北朝鮮 核ビジネスの脅威

2013-02-20 | 国際

北、核ビジネスの脅威 イランへの売却狙う 中東危機が尖閣に飛び火も…
zakzak2013.02.19
 北朝鮮による核実験が思わぬ地域に飛び火しようとしている。北は核をビジネスとして展開し、イランなどへの売却を狙っているというのだ。イランが核保有国となれば、敵対するイスラエルの猛反発は必至。両国の軍事衝突が中東大戦争へと発展する危険が高い。イランは今回の実験に同国の科学者を立ち会わせたとの情報もあるだけに、北がたくらむ死の商売による核拡散が現実味を帯びてきた。
 北が実施した核実験の規模を各国が分析している。ノルウェーの研究機関は、爆発規模は約10キロトンと発表。過去2回の実験と比較すると、2006年の約1キロトン、09年の約5キロトンから規模はかなり大きくなった。ドイツ政府系研究所では、広島に投下された原子爆弾の3倍に相当する約40キロトンだったとの分析結果を公表した。
 専門誌『軍事研究』の大久保義信副編集長は、「3回目の実験により、核爆発を安定して起こす技術は十分あることが分かった。今後は技術を熟成させ、他国の脅威となる小型化を進める。アメリカと対等の立場になるため、これからも核開発は継続するだろう」とみている。
 実験が行われた直後、韓国国防省は爆発の規模を6-7キロトンとし、「本格的な核爆発の水準まで至らなかった可能性がある」との見解を示した。
 日本の防衛省関係者が語る。
 「ウラン型の核爆弾を実験で完全燃焼させるのは難しい。今回、北が用意した爆弾は20キロトン級と推定されている。この爆弾で7キロトンの爆発を起こしたならば、成功したレベルといえる」
 北の核開発はかなりの水準に達しているようだ。
 国民を飢えさせるほど貧しい北朝鮮にとって、新たに手に入れた核ほど有望な“売り物”はない。中東や南米には北と同じく、反米の姿勢を前面に出す危険な国家が複数存在している。北朝鮮の“お客さん”は多い。多大な開発費を注ぎ込んでも十分な見返りが期待できるわけだ。
 『国防の常識』(角川学芸出版)などの著書がある元航空自衛隊員の軍事ジャーナリスト、鍛冶俊樹氏は、「特に危険なのは核の技術がイランに渡ること」と警告する。
 「北による昨年12月のミサイル発射実験は、イランからの技術供与で成功させたといわれる。両国の関係は非常に深い。イランは北朝鮮の核を手に入れれば核ミサイルを保持できることになる。標的となるイスラエルはイランのミサイル発射を待たず、先制攻撃をしかける可能性もある。中東は大混乱に陥る」
 北とイランとの関係に詳しい外交筋によると、イラン側は昨年11月に核実験視察を打診。代価として数千万ドル(数十億円)を中国の人民元で提供するとの条件を提示したという。実験当日にはイランの科学者が立ち会ったとされ、米国などが情報収集を進めている。
 イランに核が渡り、イスラエルと衝突すれば事態は深刻だ。周辺のエジプトやトルコは親米の立場をとるものの、イスラエルとの関係はよくない。エジプトやトルコがイランに加担すると、中東全土を巻き込んだ大戦争へと発展してしまう。米軍は事態の収拾を図るため、部隊を中東へ集中させる。
 中東大戦争は、遠く離れた日本にとっても大きな脅威になるという。
 「米軍が中東に集中すれば、普段は駐留している東アジアはガラ空きになる。中国にとっては尖閣諸島を奪う絶好のチャンス到来といえる。中東に世界中の注意が集まっている間、中国と日本が衝突する危険は十分ある」(鍛冶氏)
 第二次世界大戦では欧州と太平洋が主戦場となった。東と西で同時に軍事衝突が起きると、多くの国が紛争に巻き込まれる可能性もある。
 北がミサイル開発を進め、単独での核ミサイル発射を可能にするにはまだ時間がかかるとみられる。しかし、他国のミサイル技術と融合する危険はすでに生じた。北朝鮮による3回目の核実験で、世界各国は核拡散というさらなる恐怖と向き合うことになった。
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『帝国の終焉』(「スーパーパワー」でなくなった同盟国・アメリカ)日高義樹著 2012年2月13日第1版第1刷発行 PHP研究所
p149~
 日本では、アメリカの軍事力が中国を封じ込めているので日本は安全だと信じられてきたが、情勢は逆転しつつある。中国国内の政治が不安定になれば、中国の新しい戦略が発動されて、日本を脅かす危険は十分にある。しかも中国だけでなく、北朝鮮も軍事力を強化している。ワシントンの軍事消息筋は、北朝鮮がすでに数十発の核弾頭を保有し、地対地ミサイルや小型艦艇に装備したミサイルで日本を攻撃する能力を持ったと見ている。
p150~
  北朝鮮はすでに述べたように、世界各国にノドン、テポドンといったミサイルを売り、核爆弾の材料である濃縮ウランの製造にも協力をしている。北朝鮮は、軍事技術の輸出国として莫大な資金を稼ぎ始めているが、その北朝鮮の仮想敵国はまぎれもなく日本である。北朝鮮は中国の政治的な支援を背景に、日本を攻撃できる能力を着実に高めている。
 中国と北朝鮮だけではない。いったんは崩壊したと見られるロシアが再びプーチン大統領のもとで軍事力を増強し、極東の軍事体制を強化している。
p151~
 ソビエトは共和国を手放し、ロシアと名を変えたが、冷戦が終わって資源争奪戦の時代に入るや、国内に大量に保有している石油や地下資源を売って経済力を手にし、それによって軍事力を強化し始めている。(略)
 ロシアは現在、石油や地下資源で稼いだ資金をもとに、新しい潜水艦やミサイルの開発に力を入れ、ヨーロッパではNATO軍に対抗する姿勢を取り始めている。2009年と10年には、日本海で新しい潜水艦の試験航海を行ったのをはじめ、偵察機や爆撃機を日本周辺に飛ばしている。
 ロシアもまた、極東における新たな軍事的脅威になりつつある。ロシアの究極の敵は国境をはさんだ中国といわれているが、海軍力では中国に勝るロシアが、日本列島を越えて中国と海軍力で対立を深めていくのは当然のことと思われる。
p152~
 中国はアメリカに対抗するため、大陸間弾道弾や核兵器の開発に力を入れている。すでに55発から65発の大陸間弾道弾による態勢を確立している。この大陸間弾道弾のなかには、固形燃料で地上での移動が可能な長距離ミサイルや、液体燃料を使う中距離ミサイルなどがある。
 中国は潜水艦から発射するミサイルの開発も終わっている。これは中国の核戦略の対象がアメリカであることを示しているが、日本を攻撃できる射程3,000キロのミサイルの開発にも力を入れている。日本が中国の核ミサイルの照準になっていることに、十分注意する必要がある。
 中国がアメリカに対抗できる核戦略を持ち、アメリカの核抑止力が日本を守るために発動されるかどうか分からなくなっている以上、日本も核兵器を持つ必要がある。「日本が平和主義でいれば核の恫喝を受けない」という考えは、世界の現実を知らない者の世迷い言に過ぎない。
 すでに述べたように、中国は、民主主義や自由主義、国際主義といった西欧の考え方を受け入れることを拒み、独自の論理とアメリカに対抗する軍事力によって世界を相手にしようとしている。第2次大戦以降続いてきた平和主義の構想がいまや役に立たないことは明らかである。日本を取り巻く情勢が世界で最も危険で過酷なものになっているのは、中国が全く新しい論理と軍事力に基づく体制をつくって、世界の秩序を変えようとしているからである。
p170~
 国家という異質なもの同士が混在する国際社会には、絶対的な管理システムがない。対立は避けられないのである。人間の習性として、争いを避けることはきわめて難しい。大げさに言えば、人類は発生した時から戦っている。突然変異でもないかぎり、その習性はなくならない。
 国連をはじめとする国際機関は、世界平和という理想を掲げているものの、強制力はない。理想と現実の世界のあいだには深く大きなギャップがあることは、あらゆる人が知っていることだ。
 日本はこれまで、アメリカの核の傘のもとに通常兵力を整備することによって安全保障体制を確保していたが、その体制は不安定になりつつある。今後は、普遍的な原則に基づいた軍事力を整備していかなければならない。普遍的な原則というのは、どのような軍事力をどう展開するかということである。(略)
p171~
 日本は、「自分の利益を守るために、戦わねばならなくなった時にどのような備えをするか」ということにも、「その戦争に勝つためには、どのような兵器がどれだけ必要か」ということにも無縁なまま、半世紀以上を過ごしてきた。アメリカが日本の後ろ盾となって、日本にいるかぎり、日本に対する戦争はアメリカに対する戦争になる。そのような無謀な国はない。したがって戦争を考える必要はなかった。このため日本はいつの間にか、外交や国連やその他の国際機関を通じて交渉することだけが国の利益を守る行為だと思うようになった。
 よく考えてみるまでもなく、アメリカの日本占領はせいぜい数十年である。人類が戦いをくり返してきた数千年の歴史を見れば、瞬きするほどの時間にすぎない。日本人が戦争を考えずに暮らしてこられた年月は、ごく短かったのである。日本人はいま歴史の現実に直面させられている。自らの利益を守るためには戦わねばならない事態が起きることを自覚しなければならなくなっている。
 国家間で対立が起きた時、同じ主義に基づく体制同士であれば、まず外交上の折衝が行われる。駆け引きを行うこともできる。だがいまの国際社会の現状のもとでは、それだけで解決がつかないことのほうが多い。尖閣諸島問題ひとつをとってみても明らかなように、外交交渉では到底カタがつかない。
p172~
 ハドソン研究所のオドム中将がいつも私に言っていたように、「常にどのような戦いをするかを問い、その戦いに勝つ兵器の配備を考える」ことが基本である。これまでは、アメリカの軍事力が日本を守っていたので、日本の軍事力は、アメリカの沿岸警備隊程度のものでよかった。日本国防論は空想的なもので済んできたのである。
p173~
 ヨーロッパで言えば、領土の境界線は地上の一線によって仕切られている。領土を守ることはすなわち国土を守ることだ。そのため軍隊が境界線を守り、領土を防衛している。だが海に囲まれた日本の境界線は海である。当然のことながら日本は、国際的に領海と認められている海域を全て日本の海上兵力で厳しく監視し、守らなければならない。尖閣諸島に対する中国の無謀な行動に対して菅内閣は、自ら国際法の原則を破るような行動をとり、国家についての認識が全くないことを暴露してしまった。
 日本は海上艦艇を増強し、常に領海を監視し防衛する体制を24時間とる必要がある。(略)竹島のケースなどは明らかに日本政府の国際上の義務違反である。南西諸島に陸上自衛隊が常駐態勢を取り始めたが、当然のこととはいえ、限られた予算の中で国際的な慣例と法令を守ろうとする姿勢を明らかにしたと、世界の軍事専門家から称賛されている。
 冷戦が終わり21世紀に入ってから、世界的に海域や領土をめぐる紛争が増えている。北極ではスウェーデンや、ノルウェーといった国が軍事力を増強し、協力態勢を強化し、紛争の排除に全力を挙げている。
p174~
 日本の陸上自衛隊の南西諸島駐留も、国際的な動きの1つであると考えられているが、さらに必要なのは、そういった最前線との通信体制や補給体制を確立することである。
 北朝鮮による日本人拉致事件が明るみに出た時、世界の国々は北朝鮮を非難し、拉致された人々に同情したが、日本という国には同情はしなかった。領土と国民の安全を維持できない日本は、国家の義務を果たしていないとみなされた。北朝鮮の秘密工作員がやすやすと入り込み、国民を拉致していったのを見過ごした日本は、まともな国家ではないと思われても当然だった。
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