北朝鮮はシリアの同志、オバマ政権の弱腰で増長 今後、自国の化学兵器を米との交渉に利用 古森 義久

2013-09-18 | 国際

「国際激流と日本」北朝鮮はシリアの同志、オバマ政権の「弱腰」でますます増長?
 JBpress2013.09.18(水) 古森 義久
 米国のシリアへの軍事攻撃宣言を巡る混迷の展開は、北朝鮮という意外な存在に意外なスポットライトを浴びせることとなった。「オバマ大統領の右往左往したシリアへの対応は、北朝鮮に自信を与える効果があった」という見解が語られるようになったのだ。そうなると北朝鮮はこれまでよりも強気な対外姿勢を取ると見られ、わが日本にも影響が及ぶことになる。
*非人道的なアサド政権の行動が不問の形に
 オバマ大統領のシリア軍事攻撃の宣言は二転三転し、意外な結末を迎えた。結末といっても、まだ変転の可能性はある。だが、米国による軍事攻撃はまず起きないだろう。
 その意味ではこの駆け引きでの敗者は米国であり、勝者はシリアとロシアと言えそうだ。そしてその背後で北朝鮮がにんまりするという構図が浮かんでくるのである。
 まずオバマ大統領は、シリア政権軍が大量破壊兵器である化学兵器を使用したことは国際規範や人道主義に反する行為だとして軍事攻撃での懲罰を加えると宣言した。2013年夏、オバマ大統領はシリア情勢について、アサド政権が大量破壊兵器を使えば、米国はその行動を「レッドライン(赤い線)」を越えたと見なし、断固たる懲罰行動を取ると言い切っていた。その後にアサド政権軍が実際に化学兵器を使ったという情報を得て、その誓約を実行に移さざるを得ないと判断したのだろう。
 ところが同大統領はすぐに態度を変え、米国議会にその是非を諮ると言明した。米国の憲法上、この種の軍事力行使に際して、大統領は米軍の最高司令官として、また行政府の長として、特に議会の意向を問う必要はないのにもかかわらず、だ。
 だが、米国の議会も世論も軍事力行使には反対が多かった。米国のこの種の実力行動にはいつも同調するイギリスも議会も「ノー」の表決を下した。
 オバマ大統領は振り上げたこぶしをどうするかの判断に迫られた。そんな状況の中でロシアのプーチン大統領は米国の動きに反対し、「シリア政府が化学兵器を使った証拠もない」とまで明言した。G20という国際舞台で米国大統領の言葉を正面から否定してみせたのだ。
 そんなところに突然ロシア側から「シリアの化学兵器を国際管理下で廃棄する」という提案がなされた。シリアのアサド大統領もすぐに同意した。それまで化学兵器の保有さえ認めていなかったアサド大統領が、保有していることを前提に廃棄に応じたのである。
 米国の巡航ミサイルを自国の軍事拠点に撃ち込まれることを避けられるのなら、「廃棄」という姿勢を見せるのもそれほど高い代償ではない、という計算だろう。本当の廃棄かどうか、内戦下のシリアでの検証はとてつもない難作業となる。
 9月14日にはこのロシア提案に米国政府も同意して、シリアの化学兵器問題は外交交渉や国連の調停に委ねられることになった。
 これにより、今回の騒ぎのそもそもの原因であるシリア軍による化学兵器を使った自国民1400人の大量殺戮という蛮行は、当面、懲罰を受けないままとなった。オバマ大統領が「決して許さない」と断言した非人道的なアサド政権の行動は不問の形となってしまったのだ。
 アサド政権がいくら化学兵器を放棄するからといって、こうした事態の展開は、オバマ大統領の当初の誓約からすれば決して許容できる範囲ではないだろう。ピストルを使って殺人を犯した犯人が、そのピストルを放棄さえすれば殺人は責められない、という状況を考えれば、いまのシリアの事態のいびつさが分かる。
*大量破壊兵器を開発する北朝鮮とシリア
 アメリカがこうした外交交渉に応じるのは、やはりオバマ大統領が最初から軍事力行使にためらいがちだったからだろう。
 「軍事忌避」「交渉優先」というのは、国際問題への対応としてそれ自体は褒められてよい姿勢である。だが大量破壊兵器を使った大量虐殺という事態が起きてもなお、その責任をめぐって外交交渉をするだけということになれば、国際秩序はどうなるのか。犯罪的な行為への懲罰も報復も制裁も取られず、その実行について外交的な交渉を始める、というのであれば、暴力を振るう側が野放しに近い常態となる。
 アメリカのこうした態度の結果、どのような国が得をするのか。
 当のシリアや、その支援国のロシア、さらには米国が消極的かつ軟弱になると利益を受ける中国、という諸国の立場は割と分かりやすい。だが、意外なのは北朝鮮である。
 今回の外交展開で北朝鮮が利益を得る。そうした見解をオバマ政権の高官たちが述べている。
 ジョン・ケリー国務長官は「北朝鮮はシリア軍事攻撃を審議する米国議会の動きをじっと見つめ、同議会が曖昧な結果の審判を下すことを切望している」と語った。チャック・ヘーゲル国防長官も「北朝鮮は化学兵器の使用を禁じる国際規範が弱くなり、米国が消極的になると、より高圧的な対外姿勢を取るだろう」と述べた。
 他の米国政府高官たちも「シリアの大量破壊兵器使用に対して制裁を加えなければ、北朝鮮のように大量破壊兵器を開発する他の諸国にとって、軍事力で阻止されたり報復される恐れが減ることになる」と強調していた。オバマ政権は「北朝鮮を増長させないためにもシリアを攻撃せねばならない」と対外的に宣言していた。だから攻撃をしないとなると、北朝鮮が増長するというのは自然な理屈だろう。
 大量破壊兵器と言えば、核兵器を筆頭に化学兵器、細菌兵器である。現在、米国が問題視する大量破壊兵器の開発国家は、まず北朝鮮とイランである。両国とも核兵器の開発を急いでいることが明白となっているのだ。
 歴代の米国政府はオバマ政権も含めて、北朝鮮に対する「レッドライン」として、北が自国で完成させた核兵器そのもの、あるいは部品類を他国へ輸出することを挙げてきた。北朝鮮が核弾頭の小型化、軽量化に成功し、米国本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)に核弾頭を装備することを確実に達成したとなれば、これまたレッドラインを越えたこととする指針が最近では明確となっていた。
*今後、自国の化学兵器を米国との交渉に利用?
 北朝鮮にとってシリアは同志だと言える。北朝鮮とシリアは、米国政府による「テロ支援国家」に共に長年指定されていた。北朝鮮はブッシュ前政権の最終段階でその指定を解除されたが、シリアはなお指定されたままである。
 そのうえ、北朝鮮とシリアは大量破壊兵器をめぐる協力も緊密だった。シリアは北朝鮮の支援を得て、明らかに核兵器製造用と見られる原子炉を自国内に建設していた。その原子炉は2007年9月、イスラエル空軍の奇襲で破壊された。翌年4月に米国政府が空爆の前と後の証拠写真を公表したところ、間違いなく軍事用の核爆弾製造のための原子炉だったという。
 北朝鮮とシリアは化学兵器でも共通点があった。まず両国とも化学兵器を開発し、保有していた。そして化学兵器の貯蔵や使用を禁じる化学兵器禁止条約に両国とも加盟していなかった。シリアの保有する化学兵器は、すでに伝えられるように、ロシアだけでなく北朝鮮からも調達されていたという情報もある。
 このように北朝鮮とシリアは共にテロ支援国家の軌跡を有し、しかも大量破壊兵器の開発や保有に協力し合ってきた。このつながりを見ると、シリアがサリンを使って1400人を殺しても、物理的な制裁を何ひとつ加えることができず国際的な外交交渉にその対応を委ねるという米国の対応が北朝鮮に一種の安堵感を与えることは、論理の帰結だろう。北朝鮮はオバマ政権の弱腰を見極めたことにもなる。
 北朝鮮の今後の動きについては、ロシア外交官として北朝鮮に駐在した経験を持つ北朝鮮研究者のゲオルギ・トロラヤ氏が、米国の外交雑誌のサイト(9月12日付)に興味ある論文を発表した。
 「シリア危機と北朝鮮」と題する同論文で、トロラヤ氏はこう述べていた。「北朝鮮は、シリアが化学兵器を外交取引の材料として使い非常に大きな報償を得られそうになってきた状況を見て、今後、自国の化学兵器を米国との交渉に利用してくる確率が高い」
 いずれにしても、今回のシリアの化学兵器使用と米国の軍事攻撃保留の動きが北朝鮮をこれまでよりも強気にさせるという展望は、日本としても認識しておくべきだろう。
 *上記事の著作権は[JBpress]に帰属します
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シリア 北朝鮮からミサイル購入 2013-08-29 | 国際 
 シリア 北朝鮮からミサイル購入
 NHK NEWS WEB 8月29日4時14分
 シリアのアサド政権が、ことし春、北朝鮮から短距離ミサイルおよそ40基を購入したことが明らかになり、化学兵器を使ったとされる問題で欧米諸国から攻撃された場合、報復としてこのミサイルを使って隣国イスラエルを攻撃する可能性も排除できないとみて、アメリカなどが警戒を強めています。
 日本や韓国の外交筋がNHKに対して明らかにしたところによりますと、シリアが、ことしの春、射程100キロ余りの短距離ミサイルおよそ40基を北朝鮮から購入したのをアメリカ政府が確認したということです。
 ミサイルはいったんシリアの隣国レバノンまで貨物船で運ばれ、そこから、陸路でシリアに運び込まれたとみられています。
 アサド政権が化学兵器を使ったとされる問題で欧米諸国から攻撃を受けた場合、報復として、このミサイルでイスラエルを攻撃する可能性も排除できないとみて、アメリカなどが警戒を強めています。
 また、これとは別に、ことし4月には、リビア船籍の貨物船が北朝鮮からシリアに向けて、自動小銃やライフル銃など合わせて1400丁、それにガスマスクなどを運んだことも確認されたということです。
 シリアと北朝鮮は、以前から軍事面での結びつきが強いことで知られていますが、北朝鮮は国連安全保障理事会の制裁決議で軍事物資の輸出入を禁じられており、今回明らかになった取り引きは、いずれも安保理決議違反に当たるとみられます。
 *上記事の著作権は[NHK NEWS WEB]に帰属します
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『帝国の終焉 「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ』日高義樹著 2012/2/13第1刷発行 2012-10-02 | 読書 
p149~
  日本では、アメリカの軍事力が中国を封じ込めているので日本は安全だと信じられてきたが、情勢は逆転しつつある。中国国内の政治が不安定になれば、中国の新しい戦略が発動されて、日本を脅かす危険は十分にある。しかも中国だけでなく、北朝鮮も軍事力を強化している。ワシントンの軍事消息筋は、北朝鮮がすでに数十発の核弾頭を保有し、地対地ミサイルや小型艦艇に装備したミサイルで日本を攻撃する能力を持ったと見ている。
p150~
   北朝鮮はすでに述べたように、世界各国にノドン、テポドンといったミサイルを売り、核爆弾の材料である濃縮ウランの製造にも協力をしている。北朝鮮は、軍事技術の輸出国として莫大な資金を稼ぎ始めているが、その北朝鮮の仮想敵国はまぎれもなく日本である。北朝鮮は中国の政治的な支援を背景に、日本を攻撃できる能力を着実に高めている。
  中国と北朝鮮だけではない。いったんは崩壊したと見られるロシアが再びプーチン大統領のもとで軍事力を増強し、極東の軍事体制を強化している。
p151~
  ソビエトは共和国を手放し、ロシアと名を変えたが、冷戦が終わって資源争奪戦の時代に入るや、国内に大量に保有している石油や地下資源を売って経済力を手にし、それによって軍事力を強化し始めている。(略)
 ロシアは現在、石油や地下資源で稼いだ資金をもとに、新しい潜水艦やミサイルの開発に力を入れ、ヨーロッパではNATO軍に対抗する姿勢を取り始めている。2009年と10年には、日本海で新しい潜水艦の試験航海を行ったのをはじめ、偵察機や爆撃機を日本周辺に飛ばしている。
  ロシアもまた、極東における新たな軍事的脅威になりつつある。ロシアの究極の敵は国境をはさんだ中国といわれているが、海軍力では中国に勝るロシアが、日本列島を越えて中国と海軍力で対立を深めていくのは当然のことと思われる。
p152~
  中国はアメリカに対抗するため、大陸間弾道弾や核兵器の開発に力を入れている。すでに55発から65発の大陸間弾道弾による態勢を確立している。この大陸間弾道弾のなかには、固形燃料で地上での移動が可能な長距離ミサイルや、液体燃料を使う中距離ミサイルなどがある。
  中国は潜水艦から発射するミサイルの開発も終わっている。これは中国の核戦略の対象がアメリカであることを示しているが、日本を攻撃できる射程3,000キロのミサイルの開発にも力を入れている。日本が中国の核ミサイルの照準になっていることに、十分注意する必要がある。
  中国がアメリカに対抗できる核戦略を持ち、アメリカの核抑止力が日本を守るために発動されるかどうか分からなくなっている以上、日本も核兵器を持つ必要がある。「日本が平和主義でいれば核の恫喝を受けない」という考えは、世界の現実を知らない者の世迷い言に過ぎない。
  すでに述べたように、中国は、民主主義や自由主義、国際主義といった西欧の考え方を受け入れることを拒み、独自の論理とアメリカに対抗する軍事力によって世界を相手にしようとしている。第2次大戦以降続いてきた平和主義の構想がいまや役に立たないことは明らかである。日本を取り巻く情勢が世界で最も危険で過酷なものになっているのは、中国が全く新しい論理と軍事力に基づく体制をつくって、世界の秩序を変えようとしているからである。
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北朝鮮 核ビジネスの脅威 2013-02-20 | 国際 
 北、核ビジネスの脅威 イランへの売却狙う 中東危機が尖閣に飛び火も…
 zakzak2013.02.19
 北朝鮮による核実験が思わぬ地域に飛び火しようとしている。北は核をビジネスとして展開し、イランなどへの売却を狙っているというのだ。イランが核保有国となれば、敵対するイスラエルの猛反発は必至。両国の軍事衝突が中東大戦争へと発展する危険が高い。イランは今回の実験に同国の科学者を立ち会わせたとの情報もあるだけに、北がたくらむ死の商売による核拡散が現実味を帯びてきた。
 北が実施した核実験の規模を各国が分析している。ノルウェーの研究機関は、爆発規模は約10キロトンと発表。過去2回の実験と比較すると、2006年の約1キロトン、09年の約5キロトンから規模はかなり大きくなった。ドイツ政府系研究所では、広島に投下された原子爆弾の3倍に相当する約40キロトンだったとの分析結果を公表した。
 専門誌『軍事研究』の大久保義信副編集長は、「3回目の実験により、核爆発を安定して起こす技術は十分あることが分かった。今後は技術を熟成させ、他国の脅威となる小型化を進める。アメリカと対等の立場になるため、これからも核開発は継続するだろう」とみている。
 実験が行われた直後、韓国国防省は爆発の規模を6-7キロトンとし、「本格的な核爆発の水準まで至らなかった可能性がある」との見解を示した。
 日本の防衛省関係者が語る。
 「ウラン型の核爆弾を実験で完全燃焼させるのは難しい。今回、北が用意した爆弾は20キロトン級と推定されている。この爆弾で7キロトンの爆発を起こしたならば、成功したレベルといえる」
 北の核開発はかなりの水準に達しているようだ。
 国民を飢えさせるほど貧しい北朝鮮にとって、新たに手に入れた核ほど有望な“売り物”はない。中東や南米には北と同じく、反米の姿勢を前面に出す危険な国家が複数存在している。北朝鮮の“お客さん”は多い。多大な開発費を注ぎ込んでも十分な見返りが期待できるわけだ。
 『国防の常識』(角川学芸出版)などの著書がある元航空自衛隊員の軍事ジャーナリスト、鍛冶俊樹氏は、「特に危険なのは核の技術がイランに渡ること」と警告する。
 「北による昨年12月のミサイル発射実験は、イランからの技術供与で成功させたといわれる。両国の関係は非常に深い。イランは北朝鮮の核を手に入れれば核ミサイルを保持できることになる。標的となるイスラエルはイランのミサイル発射を待たず、先制攻撃をしかける可能性もある。中東は大混乱に陥る」
 北とイランとの関係に詳しい外交筋によると、イラン側は昨年11月に核実験視察を打診。代価として数千万ドル(数十億円)を中国の人民元で提供するとの条件を提示したという。実験当日にはイランの科学者が立ち会ったとされ、米国などが情報収集を進めている。
 イランに核が渡り、イスラエルと衝突すれば事態は深刻だ。周辺のエジプトやトルコは親米の立場をとるものの、イスラエルとの関係はよくない。エジプトやトルコがイランに加担すると、中東全土を巻き込んだ大戦争へと発展してしまう。米軍は事態の収拾を図るため、部隊を中東へ集中させる。
 中東大戦争は、遠く離れた日本にとっても大きな脅威になるという。
 「米軍が中東に集中すれば、普段は駐留している東アジアはガラ空きになる。中国にとっては尖閣諸島を奪う絶好のチャンス到来といえる。中東に世界中の注意が集まっている間、中国と日本が衝突する危険は十分ある」(鍛冶氏)
 第二次世界大戦では欧州と太平洋が主戦場となった。東と西で同時に軍事衝突が起きると、多くの国が紛争に巻き込まれる可能性もある。
 北がミサイル開発を進め、単独での核ミサイル発射を可能にするにはまだ時間がかかるとみられる。しかし、他国のミサイル技術と融合する危険はすでに生じた。北朝鮮による3回目の核実験で、世界各国は核拡散というさらなる恐怖と向き合うことになった。
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