時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

刑事犬養隼人シリーズ4~ドクター・デスの遺産~

2020-12-30 | 読書
ねぇ、聞いてよ 悪いお医者さんが来て、お父さんを殺しちゃったんだよ

警視庁に入った1人の少年からの通報
通信指令センターの倉科恵子は
聞き覚えのある声に
ああまたかと思った
だが受話器から伝わる
少年の声を聞きながら
折り返し電話をする旨を伝えた

高千穂?指令センターの倉科だけど、今いい?

刑事部捜査一課の
高千穂明日香は
相棒の(?)の犬養隼人を道連れに
電話の主・馬籠大地(まごめだいち)少年の自宅に向かった

犬養さん、変です
大地くんの話では医者は二人きたというんです
二人?


大地の母少年の母小枝子が
「ドクター・デス」を名乗る人物が
開設するサイトに
アクセスしていたことを突き止める
安らかで苦痛のない死を
20万円で提供するという医師は
一体何者なのか
難航する捜査を嘲笑うかのように
日本各地で類似の事件が次々と発生する
人気シリーズ第4弾!

映画『ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―』公開中


「切り裂きジャックの告白~」では臓器移植
「ハーメルンの誘拐魔」ではワクチン接種の副反応
今度は安楽死がテーマですか…

末期がんで
自ら安楽死を要請した
久津輪博信(つくわひろのぶ)の家では
犬養と高千穂が
看護師・雛森めぐみ(ドクターデス)を
待ち構えていました
ぱらぱらぱら
雨の音ではない
小石の降り注ぐような音が天井から聞こえる
崖の崩落により久津輪が
家屋の下敷きに…

放っておいらた久津輪さんは
絶命するまで延々と死よりも耐え難い苦痛を味わい続ける
この人を救うにはそれしか他に方法がない
待て それは殺人だ
そうよ 知らないとでも思ったの
俺は警察官として…
あなたの職業倫理が久津輪さんの安寧を拒否するのなら
この注射器を粉々にしなさい
三秒だけ待ってあげる
一 二 三
職業倫理が心に潰えた瞬間だった

雛森めぐみの
生きる権利と同様
死ぬ権利もまた理解すべき
と言う思いは
無国籍医師団の一員として
まじかに
数えきれない死と直面してきた者としての
究極の結論(選択肢)
方や
警視庁捜査一課である麻生の自論
本人や家族が望んだ死だろうが
医療行為でも何でもない
カネで人殺しを請け負う最悪の所業だ
と言うのも間違いではない
無国籍医師ブライアンが
緩衝地帯から撤退する際
雛森めぐみに吐露した
あれは救済ではあるが
真っ当な医療行為とは言えない
メグミはあんな技術に深入りしてはいけない

これもまた真理

事件が一応の決着をみた後
犬養が
もしどんな治療でも治らない
苦しさは増す一方だったとしたら
それでも病気と闘い続けるのか
と紗耶香に尋ねるくだりがあります
犬養が
安楽死に対し
一分の理は認めるが全面的には…
と答えると
それって考え方の違いだけだと
紗耶香が答えています

家族を死なせたくないのも
苦しませなくないのも
根は同じ思いやりなんだから
長く生きられたら無条件で幸せってことでもないじぁない
それさ
対立しているんじゃなくてアプローチが違うだけなんだと思う


日本人の場合
本人の意思だったとしても
その中に
家族に迷惑かけたくない
と言った負い目的な感情が
尊厳死を選択する理由の多くを占める気がして
それってどうなの?
と思わないでもない
本人の尊厳死を聞きつけ
悪用する輩が現れるとも限らない!
基準が流動的なんですよね
善と悪が
正解と不正解が入れ替わる
一個人の生きる権利と死ぬ権利を
法律の範疇で
明確に定義するのは
難しいです

あっ
でもあたしだったら
安楽死どうのこうのは
まず考えない
前はちょこっと考えたかもしれないけど
最近はとことんやったれ
と思う
諦めの悪い誰かさんの娘だからじゃないかな

         (『ドクター・デスの遺産』323頁抜粋)

シリーズが終わるまでに
どんな形であれ
紗耶香ちゃんが元気になれますように


流動的にはなるでしょうが
終活を前提ではなく
年齢に関係なく
不慮の死に備え
臓器移植や延命治療について
キチンと
書面で残しておくべきだと
感じています

年内に読んだ
残る本の感想は
年明けに書こうと思います
コロナに翻弄された一年でした
来年も
暫くは混沌とした日が続くと思います
出来ることを
出来る範囲で
粛々とこなしていこうと思います
2021年が
皆様にとって
穏やかで
実り多き年となりますよう
お祈り申し上げます