街にはその街特有の遺伝子があるはずで、新しいまちづくりにもその遺伝子は引き継がれるべきだ、と思っています。
今年の秋、卒業生として、母校の大学を訪れる機会がありました。
創立125周年ということで、何年か前から、学内の「再開発」をしていました。
古い建物(校舎)を取り壊し、すっかり新しくなった建物。まったく新たに出来た施設(オープンカフェやキャンパス・ブランドショップ、ホテル、カフェテリア(食堂)もありましたが、それになりに新旧がうまく入り混じり、逆に伝統建築物の良さを引き出していました。
新しい建物は昔の建物では果たし得なかった新しい機能を発揮し、これからの大学に必要な役割を果たしていくことでしょう。
大学というところは、それ自体一つの街です。
4万という学生、教職員がいて、周りにはいくつかの商店街もひしめいている。
そして、いま現にいる若い学生だけでなく、卒業して何十年もたって訪れる校友にも昔をしのべる要素を残しておいて初めて、母校として愛される。
古い時代からある建物をいまのたたずまいに取り込むことで、変わっても変わらない風景を提供することができる。
そこ特有の遺伝子を伝える建築、そして、再開発をしているのだろうと思いました。
当然、街にも、その土地特有のかたち、風景、自然、機能をどのようにコンセプトとして受け止め、新たに造り出す「価値」へと変換するか。そこのところに感性が求められるでしょうし、日本の建築学、風景デザインなどの分野で蓄積された専門性をとりいれることの意義を感じ取ることができるかどうかで、街に魅力を吹き込むかそうではないかの大きな分岐点があるような気がします。
そんなふうな問題意識を持っているときに出逢った一冊の本。
執筆したのは、三重大学の元助教授で、現在、早稲田大学教授の建築家・後藤春彦さんと、佐藤滋さん、山中知彦さんのグループ。
都市デザイン 12のワークスタイル
【構想】素材を掘り起こす。
まちの成り立ちを読む。
物語に綴る。
【造景】骨格をデザインする
界隈を形づくる
風景にまとめる
まちに開く
ブレークスルーする
【編集】 布石を打つ
いくつもの道筋を検討する
体制を整え布陣を組む
波及と連携を生み出す
この骨格がそのまま本の骨格として構成され、実際の都市デザインへの取り組み事例を紹介しながら体系化されているユニークな本です。
とかく建築の専門書は素人にはわかりにくいものですが、この本には、絵と写真、気の利いた文章で、大変魅惑的なまちづくりのエッセンスのような話が充ち満ちています。
ただ、その概念を具体的なかたちにしていくためには、概念を読み解く専門家(建築家)と、その土地と街のことを知っている市民のパートナーシップ(協働)が不可欠です。
前に議会で、後藤春彦さんのような専門家にプロとして参画してもらって、松阪の再開発をゼロから再構築してみてはどうか、と提案したことがあります。
市長の答えは、もちろん、その気なし、でした。
というより、意味がわからなかったのでしょうね。
早稲田へ教授として転出されてからも一度、飯南町の「峠集落」の森の中で、先生のゼミの学生らをスタッフに「まちづくり人生ゲーム」というワークショップを開いていただいたことがあります。
かつては伊勢本街道沿いに宿場として栄えた「峠」は、住む人のいない村になっていました。
かつてここにたくさんの暮らしがあったとき、この地域の人はどのような暮らしをしていたのか、その村の結婚式の再現をひとつの手がかりに、ちょっとしたイベントじたてのワークショップでした。
そんな作業を通して、それぞれの土地の持っていた遺伝子を発見することができれば、次なるまちづくりへとつながるヒントとなることでしょう。
その遺伝子を「街を造る」かたちへと翻訳できる人、そんな専門家と。
とってつけたようなワークショップをホンモノだと思ってしまうところが松阪市の弱点ですが・・・。
今年の秋、卒業生として、母校の大学を訪れる機会がありました。
創立125周年ということで、何年か前から、学内の「再開発」をしていました。
古い建物(校舎)を取り壊し、すっかり新しくなった建物。まったく新たに出来た施設(オープンカフェやキャンパス・ブランドショップ、ホテル、カフェテリア(食堂)もありましたが、それになりに新旧がうまく入り混じり、逆に伝統建築物の良さを引き出していました。
新しい建物は昔の建物では果たし得なかった新しい機能を発揮し、これからの大学に必要な役割を果たしていくことでしょう。
大学というところは、それ自体一つの街です。
4万という学生、教職員がいて、周りにはいくつかの商店街もひしめいている。
そして、いま現にいる若い学生だけでなく、卒業して何十年もたって訪れる校友にも昔をしのべる要素を残しておいて初めて、母校として愛される。
古い時代からある建物をいまのたたずまいに取り込むことで、変わっても変わらない風景を提供することができる。
そこ特有の遺伝子を伝える建築、そして、再開発をしているのだろうと思いました。
当然、街にも、その土地特有のかたち、風景、自然、機能をどのようにコンセプトとして受け止め、新たに造り出す「価値」へと変換するか。そこのところに感性が求められるでしょうし、日本の建築学、風景デザインなどの分野で蓄積された専門性をとりいれることの意義を感じ取ることができるかどうかで、街に魅力を吹き込むかそうではないかの大きな分岐点があるような気がします。
そんなふうな問題意識を持っているときに出逢った一冊の本。
『図説 都市デザインの進め方』(丸善株式会社刊、3200円)
執筆したのは、三重大学の元助教授で、現在、早稲田大学教授の建築家・後藤春彦さんと、佐藤滋さん、山中知彦さんのグループ。
都市デザイン 12のワークスタイル
【構想】素材を掘り起こす。
まちの成り立ちを読む。
物語に綴る。
【造景】骨格をデザインする
界隈を形づくる
風景にまとめる
まちに開く
ブレークスルーする
【編集】 布石を打つ
いくつもの道筋を検討する
体制を整え布陣を組む
波及と連携を生み出す
この骨格がそのまま本の骨格として構成され、実際の都市デザインへの取り組み事例を紹介しながら体系化されているユニークな本です。
「どんな場所にも必ず価値がある。
その価値を読み取り、広く市民と共有できる場所に育てていくことが公共空間に生命力を吹き込むことになる」。
とかく建築の専門書は素人にはわかりにくいものですが、この本には、絵と写真、気の利いた文章で、大変魅惑的なまちづくりのエッセンスのような話が充ち満ちています。
ただ、その概念を具体的なかたちにしていくためには、概念を読み解く専門家(建築家)と、その土地と街のことを知っている市民のパートナーシップ(協働)が不可欠です。
前に議会で、後藤春彦さんのような専門家にプロとして参画してもらって、松阪の再開発をゼロから再構築してみてはどうか、と提案したことがあります。
市長の答えは、もちろん、その気なし、でした。
というより、意味がわからなかったのでしょうね。
後藤先生は、三重大学にお見えになったのがご縁で、
「再開発プロジェクトでは、街の中の細々としたあらゆるものが、
街の記憶と共に消し去られてしまう。
再開発の結果、それまでの街とは異質な空間がいきなり挿入される。
再開発は単なるビルづくりではなく、『街としての雰囲気、環境を生み出す作業』が必要であり、その作業は独立した作業としてなされるべきである」
早稲田へ教授として転出されてからも一度、飯南町の「峠集落」の森の中で、先生のゼミの学生らをスタッフに「まちづくり人生ゲーム」というワークショップを開いていただいたことがあります。
かつては伊勢本街道沿いに宿場として栄えた「峠」は、住む人のいない村になっていました。
かつてここにたくさんの暮らしがあったとき、この地域の人はどのような暮らしをしていたのか、その村の結婚式の再現をひとつの手がかりに、ちょっとしたイベントじたてのワークショップでした。
そんな作業を通して、それぞれの土地の持っていた遺伝子を発見することができれば、次なるまちづくりへとつながるヒントとなることでしょう。
その遺伝子を「街を造る」かたちへと翻訳できる人、そんな専門家と。
とってつけたようなワークショップをホンモノだと思ってしまうところが松阪市の弱点ですが・・・。