かめ設計室*3丁目通信

2005年4月より、西新宿にて一級建築士事務所かめ設計室がはじまりました。3丁目からのかめバー通信。

どこかで見た風景 かわ

2007年04月21日 | 
 琵琶湖を取り囲むように山々が見える。その伏流水によってもたらされる豊かな営みは、もうひとつの原風景である。滋賀県(近江)と言えば、湖(うみ)と山、それらをつなぐ水である。そして琵琶湖を巡るなら、だんぜん奥琵琶湖をお勧めする。栄えているのはもちろん東海道に面した南側、しかしどうも町自体が大阪や京都といった他所を向いてしまって趣きに劣る。

 水、とにかく湧き水が多い、井戸が多い。至るところ水路が巡っている。丁度都市にU字溝が巡っているように、家の周りをぐるぐる水路が回っている。
 琵琶湖の西、高島に針江という集落がある。生水の郷(しょうずのさと)と呼ばれるその集落は、湧き水が絶えない。水路のあちこちからボコボコと湧いている。口を開けた鯉がその水路を悠々と泳いでいる。上屋がかかった井戸は家々にあり、覗き込むと鍋や洗面器、歯ブラシもある。ここにも鯉がいる。いっぱいいる。残飯を食べてくれるからだ。また隣の井戸に引込まれ、また水路に返っていく。水を通して近所同士がつながっているので、決して汚したりはしないそうだ。この井戸の事を「かばた」と呼ぶ。川端の意味らしい。水路を掃除していた80歳を超えたつるつる顔のおじいちゃんがニコニコと案内してくれた。
 水洗便所などの下水や汚水は都市生活の目に見えないところで水に流す。汚れたものは隠蔽する。まるで無かったかのように水に流す。せめて溝や水路や川には蓋をしない方がいい。なるべくなら水は目に見えるところで使うのがいい。建築の水処理のディテールはきっと同じ理屈だ。
 
 デザイン・アートランキング [人気blogランキング]

最新の画像もっと見る