新河鹿沢通信   

暮らしの中から 村の歴史 足跡 集落 跳躍  麓風小舎     

7月の田んぼの花と「アカトンボ」

2013年07月19日 | 地域の山野草
田んぼの見回り途中、畦畔の「ノコギリソウ」に「ベニシジミ」が止まった。危なく足をかけそうになって慌ててよけ、狙い定めてシャッター。蝶に特別な感情はないのだが、「ノコギリソウ」の白にチョウの紅が調和、一瞬見惚れた。この「ノコギリソウ」は平成に入る前、「減反強化」の対策で地域に「転作組合」を結成。事業として増え続ける転作で田んぼの風景が激変する中、通学路でもある集落の本道の両側に、「子供たちと農家の職場に花」をのキャッチフレーズで昭和62年、25種類の草花の種を蒔いた。25種類の種は当時減反強化の中で「景観作物」として種苗会社が売り出したものを求めた。25年以上経過して残ったのは「セイヨウノコギリソウ」「マツヨイグサ」「キヌガサギク」の三種だけになった。その中で「セイヨウノコギリソウ」は道路から100mも離れた排水路側にも定着した。


 ノコギリソウにベニシジミ 07.16 湯沢市川連町田屋面

「ベニシジミ」は前翅は表裏とも赤地に黒褐色点があり、後翅は表面が黒褐色で、裏面は灰色の「シジミチョウ」。春に現れる個体は赤っぽく、夏の個体は黒っぽい。秋には両方のタイプが見られる。原っぱや畑の周辺など、開けた明るい環境に多い。地面近くを飛び、いろいろな花でよく吸蜜する。幼虫の食草は、スイバ、ギシギシなどと言われ、これらの草は私の水田の排水路側に多い。

そして、今年も「アカトンボ」の誕生の時期がやってきた。「アカトンボ」は一般的には「アキアカネ」のことで胸の部分に黒く太い模様がある。「ウスバキトンボ」にはこの太い模様はない。「アキアカネ」のように赤くならず、ややくすんだ橙色をしている。「アキアカネ」が「トンボ科アカネ属」で、「ウスバキトンボ」は「トンボ科ウスバキトンボ属」で区別されている。一般的にいう「アカトンボ」を「ウスバキトンボ」を含めてよんでいるが、「アカトンボ」というトンボはいない。このブログでは通称の「アカトンボ」で記録している。

今年も7月5日ころから盛んに誕生。今年の発生は昨年以上だ。「アカトンボ」はコンバインでの稲刈りの田んぼより自然乾燥の田んぼに確実に多い。その数推定だが2~3倍にも見える。コンバインの稲刈りでイナワラに隠れる田んぼよりも、自然乾燥の田んぼでは産卵場所が多く、産卵場所が多くなることは過去のブログにも書いた。H君の田んぼコンバイン刈りから稲の自然乾燥に切り替えて3年目だ。青田の明渠ほり作業で稲の株間から飛び立つ、「アカトンボ」の多さに驚いていた。


 赤トンボ 誕生 07.16 湯沢市川連町田屋面

これら田圃で生まれた「アカトンボ」は集落や里山に移動、間もなく高い山々に移動する。そして9月に入る頃からまた田んぼに戻ってきて、ペアを見つけて産卵しその一生が終わる。

いつもこの時期見られる「ネジバナ」は30a5枚の田んぼ15000㎡、畦畔は計算上約700㎡中この2本しか見渡らない。今年はなぜ少ないのかはわからない。この「ネジバナ」の周りの草は間もなく刈られてしまう。


草の中のネジバナ 07.16 湯沢市川連町田屋面

「ネジバナ」ラン科の可憐な花だ。ネジバナの花言葉は「思慕」。意味深な世界。
ネジバナ」かつては、麓の田んぼの至る所にあったと云うことを村の古老から聞いていた。田んぼの圃場整備以降見ることが少なくなったと言うが、そうではなく現在田んぼ作業する人達に、田んぼの草花に関心を示す人が少なくなったことにある。
あの「タンポポ」の花は多くの人たちは残したが、この「ネジバナ」は15㎝程で小さく他の野草に隠れるように咲く。注意しないと見過ごしてしまう。探し出して教えると「きれいな花」だというが、その多くは他の草と一緒に刈られてしまう。

「ネジバナ」は一般的に次のように紹介されている。
『湿っていて日当たりの良い、背の低い草地に良く生育する。花色は通常桃色で、小さな花を多数細長い花茎に密着させるようにつけるが、その花が花茎の周りに螺旋状に並んで咲く「ねじれた花序」が和名の由来である。「ネジレバナ」、「ネジリバナ」、「ねじり草(そう)」とも呼ばれる事もある。学名の Spiranthes(スピランセス)は、ギリシャ語の 「speira(螺旋(らせん))+ anthos(花)」に由来する。右巻きと左巻きの両方があり、中には花序がねじれない個体や、途中でねじれ方が変わる個体もある』

右巻きと左巻きの比率は大体1対1であると云う。白花もあるそうだが、販売されているもの以外まだ見たことがない。増えてほしい花だがなかなか増えない。昨年は数か所で10本程咲いたのだが、今年の2本は近年では最低。田植後の高温、旱魃気味が「ネジバナ」の生育に影響したのか。「ネジバナ」は万葉集にもでてくる。詳しくは (http://www.hanajiten.com/nejirebana.html)等へ


 キヌガサギク 07.16 湯沢市川連町田屋面

「キヌガサギク」長い期間、正確な名はわからないでいた。今回「雄勝野草の会」の鈴木房之助氏に調査を依頼したら、北アメリカ原産の帰化植物「キヌガサギク」(別名アラゲハンゴンソウ 和名 粗毛反魂草)という名であることがわかった。少なからず「反魂」と云う言葉に釘づけぎみだ。古語辞典によれば、反魂とは「死んだ人の霊魂をよび返すこと」という。この「キヌガサギク」との関連はどこから?などと興味がつきない。
そして、花言葉の「公平・正義・正しい選択」は、通学路にふさわしい野草かもしれない。この花の咲く期間が長く、コメの収穫期まで続く。25年ほど前の播種後約600mの町道両側にビッシリ6月後半から9、10月まで咲き誇ったこの黄色の花は壮観だった。

25年前後経過して現在残っているのは私の田んぼの道路側約100mに数十株のみだ。どこにもありそうなこの花、当時特に考えることなしに、ヨーロッパ原産という25種類の花の種まきを提案した自分が、もしかしたら生態系に影響を与えたかもしれないという反省がどこかにあった。他の人同様に絶やすことは比較的簡単なことだが、25年以上前から通学路に定着したこの花をどことはなく愛おしくなり、毎年数回の草刈りに注意して残すようになってしまった。
鈴木さんによれば1930年代に北海道に導入され、今では九州まで分布が広がっていると云う。

さて、田んぼの稲はいよいよ出穂期をむかえる、7月下旬は「カメムシ」防除の時期になる。「カメムシ」は稲穂から養分を吸汁し屑米や斑点米を形成する。被害のコメは一般の消費者のわたる前に選別されるので見ることはすくない。農家にとっては被害米が多いと売渡価格にひびくのでもっとも嫌われている害虫だ。今年は稲の生育期が高温で経過し「カメムシ」の繁殖が旺盛になり、発生量も多くなるといわれている。

指導機関は「稲が出穂する10~15日前までに農道や畦畔、休耕田等の雑草を刈り取る」ことを呼びかけている。農家はこれらの対策のため一斉に草刈り作業に突入した。稲川周辺では田植後2回目の草刈りとなる。この20日、21日の土、日が最盛期となりそうだ。自分の場合、花の咲いている野草はなるべく選択して残すようにしているが、他の人はこの時期田んぼの野草のほとんど刈り払ってしまう。

そして「あきたこまち」の出穂を迎える。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 豪雨の八幡平と快晴の種差海岸 | トップ |  草一掃作戦 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

地域の山野草」カテゴリの最新記事