オウム元死刑囚たちの最後「異常に汗をかき、毎晩のように失禁していた」拘置所関係者が証言【平成事件史】

2019-01-09 | オウム真理教事件

オウム元死刑囚たちの最後「異常に汗をかき、毎晩のように失禁していた」拘置所関係者が証言【平成事件史】
 2018.12.30 09:00 dot.
 オウム真理教の一連の事件で教団に対する強制捜査から23年余り。元代表 麻原彰晃(本名・松本智津夫)、井上嘉浩、新実智光元死刑囚ら7人は2018年7月6日、残りの6人は同26日に、13人全員の刑が執行された。世界中を震撼させた一連のテロ事件に終止符が打たれた格好だ。
 オウム真理教は平成元年(1989年)に起こった坂本弁護士一家殺害事件や94年6月の松本サリン事件、95年3月の地下鉄サリン事件など数々の事件を引き起こし、合わせて29人が死亡、約6500人が被害にあった。
 オウム真理教の元死刑確定囚人らは、東京拘置所に収容されていたが、2018年3月に刑場がある地方の拘置所に移送されていた。その中で、大阪拘置所に移送されてきたのが、新実、井上元死刑囚だ。
 新実元死刑囚は、大阪拘置所に移送されてから同年5月と6月、2回に渡り「恩赦の出願書」を中央更生審査会に提出している。
 冒頭に<無期懲役刑への減刑恩赦を出願します>と記された出願書には、その心情が記されていた。
 オウム真理教の一連の凶悪犯罪についてこう記している。
<麻原彰晃を頂点とするオウム真理教と称する組織団体が、我が国の憲法が定める統治の基本秩序を壊乱し、オウム真理教が理想とする国家創立を目的として行った>
 そして新実元死刑囚は1つずつ事件を裁判で審理するのではなく、オウム真理教の組織犯罪として、一括りにして判断すべきと訴えていた。
 そして、贖罪の思いとしてこう綴っている。
<深く反省しています>
<今も大阪拘置所の規則を順守しています。虫を殺生しないよう用心しています。もう殺生を指示する人(麻原彰晃)はいません。今は償うことしか頭にありません>そして、恩赦になった場合、<無期懲役は終身刑化しています。社会に戻ることはあり得ません。再犯することもありません>
 しかし、その望みが叶うことなかった。
 その遺体は「獄中結婚」した妻の元に引き取られたという。
「新実元死刑囚は奥さんとの面会を毎日、心待ちにしていた。週末など、面会ができない時には落ち着きなく、少しの物音にもおびえる感じもあったが、奥さんと面会できると穏やかに過ごしていた」(大阪拘置所関係者)
 そして同じく大阪拘置所に収容されていた井上元死刑囚は2018年3月に「死刑は重すぎる」として再審請求を行っていたが、進行協議中に死刑が執行された。
 井上元死刑囚は1審では地下鉄サリン事件では連絡役で直接、関与していないこと、仮谷清志さん監禁殺人事件では、中心的な役割を果たしたが、実行犯ではないと無期懲役の判決が下った。ところが、二審・東京高裁では地下鉄サリン事件では「リムジン謀議」に参加し、調整役として中心的役割を果たした上、仮谷さん事件でも逮捕監禁致死罪にあたるとして、死刑を言い渡された。
「再審請求で弁護団がその当時、井上や他の実行犯が連絡を取り合った通話記録の開示を要求し、検察が出すと応じたのが2018年7月3日。しかし、その3日後に井上の死刑は執行されてしまい、結局、通話記録は開示されなかった。開示されていれば、井上の判決は無期懲役が正しいことが証明できた可能性があった」(弁護団関係者)
 前出の大阪拘置所関係者は井上元死刑囚らの最後の日々をこう生々しく証言した。
「刑務官は皆、井上と新実は死刑執行が前提で移送されたとわかっていましたから、すごくピリピリしていました。井上は礼儀正しく、死刑執行が近いとは思えない様子でした。しかし、井上、新実とも日が経つにつれ、顔色は悪くなり、異常に汗をかくなど、精神的に不安定になっていた。しばらくすると、彼らのいる独房には臭気が漂いはじめた。2人とも毎晩のように失禁するようになり、ズボンや布団を頻繁に取替えるようになっていたのです。死刑の恐怖に怯えていたんだと思います。凶悪事件を起こしたとんでもない連中と思っていたが、2人とも普通の人間だったということでしょう。どうして道を間違えてしまったのか、残念でならない」
 井上元死刑囚の両親はその意志を継ぎ、同年10月15日、死刑判決は重すぎるとして、東京高裁に再審請求を申し立てている。
(AERAdot.編集部取材班)

 ◎上記事は[dot.]からの転載・引用です
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