18:53更新
【人界観望楼】MITシニアフェロー・岡本行夫
 久しぶりのボストンで驚くのは中国人の多さだ。私がいるMIT(マサチューセッツ工科大学)にも、圧倒的な数の中国人学生がいる。来春ここで尖閣問題について大きなシンポジウムが開かれる。聴衆の大部分は中国人留学生になるという。だから不愉快な目にあうことは覚悟してくれと主催者から言われた。尖閣についての中国の大キャンペーンが始まっている。しかし日本は、(1)日中間に領土問題は存在しない(2)中国を刺激しない、という方針のもとで何もしてこなかった。
 中国は、尖閣諸島を中国領土に編入するという「領海法」を1992年に制定した。国有化を撤回しろと日本に要求する前に、中国はこの法律から尖閣諸島の名前を削除すべきである。不思議なことに、当時も、今も、日本政府はこの中国法に対して強い抗議を行っていない。領土問題は存在しないのだから中国にいちいちに対応する必要はないということなら、間違いだ。それが今の中国の大攻勢を許している。
 「領海法」は、尖閣だけでなく、南シナ海の4つの諸島群も全て中国領土として編入してしまった。日本政府は、中国と争っている南シナ海沿岸諸国とも共同歩調をとっていくべきだ。
 貧富の差が拡大する中国国内には不満が充満している。若者が抗議を表明できるのは「愛国無罪」の反日デモだ。中国政府は国家統合のためにも、尖閣を使い続けるだろう。根底にあるのは、天安門事件以降、特に1994年からの江沢民の「愛国教育」を受けてきた若者たちの存在だ。この「憤青」、つまり「怒れる若者たち」には、ナショナリズムと反日機運が強い。教育によって憎しみの再生産が行われ、世代が若くなるほど反日感情が強い。反日教育や反日ドラマなどが変わらない限り、何十年経っても事態は好転しない。
 大切なことが2つある。第1は、尖閣が世界の関心事となっている今、国際世論へのPRが重要になっていることだ。堂々たる態度を世界に見せるべきだ。日本は竹島について国際司法裁への付託を主張しているのだから尖閣についても中国が要求すれば国際司法裁付託を受け入れると宣言すべきだろう。どうせ負けるはずのない案件だ。「日本は紛争を国際調停に委ね、裁定に従う国家である」と世界に印象づけることは日本の味方を増やすだろう。
 第2は、実効支配に些(いささ)かのスキもあってはならないことだ。米国に対して、尖閣領有についての日本支持を期待しても無理だ。アルゼンチンと、米国の緊密な同盟国イギリスが対立するフォークランド紛争でも、米国は中立の立場をとっている。しかし「日本国の施政の下にある領域における…」と地理的範囲を定める日米安保条約の下では、米国は「尖閣は(日本の施政権下にあるから)日米安保条約の対象」との立場を堅持せざるを得ない。中国が領海侵犯を繰り返すのは尖閣への日本の実効支配と施政権が有効ではないことを米国にも印象づけるためだろう。中国のたくらみを防ぐには海上保安庁の体制の抜本的強化が必要だ。国交省の予算枠で処理するのではなく、そのための補正予算を組むべきだ。
 日中間に領土問題は存在しないとして不作為を続ける時代は終わった。(おかもと ゆきお) * リンクは来栖


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