海住恒幸の松阪市議会通信 

議員活動を通して、自治体議会や自治体のあり方を考えるブログ

市長発言の「変化」をどう読むか

2007年05月21日 21時46分27秒 | 自治体
松阪駅西地区再開発を主要なテーマに開催された、20日のフォーラムの模様について書いた記事を詳細に読まれた方はお気づきだと思いますが、松阪市の下村猛市長の発言が、3月の市議会当時とは変化してきています。
それに伴って、フォーラムに準備組合を「代表」して参加した大阪のコンサル会社の代表者も、従来、表面に出ていた三重県内のコンサルとは異なって、「準備組合だけ、市だけで進めるのではない。こういうフォーラムを通して、プロセスを大切に考えていきたい」と、微妙な変化を見せました。

20日のフォーラムで市長いわく:
「3月議会でフレームづくりの理解は得られたが、内容についてはこれからどう理解していくかが残っている。だからといってどうにでも変わるのかというとそうでない」
「国への申請のためのフレームは出来た。内容の議論は今後あり得る」
「(建物の)配置は今後考える可能性」

「フレーム」とはどのような意味で言われているのか不明ですが、「内容の議論は今後」というのだから、外枠と解釈できそうです。
では、マンション、ホテルの配置など、基本レイアウトについて変更はあり得ると市長は言うのでしょうか。
変更が可能ならもちろん歓迎です。

3月の市議会では「フレーム(外枠)づくり」などという言葉は決して使わなかったし、マンション事業者(近鉄不動産)との約束から駅にもっとも近い位置にマンションを配置する方針は決して変えられないとする頑なな態度でした。

それがどうして、いまになって変更があり得るというスタンスに変わってきたのでしょうか。

きょう21日付けの夕刊三重にも、フォーラムでは「専門家からも苦言」と書かれました。
コーディネーターの簑原敬氏は「風景としてなんでマンションが一番こっち(駅に近いところ)なんだ。だれが考えても疑問に思う」と締めくくったように、準備組合の意向を受けて市が示してきたプランはだれもが不審に思ってきたところです。
議会ばかりか、さまざまな場で市民が発言しても、「マンションを販売する都合」(マンションの位置を変えたら、近鉄不動産に売却できなくなるという言い分)を楯に、市長と、岩塚三善・市建設部長がはねつけてきました。
しかし、市の主催で開催されたフォーラムで発言した専門家からも、やはり、議会(少なくとも議案に反対した13人の議員)や、声の聞こえてくる大方の市民と同様、マンションの建設位置について異論が出ました。
これまでマンションが駅前であることが絶対的な条件としてきたのは、準備組合と市と、市によると近鉄不動産だけです。
準備組合の言い分だけを代弁してきた市よりも、市民の言っていることの方が正しいと、市の呼んだ専門家が言ってくれたようなものです。

そのような中で、今回の市長の発言をどう受け止めたらよいのでしょうか。
マンションの建設位置の変更は、それが可能というより、変更することでこそ公益にかないます。変更しないとすれば、公益より、大勢の市民が「ノー」と言っているのに、売却先とされる近鉄不動産の私益にだけ応える行政ということになってしまいます。
市はすでに近鉄不動産が売却相手と勝手に決め込んでいたようですが、3月の徹夜議会でわたしは次のように発言しました。
「マンション事業者は組合設立後、公募で決めなければならないと都市再開発法108条に書いてあるのを知っているか」
岩塚・建設部長は「その条文を存じません」と答え、そのあと、『六法全書』を調べ、「公募します」と答弁しました。(市長は、それはまずいと判断したのか、「法に基づいて手続きします」という趣旨に言い直しましたが・・・)

市はこれまで近鉄不動産がすべてであるかのように答弁してきています。が、法的にはまだ組合はなく準備組合の段階です。その段階で売却先は近鉄不動産に決まっているというのは、都市再開発法に反します。
近鉄不動産というお客様の意向だからといって、マンションを駅に一番近いところに建てると議会や市民に言い続ける論理は、法の趣旨からいって成り立ちません。

市長の姿勢に変化が見られるようになったのはありがたい。けれど、いったい、いままでの議会での説明やら答弁とは何だったのか、ということになります。
いままでがあまりに無責任かつ無知だったのではないですか。

わたしたちは、市の答弁が法的に正確なのかどうかを含め、逐一、検証しながら、市の事業を見つめています。



松阪駅西再開発テーマにフォーラム

2007年05月21日 08時55分02秒 | 自治体
市民と都市づくりの専門家が松阪市に開催を呼び掛け、松阪市が主催した「まちづくりフォーラム」が、20日午後、市産業振興センターで開催されました。
実質上のテーマは松阪駅西地区再開発。この問題で下村猛市長が直接市民の前で考えを表明するのは初めて。
市民からの強い働き掛けで、市街地再開発事業の専門家、横島毅氏が、下村市長に、フォーラム開催の必要性を説き、横島氏や市長、市民もパネリストとして参加するかたちでの意見交換が実現しました。
初めに講演したのは、『街づくりの変革』『街は要る』などの著書がある都市プランナー、簑原敬氏。

簑原氏は、駅前に高層マンションとショッピングセンターを据えて失敗した再開発の事例を挙げながら、「再開発は周囲の風景や、街のスケールを考えながら取り組むべき」と強調。
「街には街相応のスケールがある」として、銀座に計画された超高層ビルの建築を断念した事例なども紹介しました。
また、「人の居場所としての街」をつくることが大切だとして、「だれが、どういう手続きで、どういう思い入れを持ってやるのか」「周りの風景とはマッチするのか」を基準に、プロセスを大事にしたまちづくりの必要性を述べました。

このあと、簑原氏をコーディネーターに、市長、大島憲明氏(市街地再開発準備組合代表・都市問題経営研究所)、市民代表として世古潤壱良(じゅんいちろう)氏、横島氏が参加するパネルディスカッションが行われました。

世古氏は「再開発には賛成だが、この事業には問題が多すぎる。大幅に見直すべき」などと述べ、駅前の24階建て高さ78メートルのマンションを12階建ての2棟にし、場所もずらすことなどを提案しました。

下村市長は、「3月議会でフレームづくりの理解は得られた。が、内容についてはこれから。だからといって、どうにでも変わるのかというとそうでない。事業が成立するという枠の中で進めたい。中心市街地活性化法の認定基本計画の中に位置づけることが一番大事」と、3月の市議会当時よりも柔軟な姿勢を見せました。

市街地再開発準備組合の大島氏も「建物の配置や景観について指摘を受けた。できること、できないことはある。しかし、準備組合だけ、市だけで進めるのではないのだから、こういう討論会を通し、プロセスを大切に考えていきたい」と述べました。

市長は重ねての発言で「フレームづくり(国への申請のためのフレーム)は出来た。内容の議論は今後あり得る。配置は今後考える可能性がある」としました。

コーディネーターの簑原氏は、「にぎわいをつくるには風景が要る。楽しさが要る。しかし、現在進められている計画の内容を知ると、歩きにくい(歩く楽しさがない)。風景として何でマンションが一番こっち(駅前)なんだ。だれが考えても疑問に思う」と、締めくくりました。